第120話 吸血鬼と不調
吸血鬼はずっと少女を見つめていた。
・・・寝る間も惜しんで。
見てない間、少女は動かない。
(そしてそのまま・・・一生動かなくなってしまうのでは?)
怖かった。
少女から目を離すことが。
(おかしいな。この前まで見る方が怖かったはずなのに)
ころころ考えを変える脳みそに翻弄される。
・・・今、吸血鬼は少女を見ていなかった。
洋服を買いに行くためだ。
(本当はずっと少女のそばにいたい。ずっと見つめていたい)
でも、それでは駄目だった。
(彼女は新しいお洋服を待っている)
吸血鬼は洋服を着た少女を思い出す。
『・・・』
洋服を着た少女は無表情で椅子に座っていた。
それでも吸血鬼には分かっていた。
彼女が喜んでいることを。
「早く、行かなければ・・・」
それなのに・・・
体が思うように動かない・・・
(眠気が・・・いくらなんでも寝なさすぎた・・・)
吸血鬼が倒れた。
・・・心配はいらない。
ただ、眠っているだけだ。
「・・・はっ!」
吸血鬼が目を覚ました。
(どれくらい、寝てた?・・・早く少女の元へ・・・)
少女のいる部屋に行こうとして・・・思い直した。
「洋服を買いに行かなければ。彼女ががっかりしてしまう」
吸血鬼がお城を出た。
「・・・」
吸血鬼が歩く。
(おかしい。いつもより足取りが重い)
体の気怠さが抜けない。
(睡眠はさっきとった。どうして・・・」
そこでようやく吸血鬼は気づいた。
(そういえば、長いこと血を飲んでいなかったな)
吸血鬼が体を動かす。
(少しだるさはあるが問題ない。日常生活を送るくらいなら・・・)
吸血鬼は歩く。
(・・・もう、人を襲うこともないしな)
自虐しながら。




