第118話 少女とお洋服
「・・・」
吸血鬼は新しい食事を持って少女の部屋の入口に来ていた。
(また、食べていない)
入口には手つかずのご飯が置かれていた。
(もう、何日もこの調子だ・・・)
吸血鬼は少女が心配だった。
(無理して食べる必要はない)
吸血鬼は思案する。
(しかし、人間は何日食事をとらずに生きられる?)
吸血鬼はここ数日、少女の姿を見ていない。
意図的に視界に入れないようにしていた。
(見てしまったら、私は少女を・・・)
殺してしまうんじゃないか?
・・・それはありえないことだった。
しかし、吸血鬼は罪悪感からどうしようもないほどの強迫観念に囚われてしまっていた。
『ぐー』
お腹が鳴る音がした。
吸血鬼のものではない。
少女のものだ。
「・・・!」
恐怖よりも心配が勝った。
吸血鬼は顔を上げた。
そして、少女を見た。
・・・少女は痩せこけていた。
今にも死にそうなほどに。
「・・・!!」
吸血鬼は泣きそうになりながら驚いていた。
少女が死にそうなことに?
それもある。
けれど、それ以上に・・・
「・・・」
少女は無言で吸血鬼を見る。
その手には・・・吸血鬼があげた洋服が握りしめられていた。
「・・・っ、・・・!」
声が出なかった。
吸血鬼はそんな少女を見て涙が止まらなかった。
(早く、ご飯を食べさせてあげなれけば!)
それなのに、口からでたのは別の言葉だった。
「洋服を着なさい」
なぜなら、それが少女が今一番したいことだと思ったから・・・
吸血鬼の考えは・・・合っていた。
少女は無表情のまま着ていた服を脱ぎ始める。
少女は表情の変え方を知らない。
それでも心は少しずつ戻っていっていた。




