第123話 XXXと人間
(彼女はどんな服が好みなのだろうか?)
お店で洋服を選んでいるときにふと思った。
これまでは全て吸血鬼が少女に似合うと思った服を買っていた。
(実際に似合ってはいた)
吸血鬼が選んだ服に袖を通した少女の姿はどれも可愛く美しかった。
だから、これは吸血鬼の単純な好奇心だった。
あの少女はどんな服が好みなのか。
「どうかなさいましたか?」
店員が固まったままの吸血鬼を心配して声をかけてきた。
「い、いや・・・」
吸血鬼が言葉に詰まる。
そして・・・
「娘を連れてこようと思ってる」
吸血鬼が言った。
「・・・!よりを戻せたんですね。おめでどうございます」
店員が喜んだ。
・・・。
吸血鬼が店を出た。
今日は洋服を買わなかった。
(彼女と一緒に洋服屋に行こう)
吸血鬼は少女をお城から出す決心をした。
(洋服屋だけじゃない。二人でお出かけをしよう)
吸血鬼は少女とのこれからのことを考える。
(いろんなところに行って、人と話したり、動物と触れ合って)
どんどん考えが浮かんでくる。
(きれいな景色を見て・・・そうすれば彼女も感情を表に出せるようになる。きっと!)
未来への希望が湧いてくる。
(大丈夫。私は長い間、血を吸っていない。吸いたいとも思わない)
吸血鬼は自分のことを考える。
(今の私は吸血鬼・・・悪じゃない。私は人間なんだ。彼女と同じなんだ)
吸血鬼が自身に言い聞かせる。
そこに負い目はない。
あるのは自分は人間であるという確固たる自信だった。
吸血鬼は森を歩く。
この森を抜ければ彼女が待つお城につく。
足取りは軽く、心が弾む。
いつの間にか、かつて自分を支配していた恐怖も、強迫観念も消えていた。
ただ、彼女と過ごす幸せな日常が思い浮かんだ。
・・・彼の言うことは合っていた。
彼は吸血鬼ではなくなっていた。
とっくの昔から・・・
・・・犯した罪からは決して逃れることができない。




