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第111話 少女とお部屋
大きな城があった。
吸血鬼はこの城に一人で住んでいた。
「この部屋を使え」
吸血鬼が城の一部屋を少女にあてがった。
「・・・」
少女は部屋に入ると、立ったまま動かなかった。
「・・・座っていいぞ」
少女は吸血鬼に言われるがまま、床に座った。
「椅子に座れと言ったんだ」
吸血鬼が呆れたように少女に言った。
「・・・」
少女はその言葉を聞いて、部屋の奥にあった椅子を掴んだ。
そして、わざわざ部屋の真ん中まで持ってきた。
「なぜ、椅子を移動させた?」
吸血鬼が少女に聞いた。
「あそこからだと、入口からよく見えないので」
少女が椅子に座った。
部屋の入口にいる吸血鬼に自身の姿がちゃんと見えるように。
「部屋の鍵は開けておく・・・好きにしろ」
吸血鬼が部屋から出ていく。
・・・それは逃げてもいいという意味だった。
「・・・」
少女は動かない。
椅子に座ったまま吸血鬼が帰ってくるのをじっと待っていた。




