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第18話 知らない天井

「――ここ、は?」


 目が覚めた時、少しボヤける視界に映ったのは、見慣れない天井だった。


 視線を動かしてみると、どうやら、どこかの部屋でベッドに寝かされていたらしい。


「私、いったい……どうしたんだっけ?」


 ボーっとする頭を無理やり起こすように、記憶を辿ってみる。


 えっと――皆で旧校舎に行って。


 3階の美術室で落とし穴に落とされて。


 図書室を調べてた時に悲鳴を聞いて。


 伊坂さんと合流して――


「あっ! そうだ、伊坂さ――痛っ!」


 伊坂さんが首を絞められて倒れた光景を思い出し、慌てて身を起こした途端、頭に痛みが走った。


「今声が……あ! 鞠片さん、意識戻ったんだ! よかったぁ……」


 頭を押さえながら蹲っていると、部屋の扉が開いて新田さんが姿を見せる。


「新田さん!? 無事だったんですね! ……あの、伊坂さんは?」

「祐子も、他の皆みんなも無事だよ。 目が覚めたのは、鞠片さんが最後」

「――っ! よかった……ぅぅ」


 ホントに良かった。


 もしかしたら――って思ってたから、安心した途端、涙が出てきてしまった。


「とりあえず、皆にも目を覚ましたこと伝えてくる!」


 そう言って、急いで部屋を出ていく新田さん。


 トントンと階段を降りるような音が小さく響いて来たから、たぶん2階建て以上の建物なのだろう。


 皆の無事を知らされ、少し落ち着く事ができたからか、今度はいくつもの疑問が頭の中をぐるぐるし始める。



 ――ここはどこなのか。



 ――どうやってここに運ばれたのか。



 そして――



 ――あの仮面の人(?)は誰なのか。



 ――なぜ、私達を無事に帰したのか。



 正直、“旧校舎の亡霊”に遭遇したら、“消される”んじゃないか、って言う可能性も考えていた。


 なのに、少なくとも、直接姿を見たはずの私は、五体満足で生きている。


 もっとも……ここが“神隠し”のための場所、って可能性も――


 そこまで考えた所で、今度はドタドタと言った感じの足音が近付いて来て、凄い勢いで部屋の扉が開き――


「カナエちゃん! 目が覚めたんだって!?」


 ――息を切らせた西崎さんが、室内に飛び込んで来る。


「……はい。 ついさっき、ですが」

「よかった~。 ……ゴメン、俺があの時置いて行っちゃったから……ホントにゴメン!」


 そう言って、まるで土下座するように膝を付くと、深々と頭を下げた。


「ぅぇえ? いや、その、こうして無事だったので――」

「……いいのよ。 あの時鞠片さんを置いて、1人でどこかに行ったのは事実なんだから――ちょっとは! 反省させないと! いけないわ!」


 西崎さんの土下座に面食らっていると、続いて部屋に入って来た伊坂さんが、西崎さんの背中をゲシゲシと踏みつけながらそんな事を言う。



 伊坂さん、そんなキャラだったんですか?



 普段クールな伊坂さんが、半眼で見下ろしながら西崎さんを踏むのを見てると、なんかこう――変な気分になるんですが?


 と言うか、西崎さんが一瞬だけ、ちょっと嬉しそうに見えたのは、見間違いであって欲しい。


 まぁ、とりあえず――


「――伊坂さんも、無事でよかったです」


 そう言うと、グリグリしていた足をどけて、こちらに微笑みを返してくれた。


「鞠片さんも、なんともなさそうでよかったわ。 丸一日目を覚まさなかったから、心配したわ」

「……ぇ? 私、丸一日寝てたんですか?」

「えぇ。 その辺りの事も含めて、情報の整理をしたいんだけど――まずは、何か食べ物を用意するわ」


 ぐぅぅ~と鳴った私のお腹にチラリと視線を向けてから、「ゆっくりでも良いから、リビングに降りてきて」とだけ言って部屋を出て行った。


 部屋に残されたのは私と、踏まれてカエルみたいに潰れた西崎さんだけ。


「――えっと……大丈夫、ですか?」

「だ い゛じ ょ゛う゛ぶ――」


 いや、今にも死にそうな声してますが……


「とにかく、安心したよ~。 めっちゃ責任感じちゃってさ。 まぁユーコちゃんに怒られたのもあるんだけど」

「……あんなに怒ってる伊坂さんを見たのは初めてだったので、ちょっとビックリしました」


 あはは~たしかに~と笑いながら立ち上がった西崎さんが、私にも手を貸してくれる。


 うん、思ってたより、足にも力は入るみたい。

 歩く分には問題なさそう。


「ユーコちゃんも、ハルちゃんも……もちろん俺や雅人もさ、結構心配してたんだよ……“巻き込んじゃった”ってさ」

「いや、そんな事は――」


 そもそも、孝太の事を聞いて、首を突っ込むと決めたのは自分なのだから。


 ただ、どこか楽観視していて、こんなに危険があるとは思ってなかったのも事実だったため、言葉に詰まってしまう。


「まぁとにかく! 今はごはん食べようよ。 お腹空いてるみたいだし」


 微妙に気まずい空気を変えるためか、殊更に明るく言った西崎さんは、まだ少し足元が覚束ない私の手を引くようにして、下の階のリビングへと案内してくれた。



 ……少しごはん食べて落ち着いたら、情報の整理をしなくちゃいけないと思う。


 実際に旧校舎に行って、得られた情報はもちろん、新しく出てきた謎も多い。


 私一人では解らなかった事も、皆で考えれば何かに気付けるかも知れない。



 すこしでも、みなさんの力にならないと。



 そうやって意思を固めた所で、階段を降りた正面――恐らくリビングへの扉の前に到着したのだった。



ちょっと短い繋ぎの話でした。

“起承転結”の承と転の幕間って感じでしょうか?


ここから、転・結と一気に物語がクライマックスに!──なっていくはずです。


投稿ペースが中々上げられない私ですが、気長にお付き合いいただけると嬉しいですm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更にここまで読みました! 古い校舎で繰り広げられる探検‥‥胸が高鳴りますね!それぞれが右往左往する中、カナエが真相に気付きつつある? 8不思議に背後には何か組織的なものが関わってそうだし、…
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