<第十一章>別れと同伴
職員用通路をばく進し、常世国東側の倉庫街を抜けた一行は、パーティー会場と酷似した場所に出ていた。
右側の壁中央にある扉を指し、唐沢が振り返る。
「あそこが詰め所の入口だ」
「バリケードがあるけど工夫すれば通れそうだな。俺が先行する。イミュニティーの隊員は間に生存者を挟んで様子を見ながら続いてくれ。さと――……截さんは――」
危うく悟といいかけ、友はどもった。
その不自然さを隠すように、すぐに截が続きを言う。
「僕は扉を潜る必要がありませんからここで皆さんを見守ってますよ。何かあればすぐにお知らせします」
「……よし、じゃあ行くぞ。事前報告によれば、この辺りにも鬼の姿がちらほら見られたらしい。気をつけるに越した事はない」
截のことを考えてか、どこか不機嫌そうに友はそう言った。
あとに続くように、亜紀、麻生、細長い隊員に抱えられた長島、そして僅かに間を開けて千秋、イミュニティーの少女が歩き出した。
彼らの姿がバリケードの中へと消え、唐沢もすぐに歩き出そうとする。だがそこで、截は鬼の気配を感じた。唐沢の腕を引き、背後に縮こまっていた夏を巻き込み廊下の壁際へとさがる。
すると向かいの瓦礫が崩れる音と共に、一体の赤い塊が広場へ飛び出した。
その鬼の出現音は勿論友たちの耳にも届いた。
「ここまで来て……!」
閉じられた扉の前で千秋が息を飲んだ。凛々(りり)しく美しい顔が悔しさに歪んでいる。
「まだ間に合う。すぐに下へ避難するぞ」
友は両手を円形の取っ手に当て勢い良く回した。車のハンドルのごとく二、三回転させると、空気の漏れる音が聞こえ、二つの領域を隔離していた壁が大きく割れた。
「向こうの三人はどうしますか?」
短髪の上にある白い髪留めが特徴的な前衛の少女、真田雫が背後を振り返る。先ほど二人の同僚を殺されたばかりなのだ。いくら悟が黒服だろうと彼の身が心配なのだろう。しかも彼女は自分たちの口論を聞いている。こちらのことを気遣っての言葉なのかもしれない。
「あっちは心配するだけ損だ。気にする必要はない。今はここに居る生存者を逃がすことだけを考えろ。鬼が下まで着いてくれば大問題になるぞ」
「でも……」
「いいからこっちに集中しろ。あいつは単独で大型感染体を殺せる人間だ。たかが鬼一匹くらい、どうでもない。――早く」
前を向くと同僚の古矢が亜紀たちを奥へと誘導していた。自分と真田の会話を一切気にしていない。相変わらず物凄くマイペースな男だと友は思った。
全員が扉を潜り抜けると、友は悟たちを待つために広場へ顔を向けた。しかし、時を合わせるかのようにさらに二体の鬼が右側の廊下から現われる。
――これは流石に不味いな。
「悟――!」
友が声を張り上げると、悟はすぐに応じた。
「ここからじゃ間に合わない。扉を封鎖しろ。俺たちは別の道を探す」
唐沢が居れば、確かに安全な場所を確保することは可能だろう。詰め所へ来ることは出来ずとも地下エリアへなら降りる方法は無数にある。夏の存在が気になったものの、友は彼らを信じることにした。
「分かった。俺たちは高速エレベータからの脱出を考えている。今地上へ出る道はそれだけだ」
そう言って扉を閉めにかかる。声に引かれたのか一体の鬼がこちらへ向って着たからだ。閉まる直前に前を向くと、既に彼らの姿は消えていた。
***
「もう、限界だ。いつまでこんな所に閉じこもっていればいい? いずれここも奴らに侵入されるぞ」
裏声交じりの野太い声が部屋いっぱいに響いた。どうやら待機させられていた隊員の一人が叫んだらしい。
「落ち着いて下さい。先ほど救助部隊が到着したという報告を受けました。順調に進めば間もなくここへ到達するはずです」
六角の秘書である女性が、男とは裏腹に実に冷静な態度でそう言った。
「救助部隊? 何を言ってるんだ。あの鬼相手にたかが数人の隊員が敵うわけないだろ! 実際既に二人も殺されたって話じゃないか。奴らは異常過ぎる。人間が敵う相手じゃねえよ。さっさと逃げよう。今ブラックドメインに入ればまだ鬼は居ないはずだ」
訓練を受けた兵士であるはずなのに、男はまるで素人のように喚き散らしている。他の隊員たちも声さえ出さないものの、殆ど彼と同じように疲労しきった様子だった。
ソファーに腰を下ろしていた六角は誰にも見られないよう顔を下げ、静かに冷笑した。
イミュニティーの隊員と銘打とうと、六角行成のお膝元である常世国の直下隊員と自慢しようと、所詮彼らは実践経験の乏しいエリート組みだ。知識や技術さえあってもそれを生かすサンプルデータが殆ど無い。いざ災害に遭うとこの程度の人間でしかないのだと実感する。
――まあ、そういう風に僕が誘導したのだがな。
ある意味望み通りの現状を見て、顔を醜く曲げる。自分の目的を達成するには、周りに優秀な人間がいることは障害にしかならない。だから敢てこのように身分や建前だけが高い「でくの坊」たちを配属しているのだから。
「六角代表。ブラックドメインのシステムは完全に常世国と分離しています。普段人が出入することも無いですし、ここに居るよりはずっと安全なはずだ。行きましょう」
顔を青くして、先ほど叫んだその隊員が立ち上がった。
彼は下にさえ行けば助かると思い込んでいるようだったが、ブッラックドメインは「観察」という目的上、原生の生物を自由に解き放っているサファリパークのようなものだ。万が一敷居が破壊されてしまえば、この面子では確実に全滅するはめになる。
さて、どう丸め込もうかと六角が思考を巡らせていると、タイミングよく右側の両面扉が開いた。
茶色の今風の髪型に細い目をした精悍な顔つきの男が、後ろに一般人らしき者たちを引き連れて立っている。
すぐに、それが救助隊の人間だと理解できた。
「だ、誰だ!? お前らは」
立ち上がっていた臆病な隊員が怒鳴り声を上げる。仲間の姿すら判別出来ないのかと呆れつつ、六角はその現われた男に声をかけた。
「――救助隊の者か? どうやら無事に辿り着けたようだな」
「イミュニティー関東地区第十一実戦部隊所属隊員、国鳥友と申します。後ろの二人は同じく、実戦部隊の真田雫、古矢照明です。ご無事なお姿を拝見でき、安心しました」
何故か敬語に慣れていないようで、彼はぎこちなく答えた。
「ああ、良く来てくれた。どうもここに居る隊員たちは箱入り息子、箱入り娘のようでね。戦力に心許なかったんだ。これでやっと動くことが出来る。こちらの状況は全て把握しているか?」
「はい。事前に秘書の方から情報提供は受けております。脱出可能ルートは地下、ファーストブラックドメインにある高速エレベータ。脱出手段は屋上にあるヘリコプターでよろしいでしょうか」
「ああ、そうだ。ちゃんと理解しているようだな。ただヘリについてだけはすぐにここへ送れるものを別に用意して欲しい。上に置いているものがディエス・イレに弄られているという可能性もある」
というより、ほぼ確実にそうなっているだろう。
「勿論我々もその線は予想しております。ただいまアエロスパシアルAS332L1を付近の野営地に配備させていますので、連絡を送ればすぐに駆けつけてくれるかと」
「ほう、それは助かる。君たちになら安心してこの身を任せられそうだ。僕としてはすぐに移動を開始したいところだが、どうだね。少し休憩は必要か? 装備を整えたいのなら用意させるが」
「そうですね……ここへ来るまでに多少道具を使用しましたので、出来れば補充させて貰えると嬉しいです」
友は遠慮気に答えた。
「分かった。僕も命を預けるんだ。備えは多いに越した事はない。準備が出来たら教えてくれ。すぐにここを立とう」
「了解しました」
奥歯を噛み締めるような音が聞こえたが、気のせいだろう。この男が自分に敵意を持つ理由は何も想像出来ない。
満足げに頷くと、六角は自分の待機室へと足を向けた。
全ては順調に進んでいる。このディエス・イレの暴走は予想外だったが、結果的にはプラスに働いた。
あとは、キツネが来ればそれでここでの仕事は終了だ。
誰にも見られないように口の両端を横へ広げると、六角行成は己の室内へ入り、携帯電話を取り出した。
「そろそろ、彼らにも指示を出す時間か。予定通り動いてくれればいいんだが」
その表情は楽しげで、まるで誕生日を迎える直前の子供のようだった。
***
鬼の登場により詰め所に入ることを諦めた截たちは、取り合えず安全な場所を探し逃走を続けていた。先ほどの体育館のような場所から離れ、現在は洋服店などが並ぶ廊下の前を移動している。
「どうだ? 着いて来ている個体は居るか」
「大丈夫です。どうやら詰め所の方に注意を引かれたみたいですね。僕の感覚が反応する範囲には居ません」
緊張の糸を緩めるように截は大きく息を吐き出した。
「取り合えず一息つける場所を探そう。こう走り回っていたらろくに頭を働かせることも出来ない」
「そうですね。下へ降りる策を練る必要もありますし、この子も体力的に辛そうだ。どこかに身を隠しましょう」
斜め後ろを追従している夏は、全身からびっしょりと汗を流し、息も荒くなっていた。これ以上走り続ければまともに動くことが出来なくなりそうだ。
彼女が自分たちの側へ残ってしまったことは不幸としかいいようがなかったが、既に終わってしまったことにはどうしようもない。全員が無事に地下へ辿り着くために、截は唐沢の提案に賛同した。
「まだ……走るの?」
夏は疲れきった顔でこちらを上目使いに見上げる。
「頑張って。今隠れられるところを探している。それまでの辛抱だ」
そう言うと、彼女は小さく頷いた。もう声を出すのも辛いらしい。
なるべく鬼に荒らされた形跡が無い店を選ぶと、三人はその中へ入り扉を閉めた。
唐沢がどかっと地面に座り込む。
「ようやく休めるな」
夏を座らせている間に彼はタバコを取り出し、火をつけた。
「あまり吸わないで下さいよ。臭いで鬼に気づかれ易くなります」
「タバコくらいは平気だ。野生の動物とは違うからな。元々人間だったものは、人間の生活臭には疎い。付近に潜んでいる時ならともかく、こうして休憩している間くらいは何の問題もないさ」
一服したいための言い訳にも聞こえたが、彼はイミュニティーの研究員であり、戦闘経験もある人間だ。おそらく、それは真実なのだろう。
血の臭いの強いレインコートを脱ぎ捨てると、截は神妙な顔を作った。灰色のシャツが光の下に晒される。
「それで、ここから地下へ降りれるルートは他にあるんですか?」
「そうだな。現在地から考えるといくつか道はある。――この常世国はG.Cを隠すために作られた施設だ。表向きはショッピングモールでも、下には無数の実験場やそれを機能させるための水道、発電施設がある。詰め所に入れなくとも、そこを利用すれば研究所へ降りることは不可能じゃない」
「G.C?」
何かの略語かと思い、截は彼の言葉を繰り返した。
「GENESIS CRADLE。直訳すると『創世のゆりかご』ってところだな。イグマ細胞に関する全ての原点、一番最初のブラックドメインのことだ。他のブラックドメインとは違い、発見当時の状態をそのまま保っていることからそういう呼び名がついたらしい。もっとも、俺たち研究員の間ではそれはただの建前で、実際は同名の呼称を隠すための当て字みたいなものだと噂されていたが」
「イミュニティーのやり方なら、それも十分ありえますね」
隠蔽することに関してイミュニティーは他のどの組織よりも上を行く。わざわざブラックドメインとは異なった名称を生み出したということは、きっと裏に何かあるだろう。ここが超感覚者の研究を率先的に行っていたという事実も関係しているのかもしれない。
「さて……話を戻すが、降りるには勿論弊害もある。セキュリティーの問題もあるし、研究所の中でも鬼の感染者が出ていたそうだ。安全が確保された詰め所からのルートとは違い、必ずどこかで奴らとぶち当たることになる。この面子では一度でも見つかれば終わりだと思うんだが」
「大丈夫ですよ。今なら行動を共にしている人数も少ないし、これまでとは違ってまとな戦闘行動を行えるはずです。夏さんを下がらせて僕と唐沢さんで戦法を行えば、ある程度は戦える」
見積もりでは、いくら知能が高かろうとあの鬼単体の戦闘能力は悪魔の第二形態程度のものでしかない。冷静ささえ失わなければ、間違ってもやられることは無いはずだ。
「そうか。お前が言うと心強いな」
タバコの灰を奇麗にコーティングされた床に落とし、唐沢は短く笑った。
「あまり時間を空ければ屋上にあるヘリが飛んでいってしまう。詰め所の奴らと合流することを考えれば、旧地下水路を経由することがベストだな。あそこは警備員の巡回も少ないから感染者もいないはずだ。セキュリティーも俺が居ればパス出来る」
「じゃあ、脱出ルートはそこでいいですね。あなたが居て助かった。超感覚者だろうが、黒服だろうが、セキュリティーだけはどうにもなりませんから」
截が肩を落として見せると、唐沢は表情を改めた。
「ただ合流してからは俺はもう協力出来ないぞ。お前が正規の仕事で来ていないのなら、六角にとっては疑いを持つ対象でしかない。当然、ディエス・イレのスパイとして殺される可能性もある」
「分かってます。だけど、ディエス・イレは最近黒服の手によって壊滅させられたばかりだ。そこを利用して上手く取り入れば……」
「無駄だ」
唐沢は断言した。迷いも疑いもないという、はっきりした口調で。
「表向きには明らかにされていないが、六角と黒服には芯の方でかなり深いつながりがある。お前の言っていることが真実か嘘かは、あの男なら簡単に見破れるに違いない。そもそも、お前が『截』なんてあからさまな偽名を名乗っている以上、それは当然分かってるだろ?」
「……どういうことです?」
截は僅かに眉を寄せた。黒服の名前が偽名であることは、別に秘密事項でも何でもないが、何故『截』という名前が障害になるのか。
黙っていると、唐沢は遠慮がちに聞いた。
「まさか……知らないでその名前を? ――いや、イミュニティーの上部に関係する人間でないんだから当然か。しかし、偶然にしては出来すぎているんだが……」
「何を言っているんですか?」
「その名前は……」
説明を仕掛け、唐沢は口を閉じた。
「いや、これは俺の口からはいえないな。一応まだイミュニティーの人間なんだ。お前が本当にそれを知らないのなら、教えるべきじゃないだろう」
自分から話を始めたにもかかわらず、唐沢はそう言って話を切った。何だかすっきりしない截は不思議に思いながらも彼の顔を見つめる。
この巳名截という名前はキツネから貰ったものだ。もし本当に何かしらの意味があるというのなら、一体あの男はどんな目的で、どんな意図を持って、自分にこの名前を与えたというのだろう。「巳」は蛇、「截」は切断を意味する。名前そのものの意味を強引に解釈すると、「蛇の名を断ち切る」ということだ。蛇は聖書では諸悪の根源にして、アダムとイブを堕落させた存在。そしてイミュニティーに関係する截という名前。つまり、巳名截とは、「截という名前を断ち切れ」と命令されているようにも思える。
しばらく思考を巡らせたが、答えは見つからなかった。
――……まあ、いくら考えても分かるわけはないか。あの馬鹿野郎の考えていることなんて、俺に悟れるわけがない。……聞いても教えてくれそうにないしな。今度陽介さんに尋ねてみよう。
今成さなければならないことは、この常世国を脱出すること。截は何を考えているのか全く予想出来ない自分の上司の顔を思い浮かべ、そっと溜息を吐いた。
話し込んでいる二人を他所に、夏はぐったりとしたまま今後のことについて考えていた。
イミュニティーとかいう政府の特殊部隊が集まっている詰め所に降りられなくなったことは、素直に残念だった。だが、今になって思うとそれで正解だったのかもしれない。
あの紺色の服を着た連中は口先や態度こそ立派だが、やっていることと言えば、ただ自分たちの身を守るために集団で隠れているだけだ。生存者を助けようともせず、戦いからも逃げ、彼らが存在している意味はあるのだろうか。
夏は截の方を見た。
理由は知らないが、あの男は生存者の脱出に協力してくれるらしい。最初は彼も政府の人間なのかと思ったが、それも違うようだ。これまでのことから想像すると、あの亜紀とかいう女性と何らかの関わりがあるのかもしれない。自分たちの身を守るといいつつ、截は彼女ばかり優先的に救おうとしていた。多分、自分や麻生たちがこれまで無事だったのは、そのおこぼれを貰っていただけだろう。
戦闘能力でいえば、彼の力はずば抜けている。助かる可能性はイミュニティーなどよりも、彼と行動を共にする方が何倍も高い。
亜紀が居ない今なら、上手く取り入れば自分は彼の最優先保護対象へなれる。フェミニストと言わないまでも、あの男はどこか女性に甘い。この面子ではきっと自分のことを守ろうとしてくれるはずだ。
この異常極まる世界の中で、夏の中では截と居る事が己の保身に繋がるという方程式が成立していた。願望とも、信頼とも、恐怖心からの本能的な回避とも取れるその気持ちは、いつのまにか夏の中で狂ったように膨らんでいた。
あの男と居れば助かる。
あの男の傍に居れば自分は安全だと。
例えどんな手を使っても、夏は彼の傍に居ようと心を決めていた。
それは恋愛感情でも、尊敬感情でもなく、もはや所有欲に近いもの、まるで護身用の銃やナイフを所持するような、そんな気持ちに類する感情だった。
話がついたのか、截と唐沢がこちらを向く。
夏は出来るだけか弱そうな女子高生を演じ、潤んだ目でそちらを見上げた。
「夏さん。疲れているところ悪いけど、そろそろ出発しなきゃならない。動ける?」
心配するように截が聞く。
「はい、何とか……下に行く方法は見つかったんですか?」
普段行動を共にしている友人が見れば、あまりの違いに笑い出しそうなほど大人しい態度でそう聞いた。
「ああ、だけど鬼の中を通る必要がある。多少怖い思いをさせるかもしれない」
「これまでだって、十分怖い思いをしてきました。今更そんなもの何でもないですよ。大丈夫です。それに、いざとなったら截さんが守ってくれるんでしょ?」
離婚や浮気をもっとも確実に防ぐ方法は相手に絶大の信頼を与えることだ。「浮気しないでよ?」などと頻繁に聞くことは逆に浮気を誘発させるのだが、絶大な信頼を与える事で、相手に背徳感を与えそれを許さない。夏はそれと同じような効果を導き出すために、心のそこから截を信頼しているのだという意を示した。
「……出来る限りはね」
微笑んだ夏の顔を見て、截は困ったようにそう答えた。