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第1話 二人の出会い

 目を覚ますと真っ白な空間にいた。


「おはようございます。勇者様」

「勇者?僕が?」


 天使の言葉に勇者は首をかしげる。


「勇者様は本来死ぬべきではありませんでした。そこで神様は勇者様に第二の人生を与えることにしたのです」

「えっと、話が急すぎて何がなんだか」


「トラックに轢かれました」

「えっ?」


「勇者様の死因です」

「死因・・・」


 勇者は頭をひねるが何も思い出せない。


「轢かれた衝撃で記憶が飛んだのでしょう。よくあることです」


 天使が手を上げると何もない空間から剣や槍といった武器が出現した。


「勇者様にはこれから異世界に行ってもらいます。そこで魔王を倒して世界を救ってください」

「ああ、それで僕を勇者様と呼んでいるんですね」


 勇者は天使が出した武器を手に取って確かめる。


「勇者様は異世界に好きなものを一つだけ持っていけます。武器はその一例です」

「ここにある武器以外でもいいんですか?」


「ええ、銃でも戦車でも何でも出せますよ」

「なるほど。その武器で魔王を倒せってことですね」


「それでもいいですが、そうじゃなくてもいいですよ」

「魔王を倒す以外・・・船とかの移動手段ですかね」


「いえ、そもそも物である必要はありません。もっと概念的なものでもオッケーです」

「じゃあ、空を飛んだり、魔法を使ったりもできるんですか?」


 目を輝かせる勇者。


「もっと俗物的な願いでもいいんですよ」

「俗物?」


 天使は下卑た笑みを浮かべる。


「透明人間になって女湯を覗きたい。魅了の魔法を使って女の子にもてたいとか。そんな男の夢を叶えることもできますし、いっそのこと美少女に生まれ変わりたいとか」


 天使は勇者に身を寄せる。


「えっと、少し近くないですか」

「もっと素直になっていいんですよ。勇者様」


 天使は息づかいを荒くしたまま顔を近づけてくる。


「もしかして、魅了の魔法かけてます?」

「ふふ、実演した方が早いと思って」


 魅了の魔法を解いて天使が離れる。


「どうですか。さっきみたいに女の子に好かれたくないですか」

「すごい推してきますね」


「男の人は女の子が好きでしょ。特に私みたいに可愛い女の子が」

「そ、そうですね」


 天使が上目づかいで勇者の顔を覗く。


「一人は寂しいですよね。生き物を連れていくこともできますよ」

「犬とかですかね」


「人間でもいいですよ。それこそ可愛い女の子とか」

「天使でも?」

「もちろん、オッケーです」


 腕を組んで考えこむ勇者。


「天使さん。異世界に着いてきたがってますよね」

「私は神様より勇者様を導くよう仰せつかっています。そんな私が勇者様の貴重な願いに口を挟むことなどできません」


 天使は仰々しく話す。


「この願いは一度だけの大切な願いです。後悔のないようしっかり考えなくてはいけません」


「だから、私は勇者様のためにどのような願いが叶えられるのか、事細かに説明しているのです。決して勇者の願いを誘導しようとしているとかそいうわけではないのです」


 天使が自分の体を勇者にくっつける。


「仮に勇者様が私に欲情して私を連れ去っても、それは勇者様の意思で私の意思ではありません。不可抗力です」


 天使が勇者に顔を近づける。


「勇者様はモテたがってますよね。女の子に」


「それも可愛い女の子に」


 天使はさらに顔をづける。

 唇が重なりそうになるほどに。

 ここで勇者が別の願いを言おうものなら天使は唇を重ねて口を封じるだろう。


「・・・連れて行きます」

「誰を?」

「天使さんを連れて行きます」


 天使は満面の笑みを浮かべた。

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