第127話 少女とヒーロー
少女は吸血鬼の帰りを待っていた。
(今日はどんなお洋服を買ってきてくれるんだろう)
少女は新しいお洋服を楽しみに待っていた。
・・・笑顔で。
それは演技だった。
(このお城に来てから考える時間が増えた)
お屋敷にいたときはそんな余裕はなかった。
そんなことは求められなかった。
(今は違う・・・)
今の少女には吸血鬼がいた。
いつも自分を見守ってくれてる大切な人が・・・
(彼が私を見ていてくれる。それだけで安心できる)
少女が入口を見る。
(彼は今ここにいない。私のためにお洋服を買いに行ってくれた)
それなのに心は温かかった。
吸血鬼が洋服を買っている姿を想像する。
(きっとあの人は私が洋服を着ている姿を想像している)
離れ離れなのにお互いに相手の姿を想像している。
それがおかしくて・・・
(・・・ふふ)
少女が心の中で笑う。
その顔は無表情だった。
演技はまだ完ぺきではなかった。
最初は寂しかった一人の時間。
それが今は吸血鬼のことを思う時間になった。
少女はこの時間が好きだった。
・・・自身がどれだけ彼を愛しているか分かるから。
(たとえ、今が寂しくても彼は必ず帰ってきてくれる)
それだけで安心できる。
「にー」
少女が笑顔の練習をする。
・・・最初に覚えた演技は涙を流すことだった。
(人は家族が死んだら泣くものだから)
だから、練習した。
そして、泣けるようになった。
(けれど、今は・・・)
笑顔で彼に『おかえり』を言ってあげたかった。
そして・・・『可愛いお洋服をありがとう』と言いたかった。
(最初は家族を殺し、私をさらった吸血鬼を悪い人だと思ってた。でも・・・)
今は違った。
(吸血鬼・・・あの人はきっと・・・)
少女が吸血鬼を思う。
(家族・・・悪い屋敷の住人達から私を助けに来てくれた・・・)
吸血鬼の姿を思い浮かべる。
(正義のヒーローだったんだ)
少女にとって吸血鬼は・・・自分を救ってくれたヒーローだった。




