第131話 答えの出ない問い
たくさんのお洋服が置かれた小さなお家にアナスタシアはいた。
この家はかつて彼女が住んでいたお城の一部屋を再現したお家だった。
「・・・」
アナスタシアは入口に大きな鏡をおいた。
アナスタシアが鏡の前でお洋服に着替える。
着替え終わると部屋の真ん中に置かれた椅子に座る。
「・・・」
無表情な顔のまま鏡を見つめた。
今の彼女は吸血鬼と過ごした頃の少女・・・の演技。
「にこっ」
別の洋服に着替えたアナスタシアが笑う。
「うー!」
別の洋服に着替えたアナスタシアが怒る。
「あわわ」
別の洋服に着替えたアナスタシアが慌てる。
・・・それは演技の練習だった。
見世物の少女は今日も人間を演じる。
「・・・」
最後の演技は、最初に覚えた演技。
・・・アナスタシアは偽物の涙を流した。
「・・・」
アナスタシアは思い出す。
泣きながら帰ってきた日の吸血鬼を・・・
『すまない。すまない』
吸血鬼はずっと謝っていた。
きっと、その相手はアナスタシアではない。
彼がこれまで殺してきた人間達に対しての・・・
(もし、今の私をあの吸血鬼が見たら・・・)
笑うだろうか・・・
殺すだろうか・・・
それとも・・・
(・・・)
それは分かり切った答えだった。
けれど、彼女にはその答えを知るすべがなかった。




