第103話 クレアと選択
「薬草ー、薬草ー。傷治すー」
クレアが鼻歌まじりに森を歩く。
彼女は薬草が大好きだった。
それは神父が教えてくれた話に起因する。
『私達はこの草に薬草という名前をつけました』
『それ以降この薬草は人の傷を癒すという願いだけを叶えるようになったのです』
薬草には過去の人達の優しい願いが込められていた。
「メェー、メェー」
どこからか、鳴き声が聞こえた。
(一体何かしら?)
クレアは鳴き声の方向に歩き出した。
「メェー」
そこに居たのは子山羊だった。
足にはトラバサミが。
どうやら、罠にかかってしまったらしい。
「今、外してあげますね」
クレアが子山羊の足を挟んでいたトラバサミをとってあげた。
「メェー」
子山羊が立ち上がってクレアにすり寄ってくる。
しかし、すぐに転んでしまう。
足を怪我したせいで上手く立てないらしい。
「私が薬草で治してあげますよ」
クレアが子山羊を抱える。
(さーて、どうしましょうか)
森で薬草を見つけて治療する。
もしくは、教会に連れ帰って治療する。
(どちらにするべきか)
・・・バタフライエフェクトという言葉がある。
蝶が羽ばたけば、巡り巡って竜巻が起こるというものだ。
今回の選択はそれを簡単にしたものだ。
クレアが死ぬか。
神父が死ぬか。
・・・の二択。
「よし、決めた。教会で治療しましょう」
それは・・・『神父が死ぬ』選択だった。
これは運命であり。
避けようのない事故だった。




