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第五話

 眠ってしまってどのくらい時間が経ったんだろう。


 秋華は急に目が覚めた。


 すると隣の椅子に人が座っていて、なんとその人の肩に頭を乗せた状態で寝てしまっていた。


『うっわぁ・・・最悪・・・知らない人の肩に頭乗せて寝るなんて最悪すぎる・・・私めっちゃ迷惑な人間じゃん、恥ずかしすぎる!!!』そう思いながら頭を上げて


 秋華「あぁ・・・本当すみません!!!!」


 そう言いながら隣の人の顔を見ると快斗だった。


 秋華「うぇっ!!!え!!!なんで!!!」


 びっくりし過ぎて変な声が出てしまった。


 快斗「あははは!!いやいや!!びっくりしたのはこっちですよ!挨拶終わって先生呼びにいこうと楽屋のドア開けると先生が船漕いでて今にも頭から倒れてしまいそうになってたんですよ。だからダッシュで先生の頭を支えたんだけど、先生起きなくて。疲れてるんだろうなって思って隣に座って肩を貸してたんです」

 秋華「本当ごめんなさい!最近ほとんど寝れてなくて・・・。って私どのくらい寝てました?」

 快斗「うーん、2時間くらいかな?」

 秋華「2時間も!? うっわぁあ・・・最悪だ・・・」

 快斗「先生は悪くないよ、待たせてた俺が悪いんだし。でも待っててくれてよかったです」

 秋華「いやいや・・・あぁ・・・やってしまった・・・」

 快斗「大丈夫ですよ!それより、今日来てくれてて嬉しかったです。まさか先生が来てるんて思ってなかったし、しかもめっちゃ席近かったですよね」

 秋華「あっ、そうなんです。友達の妹さんが急用で来れなくなって」

 快斗「そうだったんですね、先生が来てくれて嬉しかったです。ありがとうございました」


 秋華の目をじっと見つめながら笑顔で話す快斗。


 快斗「もうメンバーもマネジャーの高山さんも帰っちゃったんです。今日自分の車できてるから送りますよ」

 秋華「えっ、悪いですよ。一人で帰れますから」

 快斗「俺ももう帰るだけだから、送らせてください。今日のお礼も含めて」

 秋華「あっ、じゃぁ・・・お願いします」

 快斗「じゃぁ荷物持ってくるからちょっとだけ待っててくださいね」

 秋華「はい」


 快斗は楽屋に戻り荷物を持って楽屋から出てきた


 快斗「さ、帰りましょー」

 そう言って快斗は廊下を歩いていった。その後ろを歩く秋華。

 快斗の車がある地下駐車場まで行き、快斗は運転席、秋華は助手席に乗り込んだ。


 快斗「先生、お腹空いてない?」

 秋華「あぁ確かに。お昼から何も食べてないです」

 快斗「俺も差し入れとかあったんだけど、なんやかんやで食べれなかったんだよね。よかったらうちでご飯食べませんか?」

 秋華「え!?家ですか!?私が家にお邪魔しちゃダメですよ。怒られちゃいますよ」

 快斗「え?誰に?あぁ、うちのグループは恋愛禁止だから高山さんはちょっとでも周りやファンの人たちが勘違いしちゃうようなことしたらめっちゃ怒りますけどね。でも先生ってわかってたら高山さんは怒らないですよ、しかも先生を送っていくってことは知ってますから」

 秋華「え、そうなんですか?」

 快斗「先生が居眠りしてた時に高山さんに先生を家まで送るってことは伝えてたんです」

 秋華「そうだったんですか」

 快斗「はい」

 秋華「いやいや、高山さんじゃなくて!!最近、見たんです。SNSで・・・快斗さんがモデルの子と恋愛してるって記事を・・・」

 快斗「えー!!!まじですか!!!」

 秋華「まさか知らなかったんですか!?」

 快斗「全然!!恋愛なんてしてませんよ!!だってうち、恋愛禁止ですよ!?やっと全国ツアーできるほど頑張ってきたのに、恋愛なんてするつもりありませんよ。周りを裏切っちゃうようなことは絶対しません!」

 秋華「そ、そうですよね」


 秋華は恋愛報道が嘘だったってことにホッとしたけど、それ以上に快斗の口から恋愛するつもりない発言に傷ついた。わかっていたことだけど、本人から直接言われると何倍も傷を負う。

 秋華は胸が苦しくなって、自然と涙が溢れてしまった。


 快斗「先生・・・!?どうしたんですか!?気分でも悪いですか!?」

 秋華「あっ・・・いえ・・・大丈夫です」


 快斗に自分の気持ちを悟られないように涙を堪えるので必死だった。


 快斗「とりあえず、自分ちに行きますね」


 そう言いながら快斗は車を走らせた。

 秋華は涙を堪えようとすればするほど涙が溢れてしまって喋ることもできなくなっていた。


『私、こんなにも快斗さんのことが好きだったんだ・・・』


 都内にあるいかにも高級なマンションに車が入って行った。

 快斗の住むマンションだった。


 地下駐車場に車を停め、快斗は運転席から出て助手席のドアを開けた。


 快斗「先生、大丈夫ですか?歩けますか?」

 秋華「はい・・・本当すみません」

 快斗「いえいえ、俺は大丈夫です。とりあえず家に入りましょう」


 そう言って快斗は秋華の手を握ってマンションに入りエレベーターで最上階のボタンを押した。

 エレベーターの中でも快斗は秋華の手を握って離さなかった。

 でも秋華は快斗の手を握り返すことはしなかった。

 でも握られた手のおかげで自然と涙も止まった。


 最上階について快斗は家の鍵を開けて秋華を中に入れた。


 秋華「おじゃまします・・・」

 快斗「どうぞ」


 すると最近飼い始めたと聞いていた猫のララがリビングから駆け寄ってきた。

 快斗はララを抱き上げて

 快斗「ララ〜、ただいま。お利口にしてた?」


「ニャァ〜」


 ララは甘えた声で快斗のほっぺに頭をすりすりしていた。


 秋華「うらやましい・・・」ぼそっと言ってしまった。

 猫をうらやましいなんて思う日がくるなんて・・・


 快斗「ん?うらやましい?あぁ、猫ですか?先生も抱っこしますか?」


 どうやらバレてなかったみたい


 秋華「あっ、はい・・・」


 快斗は猫のララを秋華に抱っこさせた。

 快斗「可愛いでしょ〜。最近本当癒されてるんです。仕事で嫌なことあってもララが家で待ってるから早く帰ろうってなるし」

 秋華「そうですね、医学的にもペットは人を癒す力があると言われてるので効果抜群ですね!」

 快斗「でしょ〜、うちの子は特別可愛いですしね。あ、先生何食べますか?選択肢はウーバーしかないですけど!ははは!」

 秋華「あ、じゃぁ、ハンバーガー食べたいです」

 快斗「いいですね!じゃぁめちゃくちゃ美味しいハンバーガー頼みましょう!」


 秋華はリビングにある大きいソファーに座った。

 抱っこしていた猫のララを膝の上に座らせて頭を撫でると喉をゴロゴロと鳴らしていた。


 快斗はズボンのポケットからスマホを取り出して「ポテトとチキンナゲットも頼みましょう!」と言いながら秋華の隣に座りウーバーを注文していた。


 秋華「あ、あの・・・ついさっきまで歌って踊っていたのにぐったり疲れたりしないんですか?」

 快斗「めっちゃ疲れますよ!今日は初のソロ曲も歌ったし」

 秋華「なのに私、居ていいんですか?ゆっくり休んだほうが良くないですか?」

 快斗「いいんですよー、今は先生が居てくれるほうがいい」


 秋華はそのセリフにドキッとした。

『期待してしまうようなことさらっと言うなんてなんて罪な・・・私の気持ちをざわつかせないでほしい』

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