あなたの幸せは私の幸せ。あなたの幸せは誰かの不幸せ。
自分が少し考えている作品の外伝みたいなものです。本編も書いています。初めてがこれです。
不思議な都市に行ったことがある。私が知っていた情報とは真逆の都市だった。
〜〜〜
「…と、言うわけなので今度そこに観察に行ってもらえませんか。」
上司が言う。これは行けと言う命令なのだ。
「はい。」
「同行者をつけます。あなたはその方の見張りも兼ねていますので。その他はこの資料を見るように。分からない所があれば私かフラットに聞いて下さい。」
「同行者とは?」
「実験体ε(イプシロン)です。彼についてはあなたが責任者でもありますので…。」
なんの代わりもない、たったこれだけの会話。イプシロンがくるとは思っていなかったが、わたしが彼を知るいい機会と捉えよう。
私の行く都市はa-021にある小さな都市のようだ。私は資料に目を通していた。
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「聞いていた話と違う。イプシロンどういうことか教えて下さい。」
「人の世は早く代わるって言ってたよね。」
つまるところ、私はまだまだ人について観察する必要性があるらしい。
***
イプシロンとはぐれてた。そして数週間たった。探しても見つからない。いつか戻ってくるだろうと思ったから、この都市の観察を始めた。
ーーー
調査報告書①
人…この都市の人々もまた見た目、言語、血のつながりによって仲間意識を持っている。ただし、他の地域に比べ、見た目による仲間意識が強いようだ。
前回の調査報告書との相違点…
1,濃い人の人工が減り、薄い人の人工が増えている。中くらいの人はほとんど見なくなっている。
2,支配層が薄い人から濃い人に代わっている。
3,理由は不明だが、犯罪が多くなっている。
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最初の調査報告書が出来た。前任者の書き方に倣ったがこんな書き方で良いのか?今回の調査報告書はおおまかな状況だ。次は、細かい所を報告できるようにしよう。犯罪が増えているけど、イプシロンが変なことしてない…と思うしかないか。
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ここに来て1年が立ったけど、何かがおかしいことには気付く。前任者の調査報告書とは違う点がありすぎる。家庭ひとつひとつの生活習慣まで書かれた報告書は現実とすべてが逆となって書かれたもののようにさえ感じる。
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調査報告書②
人…政治における女と男の立場が変化している。また、女と男の人口比が逆になっている。
前任者の調査報告書との相違点…
1,政治における女の立場上昇と男の立場低下。
また、家庭内での立場や食べ物の傾向が変わってる可能性がある。次回の調査報告書に詳細を記載する。
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書き終えて、少し、外に出て都市を見て回ることにした。イプシロンは今どこで何をやっているんだろう。少し探しておかなければ。
やはり、前任者の調査報告書と違う点が目立つ。イプシロンの“力”というものが関係しているのだろうか。その点を考えると早く見つける必要がある。
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「何やってるの?」
イプシロンを見つけた。朗報だ。
「これをみてわからない⁉」
知らぬ。可能性として…
「イプシロンの趣味か。」
「しごt…」
「何かわかったことある?この都市調査報告書と全然違うんだけど。」
「この仕事が終わったら見せて。」
「ここで待っているので早くして下さい。」
待つ間、イプシロンの観察でもすることにした。
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メモ
・イプシロンの“力”は「逆転」の可能性が高い。
・イプシロンはここでは過ごしやすそう。
・連れてきた時と比べて、気楽に話してくれている。
・耳が触りやすくて気持ちよさそう
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「終わりました。」
「この資料が前任者の調査報告書。読んで何か分かったら教えて。」
「その前にそのメモを見せて。」
「宿はあっちに取ってある。」
このメモはイプシロンの耳の攻略法を模索するためのものだ。見せるものか。
***
3年ほどたった。もうそろそろ戻ってこいと手紙が来た。最終調査報告書を書いたら戻ると報告した。
「イプシロンは何か分かった?」
「前任者の調査報告書は70年ほど前のものということがわかった。」
「生活そこまで変わらないだろ。」
「………40年ほど前に革命があって―――」
ーーー
最終調査報告書
わたしたちはa-021歴965年から990年までの4001日間都市を調査した。これはその最終報告書である。
都市ではわたしたちが来る前に革命が起きていた。上に立つものを全市民から選ぶというものだ。その結果として濃い人が上に来やすくなった。また、同じような理由で女の社会的地位が向上ようだ。
次に、わたしたちの滞在期間中に人工が減少した。原因は不明。
最後に、最近にも革命の前兆はあるようで都市の調査は継続すべきである。
ーーー
書き終えて読み返してみた。調査が甘かったと反省はしている。
「明日には帰る。」
「分かった。」
***
「そういえば、大丈夫だった?」
「なにが?」
「君のような見た目の人は結構迫害されてたらしいから…」
「それは大丈夫。」
「そっか…よかった。」
〜〜〜
結局、わたしのほうが心配される側だった。こうして、わたしたちは都市を去った。
これがわたしのイプシロンとの思い出。でもさ、なんで今、思い出したのかなぁ。
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僕は自らのために戦った。この結末も間違っていない。
……分かってる。………本当は、そう…思いたいだけだ。
全ては世界の、神の、運命のままに