第121話 吸血鬼と花
いつも通り洋服を選んでいると、店員が話しかけてきた。
「お兄さん・・・もしかして、娘さんは遠くに?」
店員がぼかした感じで聞いてきた。
踏み込んでいいか悩んだのだろう。
「・・・」
吸血鬼が固まる。
(そりゃ、そうか。こんなに服を買っているのに肝心の娘がいつまでも店に来ないんだから)
怪しまれて服を買えなくなると困る。
だから・・・嘘をついた。
「ああ、そうなんだ。わけあって、一緒に暮らせてないんだ。それでも、彼女のために何かしてあげたくて・・・」
「お洋服を送ってあげているんですね」
店員は吸血鬼の嘘を信じた。
「お兄さん、これを」
店員が一輪の花を手渡してきた。
「これは菊?娘は遠くにいるが死んだわけでは・・・」
「違います。この花は『アナスタシア』です」
店員が吸血鬼の勘違いを正す。
「このアナスタシアという名前に込められた意味は・・・」
・・・。
吸血鬼は洋服と・・・店員からもらった花を持って店をでた。
(早く、彼女に会いに行こう)
吸血鬼が帰路につく。
体の気怠さは消えていた。
・・・正確には消えたわけではない。
気にならなくなっていた。
その足取りは軽い。
(彼女にこの花をプレゼントしよう。そして・・・)
プレゼントは三つあった。
洋服、花、もう一つは・・・少女に会ってからのお楽しみだ。




