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偽物勇者とメイド天使  作者: ああああいい
第4章 ヒーロー編
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第130話 ヒーローは死んだ

 シスター達が悪を倒す。

 少女が悪を罵倒し笑う。

 そんな日々が続いた。


(私達は何のためにこの少女を連れてきているのだろうか・・・)


 シスター達はよく分からなくなっていた。

 心が疲弊していく。

 少女のせいではない。

 悪を・・・人を・・・魔物を・・・殺しすぎた。

 心が摩耗する。

 善良であればあるほどに・・・


(あれが今日の討伐対象・・・)


 そこにいたのは竜人だった。


(早く、終わらせよう)


 シスター達がナイフを取り出そうとして・・・


「・・・駄目」


 少女がシスター達を制止した。


「えっ」


 驚くシスター達。


「・・・」


 少女が無言で竜人に近づいていく。


「・・・!」


 怯えた竜人が少女に襲い掛かった。

 その大きな手で少女の首をつかんでしめた。


「・・・えっ」


 竜人が驚きの声をあげる。

 ・・・少女は抵抗しなかった。

 少女は無言で竜人を抱きしめた。


「あっ、あ・・・」


 竜人は少女の首から手を離した。

 そして、少女の胸の中で眠った。

 竜人の目からは涙が零れ落ちた。


「・・・!」


 シスター達が目を丸くする。

 少女は戦わずして悪であったはずの竜人を無力化した。

 それこそがシスター達が少女に求めていたものだった。


(そうか、そういうことだったんだ)


 シスター達はようやく納得がいった。


(この子には相手が悪かどうかが分かるんだ)


 世の中には救いようのない悪がいる。

 彼らは改心などしない。

 ただ、悪逆非道な行いを繰り返す。

 そんな悪に少女は・・・容赦しない。

 痛みと苦しみのうちにもだえ死ぬことを求める。


 世の中には救いを求める悪がいる。

 己の過ちを認め贖罪の機会を探している。

 そんな苦しむ悪に少女は・・・手を差し伸べる。

 慈悲による救済を与える。


(この子がいれば私達は・・・!)


 シスター達の摩耗した心が蘇っていく。


 ・・・ケテル派のシスター達は魔物達との共存を掲げていた。

 しかし、そのほとんどは失敗に終わった。

 善良なシスター達は悪い魔物に騙され悲惨な末路をたどった。


(それでも私達は・・・諦めたくなかった)


 ・・・魔物との共存を。

 数多のシスター達がその夢に裏切られ絶望の果てに命を落とした。

 けれど、その絶望は終わりを迎える。


「アナスタシア・・・」


 シスターが少女の名前を呼んだ。


「私達を導いて・・・」


 シスターは少女にすがった。


「喜んで」


 少女は笑顔で受け入れた。


 ・・・。


 少女はケテル派の教祖になった。


「はは、殺せ。殺せ」


 少女が悪に死を求める。


「あなたに贖罪の機会を」


 少女が悪に慈悲を与える。


「・・・」


 シスター達は黙って少女の命令に従う。

 少女が悪と判断した悪を裁き。

 少女が善と判断した悪を救済する。


「ありがとうございます・・・アナスタシア様」


 少女に救われた魔物は彼女に従順な信徒となった。


(アナスタシア様は間違えない・・・)


 シスター達は確信していた。

 少女についていけば、魔物との共存という絵空事が現実となることを。


(アナスタシア様には良心がない・・・)


 だから、容赦なく悪を裁ける。


(アナスタシア様は後悔をしない・・・)


 自身の判断に絶対的な自信があるから・・・


『正義は私達にある』


 それはシスター達を鼓舞するために少女がよく言う言葉だ。

 シスター達はその言葉を信じ少女に付き従う。


 ・・・全て噓なのに。

 少女にないのは良心じゃなくて、心そのものなのに・・・

 少女に善と悪を判断する力はない・・・ただ、目の前の人間を演じているだけなのに・・・


 心のない少女は人間を演じるために他者をまねる。

 まるで、鏡のように・・・他者のありのままの姿を映し出す。

 そして、代弁する。


 善人の前では善人に。

 悪人の前では悪人に。


 少女があなたを好きだと言うなら、あなたは周囲から愛される人間で・・・

 少女があなたに酷いことを言うなら、それはあなたが抱える罪悪感・・・


 誰も彼女の演技に気付かない。


『鏡写しの代弁者・・・アナスタシア』


 見世物の少女は今日も舞台でひとり踊る。

 そんな彼女の真意に気付いて助けてくれる人はどこにもいない。


 彼女のヒーローは、とっくの昔に・・・死んでいた。

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