第124話 XXXと吸血鬼
お城の帰り道。
吸血鬼は森を歩く。
幸せな未来を考えながら・・・
「・・・!」
吸血鬼が茂みの方を見た。
・・・血の匂いがした。
ふと、血まみれになった少女の姿が思い浮かんだ。
(そんなことあるわけない!)
吸血鬼が首を振った。
頭に浮かんだその光景を振り払う。
「念のためだ・・・」
吸血鬼が血の匂いがした茂みの方へ足を進める。
吸血鬼がそこで見たものは・・・
「・・・!」
そこにいたのは別の吸血鬼だった。
その吸血鬼はヤギの血を吸っていた。
吸血鬼がヤギから口を離した。
「メェー」
ヤギが鳴きながら去っていく。
「ち、違うんだ。これは事故なんだ」
吸血鬼が慌てて否定する。
「・・・何をあせっているか知らんが安心しろ。私はお前と同じ吸血鬼だ」
吸血Xが言った。
「そ、そうか・・・良かった」
目の前の吸血鬼が安堵した。
「お兄さんも血を吸いに森にきたのかい?この辺りはヤギが多いからそれがおすすめかな」
吸血鬼が話しかけてきた。
「いや・・・そうじゃない。私は長いこと血を吸っていないんだ」
X血鬼が答えた。
「へえー、そりゃすごい!でも確かにそうだね。吸わないならそれにこしたことはないよねー」
吸血鬼が吸X鬼の隣を歩く。
どうらや帰る方向が途中まで一緒らしい。
「僕も絶食しようかなー。でも体調悪くなるしなー」
うーん、と吸血鬼が悩む。
「お前は普段からヤギの血を飲んでいるのか?」
X血Xが聞いた。
「うん、そうだよ。もしかして、他にいい動物が!」
吸血鬼が目を輝かせた。
どうやら、血を吸うこと自体は嫌いじゃないらしい。
「いや、そういうわけじゃない」
「そっかー、残念」
吸血鬼が肩を落とした。
「・・・人間の血は吸わないのか?」
「何言ってんの!お兄さん!?」
吸XXの言葉に吸血鬼が驚いた。
「そんなことしたら、冒険者とシスターに退治されてしまうよ。くわばらくわばら」
吸血鬼が体を震わせた。
「・・・!」
その言葉にXX鬼は驚いた。
(吸血鬼は人間の血を吸わない?・・・なら私はなんだ?)
自分のことが分からなくなる。
「大丈夫?顔色悪いよ?」
吸血鬼が心配そうに聞いてきた。
「大丈夫だ・・・問題ない」
吸XXが答えた。
「さっきは悪かったな。血を飲んでいる邪魔をしてしまって・・・」
X血Xが謝った。
「いや、ちょうど飲み終わりだったから問題ないよ」
吸血鬼が笑って答えた。
「なっ、あのヤギはまだ生きていたぞ?」
「何言いってんのさー。もらう血はほんの少しさ。命までは奪わないよ。常識だろ?」
「・・・」
吸血鬼の言葉に空いた口がふさがらない。
「あっ、そっか。お兄さんは血を吸ってないからそういった常識が抜け落ちているんだ!」
吸血鬼が納得いった顔をする。
「いや、すごいなー。本当に血を飲まないんだ」
吸血鬼が感心する。
「あっ、お兄さん。もしかして、貴族の出かい?だったら、納得だ」
吸血鬼が言う。
「貴族は人間から血をもらうからね。だから、動物を襲って血を吸ったりもしない」
吸血鬼が話を続ける。
「貴族の吸血鬼は人間を守る・・・そして人間はお礼に少しの血を提供する!」
吸血鬼が聞いてもいないことをべらべらとしゃべる。
「強くてかっこいい吸血鬼!人間達から慕われるみんなのヒーロー!」
吸血鬼がキラキラした目で言う。
「憧れちゃうなー」
彼が語る吸血鬼は・・・私とはまるで違った。
「あっ、僕こっちだから」
吸血鬼が言う。
「じゃあね、貴族のお兄さん」
吸血鬼が去っていった。
「・・・」
その後ろ姿を黙って見ていた。
(吸血鬼は悪ではなかった。悪は・・・私だけだった)
その両目から涙があふれ出す。
XXXはようやく気付いた。
自身が吸血鬼とは呼べない・・・おぞましい何かに成り果てていたことに。
・・・不安に押しつぶされそうになる。
自分という存在が曖昧になる。
自分が・・・心が壊れていく。
そして・・・少女の顔が浮かんだ。
(アナスタシア・・・!)
吸血鬼は自分を取り戻した。
「・・・っ」
吸血鬼は泣きながら走り出した。
彼女の顔を見て安心したかった。
ただ、それだけだった。




