オフクロさんの適当即興昔ばなしシリーズ【やる気のない洗濯ばさみ】
昔々あるところに、やる気のない洗濯ばさみがおったそうな。
「ぼくは一生、洗濯物をはさむだけさ」
やる気のない洗濯ばさみは青空を見てはいつもため息。
風に吹かれる濡れた洗濯物が乾くまで、いつもはさんでおりました。
「いいじゃないか。毎日平和で」
やる気のない洗濯ばさみがはさんでいる濡れたタオルが話しかけてきました。
「おれは毎日毎日ぐちゃぐちゃさ。今だってあんたにはさまれて、痛い」
「風に飛ばされるよりいいだろう?」
「そりゃあそうさ。地面に落ちればまたゴシゴシゴシゴシ。洗われなきゃいかん」
「ゴシゴシって、痛いの?」
「そりゃあそうさ。綺麗になるまでだ。石鹸もいつの間にか小さくなって、いなくなる。そうして、また新しいやつが小さくなりに来るんだ。よろしくってな」
ふぅんとやる気のない洗濯ばさみは濡れたタオルのお話を聞いていました。
痛いも石鹸もやる気のない洗濯ばさみは知らないことでした。
「濡れるのはわかるけどなあ」
やる気のない洗濯ばさみは急に雨が降ってきて、ずぶ濡れになることはありました。
「綺麗なんだよなあ」
やる気のない洗濯ばさみは虹を思い出していました。
虹は濡れた日にしか見られない、やる気のない洗濯ばさみにとって特別なものでした。
「いつか虹をはさんでみたいなあ」
やる気のない洗濯ばさみは青空を見ました。
今日は雨が降りそうにありません。
「いつか虹をはさんでやりたいなあ」
青空の日は、やる気のない洗濯ばさみなのでありました。
雨の日だけ、やる気のない洗濯ばさみはやる気まんまんの笑顔の洗濯ばさみになれるのです。
おしまい。