第114話 吸血鬼と少女
「・・・」
吸血鬼は黙って少女を見ていた。
「もぐもぐ」
少女は吸血鬼が持ってきた食事を食べていた。
「お前、名前は?」
食べ終わるのを見届けてから吸血鬼が言った。
「奴隷」
少女が答えた。
「だから、それは名前ではないと言っただろ」
吸血鬼が頭を抱えながら言う。
「お前があの屋敷に連れて来られる前の・・・家族から呼ばれてた名だ」
吸血鬼が改めて聞いた。
「屋敷の人達が家族」
少女が言う。
「私を奴隷と呼んでた」
少女の答えは最初と変わらなかった。
(この子はいつからあの屋敷にいたんだ?)
吸血鬼の頭に疑問が浮かんだ。
(しかし、これ以上聞いても彼女の辛い記憶が蘇るだけ・・・)
吸血鬼は名前を諦めて話題を変えることにした。
「お前、欲しいものはあるか?」
「・・・」
少女は何も言わない。
「じゃあ、好きなものはなんだ?」
「・・・」
少女は何も言わない。
「???」
少女はただ困った顔をしていた。
・・・少女は答えないのではない。
答えられないのだ。
見世物だった彼女には不要なものだったから・・・
(これは困ったな)
吸血鬼が頭をひねる。
(何を渡せば彼女は喜ぶ?)
うーん、と考える。
(そういえば・・・)
あることを思って、吸血鬼が少女を見た。
少女が今着ている服は吸血鬼が普段から着ている男物の服だ。
サイズはぶかぶかで、なにより可愛い彼女には似合わない。
「よし、服をプレゼントしてやろう」
そう言うと、吸血鬼はお城を飛び出した。
・・・少女はひとり部屋に残された。
「・・・」
少女は動かない。
いつものように吸血鬼が帰ってくるのをじっと待っていた。




