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藪を突いて蛇を出した者

ネットで読んだ話を組み合わせて作成しました。自分の性格が悪いのを承知で書いています。

此処に1人の少年がいる。彼の名前は『矢嶋光一』。地方都市『楠木ヶ原市』に住んでいる小学5年生の少年である。同年代の子供達よりも少し大柄で柔道をしているスポーツマンである。


夏休み近くの月曜日の事だった。光一のクラスメイトである女子児童『沢田裕美』が全校集会で校長先生から表彰されたのである。何でも...駅で体調を崩したお年寄りを介抱した後、持っていたスマホで救急車を呼んで助けたらしい。かなり、危険だったらしく...老人の家族はとても感謝していたとの事である。光一は裕美の事を単なるクラスメイトとして認識していなかったので全校集会で表彰されている彼女を見てもいい意味でも悪い意味でも関心を持たなかった。だけど、


「この偽善者!調子に乗るなよ!!」

「そうよ!いい子ちゃん振っちゃて!!」

「そうだ!そうだ!!」


どんな場所にも捻くれ者という奴はおり、クラスメイトである男子児童『大内茂』と他2人が裕美を的外れな非難をして来たのである。光一は柔道を教わっている師匠の教育から“他人の強さ”を認められない人間が大嫌いであった。おまけに


「大内っ!てめぇが何を言ってやがる...!!」


他人からの風評であるが、光一は大内の事を快く思っていなかった。元々、大内は馬鹿な性格のお調子者であり、光一は“何の取り柄も無い癖に偉そうな奴”の事が嫌いだったのである。三人に責められて泣きそうになっている裕美の前へと立つと光一は冷たい眼を大内に向けながら言い放った。


「おい、沢田のした事の何が悪いんだ?」

「!?矢嶋......」

「おっ、おい!」

「ちょっと!矢嶋を相手にするのは...」


取り巻き達は大柄で柔道が得意な矢嶋を恐れているが......馬鹿な大内は意地になって叫んでしまった。


「っんなの!沢田の奴がいい子ちゃん振って調子に乗っているのが悪いんだよ!!」

「ふざけんな!お前の親父よりはマシだぁ!!」

「えっ?」

「「へっ!?」」

「「「「「!?」」」」」


光一の言葉を聞いた児童達は驚いた様子で固まっており、言われた大内は勿論の事、庇われていた裕美、大内の取り巻き達、教室に残っていた生徒達も固まっている。


「なっ!?何だよ!?それは!?」

「沢田が偽善者なら!お前の親父は臆病者の役立たずだって言ってんだよ!このクズ野郎が!!」

「なぁ!?何を言ってんだよぉ!?」

「いいか!お前の親父はなぁ!?」


光一は柔道教室の先生(以下:師匠)...大内の父親とは小学校時代の同級生から聞いた話を馬鹿を始めとした教室の生徒達に語り出した。話は彼らが小学5年生の頃に轢き逃げ事件が起こったのである。被害者は同じ小学校の生徒で大内の父親が目撃者だった。だが、大内の父親は轢き逃げ事故を見た恐怖と犯人が“親友の父親”である恐怖からその場から逃げており、途中で師匠とすれ違うも彼に気付かずに逃げ去った。そして、勘の鋭い師匠が大内父が来た方向を進んだら被害者が倒れていたのである。師匠は急いで先生に知らせに行ったが、被害者は数日後に亡くなってしまったのだった。師匠から話を聞いた警察は大内父へと話を聞きに行ったが、友人への思いと恐怖心から証言する事が出来なかった。だが、大内父の様子から“犯人が彼の知っている大人”である可能性を察した警察は大内父の“親友の父親”に辿り着く事が出来、無事に逮捕する事が出来たのである。


『その後...友人家族と顔を合わせ辛かったのか、奴は地元から消えていたな』

『逃げたんですか?』

『そうなるな...まぁ、少しは解かるな』


師匠は地元からこの街へとやって来た時、大内父が勤務している不動産会社に物件探しをする為に訪問した時に彼と再会したのである。大内父は師匠を覚えていなかったが、師匠は名前と顔で一目で気付いたという。そして、師匠が矢嶋達と試合帰りに歩いている時に大内一家が歩いているのを見かけ、その後日に上記の会話が発生したのである。そして、師匠は大内父を反面教師にして矢嶋にこう教える。


『いいか...有名な漫画に“人間は正しくなければ生きる価値無し”とか言っている奴がいるだろ?これは流石に極端だろうが...こういう意識は必要最低限は私は持っていた方が良いと思っている。こういう意識を持っている事で成長出来る人やそんな人に救われる人だっているんだからな』

『はい』

『行動出来なくても...正しくない自分を恥じる気持ちや正しく行動出来る人に対する敬意は忘れるなよ。これは人間としての品格の問題なんだからな』

『はい!』


「うわぁ~...確かに沢田さんを馬鹿にする資格無いわ!」

「その人...大内の父親がすぐに助けを呼んでたら死ななかったかも知れないって事?」

「どんな教育を受けてんだ?アイツは?」

「うん、そんな過去があったら絶対に裕美みたいな人を馬鹿にしない様に教えるよね」

「見損なったわ」

「最低だぜ」


「嘘だ!そんなの知らない!!デタラメだぁ!!」


「デタラメじゃねぇ!師匠は●●県●●市の出身だ!!」


「!?そこ...父ちゃんの故郷?じゃあ、本当に......?」


「お前の父親の地元に帰った事はあんのか?」

「いや...じいちゃん達がこっちに来る事があるけど......」

「師匠が言ってたぜ......事件以来、地元でお前の父親を見た事が無い...知り合いに聞いても会った事が無いとよ」

「......」


大内はガックリと肩を落とすと教室から出て行った。クラスメイト達は白い目で奴の後ろ姿を見ている。


「ありがとう......矢嶋くん」

「気にすんなよ...俺が言いたい事を言っただけだし」

「うん」

「気にするなよ?これからも、ああいう馬鹿がお前の前に現れるかも知れねぇが...大抵はあいつの父親みてぇに大事な時に行動出来ねぇ奴ばかりなんだからな」

「うん、そう思う事にするよ」


その日の夕方の事だった......大内父が帰宅途中に轢き逃げに遭ったのである。人気の無い場所での事故であり、少し通報が遅かったら死んでいたかも知れない怪我を負っていたが、近くに通りかかった小学3年生の少年が一番近い家で住人で近くの畑で仕事をしていた老人に助けを求めたのである。少年から話を聞いた老人は急いで救急車を呼んだ事で大内父は少し後遺症が遺ったが命は助かった。

後日、大内父が病室に両親と訪れた少年にお礼を言った際に彼は曇りの無い瞳でこう返した。





『人間として当たり前の事をしただけだよ!』




その言葉を聞いた大内父は泣いていたらしい。それがどんな感情で流した涙はまた聞きで耳にした矢嶋には判らない。





それから、大内達は大人しくなった。クラスメイト達に“ヘタレ”扱いされて教室で小さくなっている。小耳に挟んだ話によると大内父は昔の話を大内の母親である妻にもしていなかったらしい。担任から話を聞いた大内父は妻子を連れて裕美に対して素直に謝ったと同時に“自分が持っていない彼女の強さ”を称えたいう。ちなみに大内父を“役立たず”呼ばわりした矢嶋と弟子に他人の過去話をした師匠は担任に説教を受けた。


「流石に“役立たず”は言い過ぎだ......反省する様に」

「はい」

「貴方も具体例を出して教育するのは間違っていませんが......」

「私も配慮が足りませんでした」


それと...この出来事が矢嶋と裕美の馴れ初めとなるのはまだ先の話である。

いい意味でも悪い意味でも客観的な視点で最善な行動が出来ない人間はこういう目で見られるのです。

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