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第四話

 体も疲れてるから早く眠りたいのに快斗のことが気になって布団の中で久々にSNSを開いてみた。

 快斗のことをもっと知りたくて快斗を検索してみると、踊ってる快斗や歌ってる快斗、バラエティ番組でドジしてる快斗やカッコつけてすましてる快斗・・・いろんな快斗を見つけた。

 私の知らない快斗がたくさん見れて幸せだった。でもだんだんと胸が苦しくなってきた。これってやっぱり恋なのかな・・・

 SNSで検索した快斗の動画や写真をどんどん流していると、ある記事に辿り着いた。

『恋愛禁止の超国民的アイドル桜庭快斗、人気モデルと熱愛報道!』

 私は一瞬で血の気が引いた。

 写真の顔をぼんやりしていたけど、間違いなく快斗だった。隣の女性はスラッとした髪の長い髪型をしていて快斗と腕を組んでマンションに入っていく写真だった。

 隣の女性は「あんな」って子なのかな・・・考えれば考えるほど胸が苦しくなった。

 そのモデルの子について調べたかったけどもうこれ以上傷つきたくなくてやめた。


「SNSなんて見なきゃよかった・・・」


 スマホを閉じて寝ようとした。時刻はもう深夜2時を過ぎていた。

「いい加減寝なきゃ・・・」と思って目を閉じるけど、なかなか眠れなかった。

 雨の中、手を差し出してくれた快斗の顔や、SNSで見たいろんな快斗の顔を頭の中でずっと映し出されていた。

「今頃、何してるのかな。薬飲んで寝たかなあ・・・」

 なんて思っていたらいつの間にか眠っていた。


 7時のアラームで目を覚ました。

 あまり睡眠時間が取れてなかったから目が覚めても頭がボーっとしていたし、目が覚めても快斗のことが気になって仕方なかった。

 薄くできたクマをメイクで上手く隠し、朝ごはんを軽く食べて出勤した。



 秋華「おはようございます」

 健一「おぉ!神谷先生おはよう!昨日は桜庭さんの診察はどうだった?」

 秋華「あ、はい、すぐに終わって私も帰宅しました」

 健一「そうかそうか、時間外で申し訳なかったね、ありがとう。今日もよろしくね」

 秋華「はい、よろしくお願いします」


 院長の健一と話が終わると診察室に入った。今日も予約でいっぱいの患者さんの診察を淡々とこなし、1日の診察を終えた。


 健一「昨日は時間外診察があったし、今日も忙しかったから早く帰って土日はゆっくり休んで」

 秋華「はい、おつかれさまでした」


『今日は早く帰って早く寝よう・・・久しぶりの寝不足はやっぱり体に堪える・・・』


 帰りはどこにもよらず、家へ帰りソファーで寝落ちしてしまった。

 目が覚めると深夜1時だった。


『あっ、しまった・・・メイクも落とさないで寝てしまった・・・』


 ふとスマホを見てみると美咲から着信が残っていた。


『あぁ。もう寝ちゃってるかなぁ』と思いながらもLINEを送った。


 秋華「ごめん!寝落ちしちゃってた!もう寝ちゃってるよね?」


 するとすぐに既読がついて電話がかかってきた


 秋華「もしもし?起きてたの?ごめん、なんの用事だった?」

 美咲「だいぶお疲れだね〜、あのさセイレンってアイドルグループ知ってる?」

 秋華「セイレン!?知ってる!どうしたの?」

 美咲「妹がライブのチケット当選したんだけど、行けなくなっちゃってさ〜、明日暇なら一緒行かない?」

 秋華「え!!いく!!絶対いく!!」

 美咲「え、なになに!秋華、セイレンのファンだったの!?」

 秋華「あっ、そうゆうわけなじゃないんだけど、たまにはさ!ストレス発散にもなりそうじゃん!」

 美咲「あ、そうね!私もセイレンって名前は知ってるけど、あまり知らなくって。でもいけるならよかった〜。あっ、時間はね15時会場の16時開演だから14時半に集合しよう!じゃ、おやすみ〜」

 秋華「ありがとう!おやすみ〜」


 電話を切ったあと、秋華はこの奇跡に飛び跳ねて喜んだ。


『やばい!!嬉し過ぎる!!快斗の歌とダンスを生で見れるなんて!!あ、でも歌ってちゃんと聴いたことないな・・・予習しなくちゃ』


 音楽サブスクでセイレンの楽曲を朝まで流し続けた。


 気づくと外が明るくなっていた。時間は朝5時だった。


『やっばい!!!ちょっとでも寝なきゃ』


 昼の12時にアラームをかけて眠った。

 12時に起きていつもよりメイクに気合いを入れて、快斗のメンバーカラーのピンクを少し取り入れた服を着て、髪もいつもより手入れして家を出た。

 美咲と待ち合わせしているライブ会場まで歩いて行ってるとセイレンのライブに参戦するのであろう人たちも多かった。

 推しのうちわを持っていたり、ペンライトを持っていたり、全身推しのメンバーカラーの服を着てる子たちがたくさんいた。


 美咲「おーい!ここだよー!」

 秋華「あっ!ごめーん!待った?」

 美咲「ううん、今来たところ!てかみんなすごいねー、めっちゃ気合い入ってる!逆になんかこんなうちらで申し訳ない気がしてきた〜」

 秋華「確かに〜。グッズって売ってるのかな?買っとく?」

 美咲「うん!そうだね〜!秋華はどの子がいいな〜とかあるの?」

 秋華「え!?私?う〜ん・・・強いて言えば・・・快斗かな・・・」

 少し恥ずかしくて声が小さくなった。

 美咲「あぁ!快斗ね!すごい元気いっぱいの子だよね!私はリーダーのこうかな!」


 グッズ売り場でうちわ、ペンライト、タオルを買って入場し、自分たちの席を確認した。

 するとステージから2番目の神席だった。


 美咲「こ・・・これは神席じゃん!行けなくなった妹が悔やまれる・・・」

 秋華「あはは、そうだね。こんなに近いとは・・・」


 こんなに近いと目も合いそうだし、快斗も気づいてくれるかもしれない。


 開演時間になり、会場が暗くなった。

 順番に出てくるセイレンのメンバーに度々黄色い声援がすごかった。


 最後に出てきたのは快斗だった。

 快斗は上空からワイヤーに吊るされて下に降りてきた。

 私は釘付けになった。二人で会ってたときの快斗と全く違って眩しいくらいの笑顔でキラキラ輝いていた。


 ステージで何曲も歌っているうちに快斗と何度も目が合った。

 秋華に気づいた快斗は「え!先生じゃん!」って口パクで言ってるのがわかった。

 私は嬉しくて何度も手を振った。


 あっという間にコンサートが終わってスタッフの指示に従って順番に観客は退場していった。

 秋華と美咲は最後のほうだった。

 やっと退場できるっていう時に一人の男性が秋華のところに来た。


 快斗のマネジャーの高山さんだった。


 高山「神谷先生!来てくださっていたんですね、さっき快斗さんから聞いてびっくりしました」

 秋華「あ、こんにちは。友達が誘ってくれたので」

 高山「そうでしたか」

 美咲「え!?誰??」

 秋華「セレインの快斗さんのマネジャーで高山さん」

 美咲・高山「どうも」

 美咲「えっ、どうゆうこと?なんで知り合いなの??」

 秋華「ちょっとね、偶然、知り合う機会があって」

 高山「快斗さんから楽屋に神谷先生を案内するように言われまして。お時間大丈夫ですか?よければお友達も一緒に」

 秋華「あっ、はい!ありがとうございます」

 美咲「えっ、えっ、待って!待って!楽屋に行けるの!?やばくない!?」

 秋華「しーっ!!他の人にはバレないようにしなきゃ」

 美咲「そかそか、ごめんごめん。」


 退場していく観客とは別ルートで楽屋のほうへ向かう三人。


 高山「ちょっとここで待っててくださいね」


 楽屋の入り口の廊下で少し待たされることになった。

 秋華は快斗への気持ちは恋だと気づいてから初めて会う。

 気持ちをもう抑えるなんて無理だけど、相手は国民的アイドルグループ。しかも恋愛禁止。そして何よりつい最近、モデルとの恋愛発覚したばかり。切なさと会える嬉しさで気持ちがごちゃごちゃしていてどんな顔して会えばいいのかわからない。

 楽屋からマネジャーの高山が出てきた。


 高山「すみません、セイレンの先輩や芸能関係の方達への挨拶があるのでもう少しここでお待ちいただくことになるかもしれません。いいですか?快斗さんは待っててほしいと言ってますが」

 秋華「あっ、そうなんですね。美咲、時間大丈夫?」

 美咲「あぁ〜・・・私この後、職場の上司と約束があるんだよね・・・もうそろそろ出なきゃ待ち合わせ時間に間に合いそうにないや」

 秋華「あ、そうなんだ・・・」

 美咲「洸に会えないのはめちゃくちゃ悔しいけど・・・またいつか機会があると信じて私は先に帰るよお」

 秋華「うん、またきっといつか会えるよ!じゃぁ私はもう少しだけ待っとくね」

 美咲「うん!じゃぁね!また連絡する!」

 秋華「はーい、気を付けてね」

 高山「じゃぁ、本当すみませんが、ここでもう少しお待ちください」


 そう言って高山は楽屋に戻って行った。


 秋華は楽屋前の廊下に出されていたパイプ椅子に座った。


『快斗に会う気持ちの準備もできてなかったし、待ち時間あってよかった・・・』


 そう思いながら秋華は座ったまま眠ってしまった。


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