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第10話 勇者誕生

 冒険者ギルドにたどり着いた勇者とメイ。


「ここが冒険者ギルド・・・あっ、猫耳が生えたメイドさんだ。さすが異世界!」

「あの耳は作り物ですよ」


 勇者の勘違いをメイが訂正する。


「そうなんだー」


 相槌を打ちながらギルドを見て回る勇者。


「あっ、見て。あのメイドさん、耳だけじゃなくて尻尾も生えてるよ。凄いね」


 勇者が黒猫メイドのマスターを指差す。


「あれ?あのメイドはどう見ても魔物・・・」

「お二人はこちらのギルドは初めてでしょうか」


 メイの言葉を遮る形で受付嬢のルイが話しかけてきた。


「はい!初めてです」


 元気よく答える勇者。


「お二人は冒険者登録でよろしかったでしょうか」

「いえ、私は付き添いでこちらの彼だけお願いします」


 メイが勇者の体を引っ張る。


「かしこまりました。では、こちらの受付までお越しください・・・にゃ」

「わ、分かりました」


 受付に着くとルイが紙を差し出す。


「こちらにお名前をお願いします」

「はい」


「書き終わりました」

「ありがとうございます。勇者さんですね・・・勇者!?」


 勇者という単語に反応しギルドの冒険者達の視線が受付に集まる。


「あんな可愛い子が勇者だと!?」

「いや、よく見ろ。あいつ男だぞ」

「あれが男の娘って奴か」


 ざわつく冒険者たち。


「お前が勇者?そうは見えねーな」


 勇者の前に冒険者のランドルフが立ちはだかる。


「ん?隣にいるメイドは・・・いや、猫耳が無いからギルドの従業員じゃないな」

「私は勇者様専用のメイド、メイです」


「じゃあ、メイさん。あんたのご主人を借りて行くがいいか?」

「ええ、構いませんよ」

「メイさん!?」


 ランドルフに引きずられていく勇者。


「どこに連れていくんですか。えーと」

「ランドルフだ。最近、勇者の名前を騙る偽物が出没してるからな。少し確かめさせてもらう」


「僕は偽物じゃないです!」

「それはこれから分かる・・・そう決闘でな」


「よっと」

「ひぎゃ」


 ランドルフが勇者を放り投げる。


「痛たた」


 地面にぶつけた尻をさする勇者。


「決闘は木刀を使って行う。降参したら負けだ。逆に言えば降参さえしなければ負けにはならない。根性見せろよ勇者」

「ううー、どうしてこんなことに」


 涙目になりながら木刀を握る勇者。


「勇者様ー、頑張ってください」


 遠くから応援するメイ。


「そうだ、勇者。ランドルフの旦那をやっちまえー」

「期待してるぞ、勇者ー」


 同じく勇者を応援する冒険者たち。


「おい、てめーら。俺を応援しろよ」

「ランドルフさんの強さは折り紙つきですから。わざわざ応援する必要ないでしょ」


 ルイがランドルフをたしなめる。


「おい、何ルーにゃんと話してやがる」

「死ねー、ランドルフ」


「てめーら、マジで覚えてろよ。勇者の次はお前らの番だからな」


 冒険者たちの野次にぶちぎれるランドルフ。

 ランドルフが冒険者たちと場外乱闘を繰り広げている間にルイが勇者にそっと耳打ちする。


「ランドルフさんは手加減苦手だから降参するなら早い方がいいよ」

「ひえー」


 怯える勇者。


「はい、みなさん。静かに」


 ルイの言葉に冒険者たちが黙る。


「今回の決闘の見届け人はこの私、ルーにゃんが務めさせていただきます。それでは決闘開始です・・・にゃ」


 カーン、と決闘の開始を告げる音が鳴る。


「もうどうとでもなれー」


 木刀を持ってランドルフに突っ込む勇者。


「よっと」


 ランドルフが勇者の足を払う。


「えっ」


 バランスを崩す勇者。

 ランドルフはそのまま勇者の脳天に向かって木刀を振り下ろす。


「ひぎゃー」


 情け無い叫び声を上げながら勇者が仰向けに倒れる。


「降参しますー」


 負けを認める勇者。


「勝者、ランドルフ!」


 ルイが高らかにランドルフの勝利を宣言する。


「まったく、情け無いですね。勇者様は」


 倒れた勇者に駆け寄るメイ。


「メイさーん。痛かったよ。うわーん」


 メイに抱きついて泣き出す勇者。

 その様子を見ているランドルフ。


「なあ、こんあ弱虫が本当に勇者なのか?」

「ステータス画面を見れば分かりますよ。勇者の称号が移ってるはずなので」

「えっ?」


「そういえば、そうだったな。『ステータスオープン』」

「えっ?」


 疑問を浮かべる勇者を無視して話を進めるメイとランドルフ。


「私にも見せてください」


 ランドルフの側によるルイ。

 そして表示されたランドルフのステータス画面を確認する。


「おー、まじか」

「これは・・・なるほど」


 ルイはランドルフから離れると、こほん、と咳払いをした。

 そして声を張り上げる。


「今この瞬間を持ってランドルフさんが勇者となりました・・・にゃ」

「ええええええ!?」


 ルイの言葉に目を丸くして驚く元勇者。

 こうして新たな勇者ランドルフが誕生した。

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