第30話 これから……
ちょっと短め。
キリがいい所までと思ったら、想定より短くなってしまった……
しばらく走って、廊下の突き当たりにあった階段を下りたところで、物陰に身を隠した私達は、走ったことで荒れている呼吸を整えながら、息を潜めていた。
「西崎君、大丈夫かな……」
「力では負けてなさそうだったし、何とかなるとは思うけど」
新田さんと伊坂さんが話しているのを聞きながら、私の頭の中は混乱でいっぱいいっぱいになっていた。
私達が順に抜けてきた隠し扉から現れた“仮面の人物”。
つまり、あの人物は、私達の後ろを付いてきていたか、もしくはあの教室に潜んでいた事になる。
そして、1人ずつ隠し扉を抜けて行き、東川さんが最後の1人になったタイミングで、姿を見せて襲ってきたんだろうか?
それとも……?
さすがに、ヒントが少なすぎるか。
とりあえず、今は――
「――しばらく様子を見るとして、その後どうします?」
「それって、進むか、戻るか……って事よね?」
私の疑問に伊坂さんが質問を返してきたので、頷きで肯定を示す。
表情を見る限り、伊坂さんは一度戻った方がいいと思っていそうだけど。
たぶん、その隣にいる新田さんは――
「私は、聡美達を探しに行きたい」
――ですよねぇ。
「そう言うとは思ったけど、結構、厳しい状況よ?」
「西崎さんも東川さんも、居なくなっちゃいましたからね……」
言いながら、スマホを操作している伊坂さんを見て、一瞬、携帯で連絡が取れないか、とも思ったけど、“旧校舎亡霊”の事も考えると、連絡するのはリスクが高そうな気もするし。
「そう……だよね。 でも、やっぱり、こんな機会、もう無いかもしれないし――」
「わかってる。 ――これでよし。 2人には『こっちはこっちでやるから、そっちもうまくやって』って言っといたから」
そう言って肩を竦めた伊坂さんの様子に、バッと顔を上げた新田さんは、今にも泣き出しそうな表情で、小さく「ありがと」とこぼした。
「気にしないで。 榛奈だけ置いていけないし、それに――」
「――それに、2人を見つけたいのは私達も同じですから」
伊坂さんの言葉を引き継いで、私も新田さんに声をかける。
――いや、どちらかと言うと、自分に言い聞かせてる、と言う方が近いかもしれない。
実際、二人を見つけたいと思っているのも確かだけど。
やっぱり、怖いのだ。
幽霊なんかの、得体の知れない恐怖じゃないだけ、私的には多少マシだけど。
その分現実的な危険が迫ってくる感じが、ヤバイ。
――ただ。
正直、今にも逃げ出したい気持ちはあるけど、それ以上に2人の役に立ちたい気持ちが大きくなっていた。
警察署で話を聞いたから、と言うのもあるだろうけど、なにより、ここまで一緒に来て、沢山支えて貰ったから、と言うのが一番だと思う。
「――だから、絶対、見つけましょうね」
「……うん。ありがとう、2人とも」
新田さんの言葉を合図にしたように、私達はそっと立ち上がり、周りに注意しながら、新しい手がかりを探すため、動き出すのだった。




