第2話:夢での邂逅
第2話となります。ここから話が進み出します。
『…う…優…』
「…んぅ…なに…?」
目を覚ますとそこは、何もない真っ白な空間
いったい何が起こった?この空間はいったいなんだ?
混乱する思考を必死に押さえつけ、優は口を開いた
「ここはどこなんだ⁈それに、お前は誰だ⁈」
『落ち着きなさい、私はあなたを守護する者。決して、敵ではありません。』
「守護するもの?なんなんだいったい…俺たちはどうなった⁈」
『慌てずとも、今から貴方に全てをお話しします。今から話すことは普通の人間ならば知り得ない事です。軽率に口外しないように、そしてその上で貴方にはお願いしたい事があるのです』
「普通の人間なら知り得ないことに、お願いしたいこと……?とりあえず、話は聞きましょう。」
まだ状況は整理できていないものの、少々の落ち着きを取り戻し話を聞くことにした
『まず、貴方はこの世界の為に召喚されたのです。勝手に召喚した事に関しては非常に申し訳なく思っています。ですが、こちらとしてもあまり悠長にしていられない状況なのです。まず、この世界は貴方の世界よりも‘‘格’’の低い世界です、この世界と貴方の世界は全てのリソースを共有しているのですが世界の‘‘格’’の違い故、貴方の世界の創造神が勝手にリソースを流していたのです、そのままリソースが流出し続けるとこの世界が崩壊してしまうのです、そこでこの世界の創造神から神託を受けた巫女が大量のリソースを保持している貴方を召喚したのです。本来ならもっと安全な場所に召喚されるはずが未熟な為恐らく都市から離れた森の中に放り出されてしまったのでしょう、ここまでで何か質問は?』
「リ、リソース……?」
『そうですね、簡単に言えば全ての物体の資源となるもので、石も木も人も全てリソースがなければ存在出来ません』
「ふむ……で、俺がリソースを大量に保持しているっていうのは?」
『ええ。人が生まれながらに保有しているリソースの量は決まっているのですが、創造神がリソースを流すために偶に通常の倍のリソースを持った人間を作る場合があるのです。貴方の世界だと超一流のアスリートや文化に影響を与えるレベルの天才がそれにあたります。ですが貴方の保有しているリソースはこれらの比にならない程の量なのです、それこそたった1人で2つの世界のバランスに影響を与える程に。』
「でも、俺は別にそんなに頭が言い訳でも無いし、こんな体だから運動も出来ないから実感が……」
『貴方が大量のリソースを持つ理由は幾つか考えられますが……貴方がリソースに見合わない能力だったのは貴方の世界の創造神がその影響を考えて能力に制限をかけていたのでしょう。』
「なんとも意図が読み取れない神様ですね……それで、お願いしたいことっていうのは?」
『実は、貴方が世界を越える拍子に貴方のリソースの一部が厄介な所にこぼれ落ちてしまったのです。』
「厄介な所?」
『ええ、過去この世界を滅ぼしかけた存在が封印されている場所です。リソースがこぼれ落ちたことで、そいつに復活の兆しが見えているのです。』
「世界を滅ぼしかけた……そいつが復活したらどうなるんですか?」
『もし復活すれば、なす術がありません。』
「で、俺にそいつを倒せ……と。でも、いくら俺が大量のリソースを持っていたって能力に制限がかけられてるなら無理なんじゃ?」
『そうですね、ですがこちらの世界に来たことで制限に歪みが生じています。こちらの世界でなら本来の能力と共にこの世界固有の能力を発揮できるようになっていくはずです。そして、その力で再封印、可能ならば討伐をお願いしたいのです。』
「なるほど。最後に2つ、この世界に来てるのは俺だけ?それに、俺は車椅子だし……」
『陣さんと楓さんを補助の為に貴方のリソースを削ってこちらの世界の創造神がセットで召喚しました。貴方の車椅子は神の力でより速く、より頑丈に、そして快適になっています。貴方と共に成長して様々な形態にもなりますし、貴方好みの改造も自力でも出来るでしょう。』
「至れり尽くせりだな……そういえば、貴女の事については教えてくれないんですか?」
『そうでしたね、ですが今はもう時間がありません。それはまた次の機会にでも。それと目が覚めると貴方の近くに本と鞄が置いてあるはずです。あとの事はその本に書いてあります、それではまた……』
「せっ!せめて名前だけでも……」
現実に引き戻されつつある優がそう言うと一瞬だけ、どこか懐かくも感じる優しい顔をした女性が見えた気がした……
お楽しみ頂けたでしょうか。物語の歯車が回り始めました。