第116話 手に入れた感情
「新しい服だ」
吸血鬼が少女に服を差し出す。
「・・・」
少女は服を受けとらない。
「んっ」
代わりに腕を伸ばした。
着替えさせろ、ということらしい。
「・・・分かった」
少女の服を着替えさせるのは初めてじゃない。
今の服は吸血鬼が着せたものだ。
少女の服に手を伸ばそうとして・・・
「うっ!?」
吸血鬼は手を引っ込めた。
「・・・?」
少女が不思議そうな顔をする。
「はあ、はあ」
吸血鬼は息を切らして苦しそうな顔をしていた。
「・・・」
気がつくと。
椅子に座っていたはずの少女が吸血鬼のそばに立っていた。
少女は吸血鬼に手を伸ばした。
・・・無表情な顔のまま。
「やめろ、触るな!」
吸血鬼が伸ばされた手をはじいた。
「・・・!」
少女がその衝撃で尻餅をついた。
「・・・」
ショックだった。
吸血鬼に拒絶されたことが。
(あれ・・・?)
少女が自身の顔を触る。
拒絶されたことが辛くて、こんなにも苦しいのに、その顔は無表情のままだった。
心・・・感情を持っていなかった少女は、新しく手にいれた感情を表に出す方法が分からなかった。
(・・・胸が痛い)
少女が胸を押さえた。
初めて手に入れた感情は痛みであり、苦しみだった。




