プロローグ:少女の過去
この物語を語る前にまず、ある”人間”のことを軽く話そう。その人間は、元々ある日『風洞院家』の家の近くに倒れていた。身元のわかるものはなく、性別も検査場男性の要素が高いことから〈男子〉と定めたが、その子供の現状でははっきりとした性別を認識できなかった。
そのため、幼少期から着せる衣はどの性別でも似合うようなもの、髪の長さは少し長めというようにして育てた。
この家系は、名門のため良く言えば『規律正しく』育つようにし、悪く言えば『堅苦しく』育てた。
しかし彼の義父たちはとても良い人らだったため、性格はおおらかなもので元気な少年〈?〉と育つ。
しかし、ある年。それはちょうど小学校に入学してから三年ほどっ立った頃。これが彼にとって最初で最初で最後と”思われた”人生の分け目だった。
入学したばかりの頃は皆同じというような雰囲気で性別が曖昧な彼でも誰も変には思わなかった。
しかし、それが三年生ほどとなると、皆が人の性別を少しずつ気にするようになり、体育の授業などでは、男子と女子とで別れて着替えるため、そのどちらかはっきりとしていない彼は、そこからみんなに避けられ、変に思え割れ始めた。ある時、同じクラスの少年Aが言う。
「お前みたいに、どっちかわかんねぇし、妙に女子みたいに色気出してくるし、キモいんだよ。」
それがきっかけで、彼は自分の性別がどうでも良くなり、人に深く関わることを避けた。
中学に上がり、あまり皆その事に触れなくなるが、彼の心の傷は言えなかった。なぜなら、それは表面上だけで、クラスメイトたちは裏でコソコソと話しているからだ。
『女みたいだ。』『性別がわからないのがキモい。』『ぶっリコみたいだ。』と。
そして、彼に”思春期”が訪れた。その成長具合からおそらく女性であった。しかし、そんなこと彼の義父らには言えず、卒業まで、彼はそれを身内に隠し続けた。
三年の春、とうとう彼は高校に行くということで、卒業式の当日に、上京を決めた。
この上京した春休みに、二度目の彼の人生の分け目が来るのだが、それは別の話。また、いつか彼の昔話も深く掘り下げよう。