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第二話

 診察室に入り、椅子に座った秋華と快斗。


 秋華「昨日は眠れましたか?」

 快斗「あ、はい、もらった薬を飲んだらいつもより寝れました」

 秋華「そうですか、それはよかった。今日はどうされたんですか?」

 快斗「昨日診察で嫌な態度とってしまってすみません。謝りたくて。あと、やっぱり先生にトラウマになった話を聞いてもらいたくって。聞いてもらえますか?」


 昨日頑なに話そうしなかったトラウマの話を急に話そうと思った理由はよくわからないがとりあえず話を聞くことにした。


 秋華「はい、お話聞きますよ」

 快斗「今、自分が主演の映画撮影をしてて、彼女役の子が両親から暴力を振るわれるシーンがあって。実は自分、小さい頃に父親から暴力振るわれていたんです。すぐに母親と離婚したのでそれっきりなんですけど、その時振るわれた暴力がトラウマになってしまって。それで最近寝る前にそれが蘇って寝れなくなってたんです」

 秋華「そうだったんですね、お話してくれてありがとうございます。抗不安薬も処方しておきましょうか」

 快斗「いえ、多分映画の撮影が終われば徐々にトラウマもまた消えていくかもしれないので、今は昨日もらった睡眠薬だけで様子見ようと思います」

 秋華「そうですか、ではまた何かあればおっしゃってくださいね」


 診察を終了しようとすると


 快斗「あの!」

 秋華「はい?」

 快斗「・・・え・・・あの・・・もう診察終わりですか?」

 秋華「あ、他にもなにかありました?お話聞きますよ」

 快斗「あ、いや、今不安なこととか、辛いことって他にないんですけど、まだ先生と話したいなって思って・・・ダメですか?」

 秋華「あぁ〜・・・うん、いいですよ、今日は桜庭さんで診察終わりだし、そもそも時間外なので、お話聞きますよ。あ、けどマネジャーの高山さんは大丈夫ですか?お待ちになられてるんですよね」

 快斗「あ、高山なら大丈夫です。なんなら先に帰ってもらっときます」


 そう言って、快斗は高山に電話で

「あ、高山さん?まだ診察に時間かかりそうだから先に帰ってていいよ。俺はタクシーで帰るから。うん、ありがとね、お疲れさまでした」

 そう言って電話を切った。


 本当は診察とは関係ないし、時間も遅いからよくないんだろうなぁ・・・


 でも・・・


 でも〜!!このイケメン顔をもう少し眺めていたい・・・///

 だって昨日は帽子を深く被ってたからちゃんと顔見れなかったし、

 雑誌で見るより実物の方が肌も綺麗でかっこいいんだもん・・・///

 しかもトラウマ消えたら診察に来なくなるってことだよね・・・

 そしたらもうこのイケメン顔をこんな近くに見ることなんてなくなるから・・・

 院長先生ごめんなさい!!!


 秋華「何か話したいことありますか?」

 快斗「うーん・・・あ!じゃぁ最近飼い始めた猫の話してもいいですか?」

 秋華「猫ですか?可愛いですよね、ペットって精神的にも癒しを与えてくれるから結構、重要な役割果たしてくれるんですよ」

 快斗「ですよね?まだ子猫なんですけど、めちゃくちゃ可愛くって!この子のために早く仕事終わらせて帰ろう!ってなるんです」

 秋華「それはよかった!猫ちゃんの名前はなんてつけたんですか?」

 快斗「ルルっていうんです、あ、写真見てくださいよ!」


 そう言って可愛い子猫の写真を私に見せてきた。

 目がクリクリしてて、すっごく可愛い猫だなぁ。って思った瞬間。

 写真の上にLINEの通知が来て、つい目がいった。そこには


 あんな 「もう仕事終わった?夜食、調達したらおうちに行くね〜」


 だった。


 LINEの通知に気づいた快斗は

「あ!すみません」とスマホを自分の方に戻した。

 あんなからのLINEを見ているのか、少しニヤッとした。


 なんだかすごく胸が苦しくなった。


『私は医師で相手は患者さん。

 その先なんて絶対ないのに、女の子からのLINEに傷ついてしまった。

 私は何かを期待してしまっていたのだろうか。

 しかも快斗はアイドル。そりゃモテるだろうし、芸能界には可愛い子だらけだし

 彼女の一人や二人くらいいるよね。わかっているけど、辛かった。

 これ以上、この人を見てるとダメだ。久々な恋って感じだ』


 秋華「あ、もうこんな時間だし、ここも閉めなきゃいけないからそろそろいいですか?」

 快斗「え?でもまだ5分くらいしか・・・」

 秋華「ごめんなさい、明日の診察の準備しないといけないの思い出しちゃって。また何か症状があれば診察にきてください」

 快斗「あ、そう・・・ですか。わかりました」

 秋華「あ、タクシー呼びますね。では、気をつけて帰ってくださいね、お大事に」


 目も合わせずとても無愛想に不自然に切り上げてしまった。


 診察室から出ていく快斗を見てさらに胸が苦しくなった。


『私だってまだ二人で話をしていたい。でもこれ以上は後戻りできなくなってしまいそう。あなたのこと好きになっても傷つくだけだから。恋になる前に終わらせなきゃ』


 快斗がタクシーに乗って帰っていくのを医師室から見届けた後、病院の戸締りをして帰ることにした。


 帰りも快斗にたいしてのこの気持ちが恋にならないように、否定的な言葉で自分の心に言い聞かせていた。


『あ、買い物して帰らなきゃ。明日の朝ごはんの材料と少しだけ夜食買おう。今日はもう家で飲んじゃう』


 まだ開いているスーパーに入った。


 秋華「あ・・・夜食・・・

 今頃二人で仲良く夜食食べてるのかなぁ・・・いいなぁ・・・」


 なんてまたあのLINEのことを思い出してショックを受けた。


 朝ごはんの材料と夜食にお酒のおつまみとして唐揚げを買った。


 スーパーから出ると大雨が降っていた。


 秋華「え?嘘でしょ。今日雨予報だったっけ・・・最悪だ、折りたたみ傘もないや。ここのスーパーに傘なんて売ってないし。走って帰らなきゃ」


 まだ寒い3月の夜の雨はかなり冷たくてすぐに体が冷えた。


 秋華「うわぁ、寒いよー」


 そう言いながら走っていたら


 雨と夜道で足元が良く見えてなくて転んでしまった。

 それも結構ド派手に。

 スーパーで買ったものもエコバッグから全て飛んでいった。


 秋華「いったぁ・・・最悪・・・」


「大丈夫ですか?」そう言いながら手を差し伸べてくれた人がいた。


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