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読み切り小説

【コミカライズ】半年振りに帰国したら婚約者の浮気相手が妊娠しておりました。ちょっとお話しましょうか。ほう、真実の愛?へー、そう。

皆様のおかげで本作はコミカライズさせて頂く事が出来ました。

真白なぎ先生に作画を担当して頂き、「真実の愛症候群~婚約者に裏切られたので、全てお話させていただきます~」と改題して『華麗にざまぁして、幸せを掴み取ってみせますわ!異世界アンソロジーコミック』に掲載されております。

よろしければご覧いただければ幸いです。

m(_ _)m

 突然の自分語りをどうか許して欲しい。

 私の名前はシャーロット・フォン・リートルード。

 リートルード辺境伯家の四女である。


 私には2人の兄と3人の姉が居るのだが、身内贔屓を抜きにしても皆優秀で、兄弟姉妹の仲も良好だった。


 長兄は政治手腕に長けており、自分の商会を経営する傍ら、お父様の補佐として領地経営の経験を積んでいる。

 既に幾つもの改革を実施し、領民からの人気も高い。


 次兄は王都の騎士団に所属していて、その実力は王族の近衛に推薦される程だそうだ。

 しかし、次兄はその話は丁重にお断りし、長兄が辺境伯位を継いだら領地に戻り、将軍として領地と民を守るつもりらしい。


 長姉はお母様譲りの美貌と社交性で社交界の華と謳われ、夜会で出会った隣国の王太子のハートを射止めて輿入れして行った。

 偶に隣国のお菓子を送って来てくれる良い姉である。


 次姉と三姉は双子で、まるで鏡映にしたかの様な左右対称の見た目をしている。


 次姉は芸術家として名が売れており、絵画だけで無く、陶芸や彫刻など、多彩な才能は世界的にも高く評価されている。


 三姉は小説家であり、世界的なベストセラーを何冊も書いている。

 現在、有名劇団が公演している演目の三分の二は三姉の作品だと言う噂だ。


 リートルード辺境伯家の兄弟姉妹は皆、得意な分野で突き抜ける性質なのだ。


 そして四女である私は、『魔法』という物に魅せられている。


 幼少の頃から魔法の修行や研究にのめり込んだ私は、僅か7歳で世界的に権威の有る魔術雑誌『magic』に論文が掲載された。

 その後も『マンドラゴラの品種改良』や『環境が魔石に与える影響』など数々の研究が評価された。

 そして12歳になった私は、無限の魔力を生み出す『永久機関の開発』、決して変質せず破壊する事が出来ない完全なる物質『賢者の石の生成』と並ぶ魔導師の三大課題の一つ『浮遊魔法の実現』を成功させた事で、魔導師としての世界最高の名誉であるマーリン魔法術式賞を最年少で受賞した。

 それと同時に、我が国における魔導師の最高位である大賢者の称号を、これまた最年少で賜り、同い年の第二王子殿下の婚約者として選ばれたのだった。





 そして現在、17歳になった私は、王宮の広く豪華な応接室で、難しい顔をした人々と顔を突き合わせていた。


 この場に居るのは不機嫌そうな国王陛下と王妃殿下。

 複雑そうな顔の辺境伯であるお父様。

 困った顔をした宰相閣下。

 ニヤニヤとした笑みを隠そうとして失敗している男爵。

 勝ち誇った顔の男爵令嬢。

 そして、男爵令嬢の隣に座らされ、両親やお父様の視線を一身に受け顔を青白くさせている私の婚約者、第二王子のルーファス殿下。

 これに私を加えた8人が人払いがされた応接室で卓を囲んでいた。


「それで…………どうするのですか?」


 重い沈黙を破る人が居ないので、仕方なく私が話し始める。


「………………」


 私の問いかけにルーファス殿下は沈黙で返すのだった。


 事の起こりは半年前、我が国主導で同盟国との共同での大規模な魔法研究プロジェクトが立案され、国王陛下からそのプロジェクトリーダーとして指名された私は、外国の研究所で魔法の研究に勤しんでいた。


 そして半年が過ぎ、研究もある程度の落ち着きを見せたので、休暇を取って一時帰国したのだが、婚約者であるルーファス殿下の様子がおかしい事に気付いた私は、ルーファス殿下を問い詰めた。

 すると、何と殿下の浮気が発覚、しかもお相手の男爵令嬢は妊娠までしていると言う。


 速やかに関係者を集めた私は、こうして話し合いの場を設けて今に至るのだった。


「…………本当に申し訳なかった」

「浮気の理由をお聞かせ下さいますか?」

「『真実の愛症候群』だと思うんだ」

「ほう?」

「確かに僕は浮気をしてしまった。

 シャーロットには本当に申し訳なく思う。

 だが、一時の気の迷いだったんだ!」


 ルーファス殿下のその言葉に男爵令嬢……たしかナンシー嬢だったかな?

 ナンシー嬢が顔を顰めてこちらを睨みつけて来るが、敢えて無視する。


「つまり、真実の愛症候群のせいで浮気をしてしまったと?」

「そうだ」


 真実の愛症候群とは、人目も憚らずイチャコラするバカップルの事では無く、ちゃんとした病気の一つだ。

 魔力欠乏症や造魔力障害などと同じ魔力疾患の一種で、正式名称は『相互干渉型魅了術式魔力疾患』と言う。


 この病気は、主に魔力の波長が変化する第二次性徴期前後に発症する物で、変化している途中の不安定な魔力を持つ異性同士が、偶然魔力の波長が干渉してしまい自然魔法を構築してしまう事でお互いに【魅了(チャーム)】を掛けてしまう病気だ。


 自然魔法とは、術式などで人工的に構成した物では無く、『迷いの森』の【迷路(メイズ)】や『風の谷』の【暴風(テンペスト)】の様に、自然界で地形や龍脈、魔力溜まりなどの影響で偶然発動してしまう魔法の事である。


 この病気には厄介と言うか、嫌らしい所がある。

 発症している2人が一線を越えて、女性が妊娠すると治るのだ。

 一説によると、妊娠する事で胎児の魔力の影響で女性の魔力の波長か更に変化する事で【魅了(チャーム)】の効果が消えると考えられている。


 いまルーファス殿下がまともに見えるのはそういう事なのだろう。


 つまり、ルーファス殿下は浮気をしたのは本意では無く、病気のせいだったのだと主張しているのだ。


「なるほど、ですが殿下。

 真実の愛症候群の【魅了(チャーム)】の効果はそこまで強い物では有りません。掛かり始めなら多少気分が盛り上がる程度と聞きます。

 相手と速やかに距離を取り、魔力の波長を変える魔法具を身につければ問題無い筈です。

 現にルーファス殿下のお兄様であるアルフォンス王太子殿下も数年前に真実の愛症候群を発症しましたが、特に問題は有りませんでしたよね?」

「そ、それは……」

「殿下が節度と理性を持って行動すれば対処は可能だったのでは有りませんか?」

「その……かなり強い症状で……」

「なるほど、では何故避妊しなかったのでしょうか?」

「え?」

「ルーファス殿下と私の婚約は政略によって決められた物です。それにルーファス殿下のお立場なら側室や愛人を囲う事も出来ますし、私としても別に他の女性に心を移しても仕方ないと覚悟はしておりました。

 しかし、子が出来てしまったのなら話は別です。

 我が国の国教では堕胎は許されておりません。

 平民なら兎も角、王家に連なるルーファス殿下が不義の子を堕したとなると大きな問題となり、教会との関係の悪化や王家への支持率の低下が予想されます。

 つまり、ナンシー嬢にはルーファス殿下の御子を産んで貰うしか無いのです。

 そうなると当然、貴族院による戸籍登録の際、父親がルーファス殿下である事が記録されます。

 するとどうなると思いますか?」

「え、えっと……それは……」


 動揺してオロオロするルーファス殿下を見る私の視界の端でナンシー嬢の父親の男爵が最早取り繕う事も出来ずに笑みを浮かべていた。


「ナンシー嬢が産むルーファス殿下の御子には王位継承権が発生します。

 順位はかなり下になるでしょうが、王家の血を引くのは確かなのです。

 コレは将来の火種となる可能性が高い。

 その事には思い至らなかったのですか?」

「も、もうお止め下さい!シャーロット様!

 わたくしが……わたくしが悪いのです!

 わたくしが身分を弁えずルーファス殿下に求めてしまったから……」


 ポロポロと涙を流し、同情を誘う様な声色でナンシー嬢がルーファス殿下を庇った。


 貴女、さっきまで勝ち誇った顔をしていたじゃない?

 ルーファス殿下、貴方も『心打たれた』みたいな顔をしているんじゃ有りません!


「ですからこれ以上ルーファス殿下を責めないで!」

「少し黙りなさい」

「っ⁉︎」

「私は貴女に発言を許可した覚えは有りませんよ」

「そんな……わたくしの家の爵位が低いからって、そうやって差別するのですか⁉︎」

「シャーロット!言い過ぎだ!悪いのは僕だろう、ナンシーを責めないでくれ!」


 お馬鹿共め。

 国王陛下や宰相閣下が苦い顔をしているのが分からないのかしら?


「ナンシー嬢、この国は貴族制を敷く王政国家です。

 身分によって区別されるのは当然の事です。

 貴族である貴女が身分制度に対して苦言を呈するのは、この国の在り方に対する反発、君主である国王陛下への侮辱と取られても仕方の無い事ですが、自覚はお有りですか?」

「え?」


 驚いた様に目を丸くしたナンシー嬢は自分を睨みつける国王陛下の視線に気付き顔を青くさせる。


「それからルーファス殿下」

「な、なんだ?」

「半年前、私が殿下にお渡しした試作品は常に身に着けて頂いておりますか?」

「あ、ああ!そうだよ!僕は確かに真実の愛症候群によって間違いを犯してしまったが、君から貰ったこの防御魔法が掛けられた護符は肌身離さず持っていた。

魅了(チャーム)】に惑わされる中でも君への愛を忘れなかった証拠だ!

 妊娠させてしまったナンシー嬢に対しては当然責任を取らなければならない。

 なので、彼女を第二夫人にする事は曲げられない。

 だが、どうか君を正妻として迎える事を許して貰いたい」


 此処だと思ったのか、ルーファス殿下はガバッと頭を下げた。

 王族として臣下の前に頭を下げるのはどうかと思うが、彼も自分の不始末を取り返そうと必死なのだろう。


 だが彼は勘違いをしている。


 ルーファス殿下は第二王子、確かに直系の王族ではあるが、王太子では無い。

 対して私は、自分で言うのも何だが、世界的な発見や発明を幾つもしている大賢者だ。

 当然、魔法による戦闘力も高く、魔物の討伐によって手にした勲章も一つや二つでは無い。

 国に対する重要度で言えば私の方が遥かに上になのだ。


 もし私が国を出奔したとしても、何処の国でも諸手を挙げて歓迎してくれると思う。

 事実、他国から勧誘された事は何度も有る。

 今以上の待遇を提示してくれる国も有った。

 私はこの国を出ても生きていける。


 ルーファス殿下はその辺りを理解していないのだろう。


 王子である自分の元に私が嫁いて来ると認識しているようだが、実際には私と王家の結び付きを強め、国に繋ぎ止める為、私の元にルーファス殿下が送り込まれているのだ。


 私はルーファス殿下が取り出した試作品の護符を手に取った。


「君が愛する僕の為に作ってくれたその護符には何度も助けられたよ。

 移動時に魔物の襲撃を受けた時にもその護符のお陰で傷を負う事は無かったんだ」

「そうですか」


 コレはただの試作品なんだけどなぁ。

 今、一般的に流通している護符は、魔力を込める事で【防御(シールド)】の術式が起動するという物なのだが、その性質上、不意打ちに対応出来ないという欠点が有った。

 ルーファス殿下に渡していた改良型の護符は、予め登録しておいた使用者の魔力の揺らぎから危機を自動的に感知して【防御(シールド)】を展開する代物なのだ。


 その護符を確かめた私は、正常に機能している事を確認してルーファス殿下に返した。


「ルーファス殿下、半年前はバタバタとしていて詳しい説明をしていませんでしたが、お渡しした護符の仕様書は当然お読みになったのですよね?」

「仕様書?」

「はい、この護符は試作品ですから、生産性やコストなどを度外視して作った物なのです。

 その効果は【防御(シールド)】だけでは無く、【魔法防御(マジックシールド)】や【異常抵抗(レジスト)】など、有りとあらゆる防御魔法を詰め込んだ物なのです」

「だ、だから何だと言うのだ?」


 私の説明を聞いたルーファス殿下とナンシー嬢、男爵以外の顔に理解と怒りの感情が浮かび上がる。


「つまり、この護符を肌身離さず持っていたのなら、真実の愛症候群による【魅了(チャーム)】にも掛かりません。

 ルーファス殿下の行動は病による不可抗力では無く、ただの不貞です」

「っ⁉︎」

「以上でお話は終わりでよろしいですね?」


 問いかけにルーファス殿下は答えない。

 私は怒りで赤くした顔を今度は青に変えた国王陛下に向き直る。


「では陛下、事前の約束通り事を進めさせて頂きます」

「ま、待ってくれ!シャーロット嬢、考え直して貰えないだろうか?」


 慌てる国王陛下に私は首を振ってノーを突きつけた。


「既に書面に交わした約束を反故には出来ません。

 今回のルーファス殿下の不貞行為によって、私はルーファス殿下の有責で婚約を破棄します。

 慰謝料は取り決め通りにお願い致します。

 それと、例の件の許可も」

「………………分かった」




 あれから1年後、プロジェクトリーダーを別の魔導師に引き継いだ私は、異国の地で日々を満喫していた。

 此処は世界で最も魔導師の集まる学術都市、世界最高峰の魔法学校を中心に発展した魔法の最先端を行く場所だ。

 私の周囲を魔法学校の制服に身を包んだ同年代の若き魔導師達が楽しそうに登校していた。

 私はこの都市に数多ある魔法学校の中でも最高学府に位置するオーディン魔術学校に通っている。


「あ、おはようございます。シャーロット先生」

「おはようございます」

「シャーロット先生、魔術学のレポートの期限を伸ばして貰えませんか?」

「ダメです」

「先生、おはよ!」

「はい、おはようございます」


 教師として。


 以前、私は自身の研鑽と後進の育成の為に学術都市に活動の拠点を移したいと願った事があった。

 しかし、私が他国に移る事に国王陛下が難色を示したのだ。

 その結果、私はルーファス殿下と婚約する事となり、いずれ結婚し、子供がある程度育ったなら出国を認めると約束した。

 更に、私の実家である辺境伯家へ可能な範囲での支援や優遇措置、多額の研究費の支給などの条件を出され、渋々婚約を受け入れたのだ。

 まぁ、魔力の高い私は長く若さを保つ事が出来るし、寿命も300年くらいは有るだろうから、別に良いかと思っていた。

 だからその時、王家が用意した契約書に書き足して要求したのは『念の為』のつもりだった。

 その要求とは、もしルーファス殿下の有責が認められた場合、私は一方的に婚約を破棄する権利を有し、更に国外に出る事を即刻認める、という物だった。

 別に祖国を嫌っている訳では無いし、家族や王妃殿下や王女殿下とは仲も良いのでちょくちょく帰っているのだが、私が常に国内にいたり、王家の依頼で研究していた頃には比べると、その利益は明らかに少なくなっている。

 ルーファス殿下には国王陛下がしっかりと言い含めていた筈なのだが、忘れてしまったのか、自分の都合の良い様に記憶を変えてしまったのか、今となっては分からない。


 あの後、ルーファス殿下は王籍から外され、ナンシー嬢の実家の男爵家へと婿養子に出されてしまった。

 更に生まれて来る子供も、成人すると同時に王位継承を破棄する誓約をさせられたそうだ。

 それでも王家の血を引いているのだからとルーファス殿下を担ぎ上げたらしいのだが、男爵家は王家や高位貴族から蛇蝎の如く嫌われており、厳しい状況だったらしい。


 そして、私の家族達なのだが、両親は比較的温厚なので、大した動きは無かったのだが、兄弟姉妹達は非常にアグレッシブに行動した。


 長兄は、経営する商会を使って色々と手を回し、男爵家は多くの商会に契約を切られ瞬く間に財政が悪化、多くの借金を抱え込む事になった。


 次兄は、騎士団の権限を使い男爵家の不正を暴いたそうだ。その結果、男爵は強制隠居、準男爵位への降格の上、家督は娘婿であるルーファス殿下……いやルーファス準男爵へと継承された。


 準男爵位と騎士爵位は名誉貴族位なので爵位継承権が無い。

 つまり、ルーファス準男爵が自力で何か功績を挙げて陞爵しなければ、次の代で平民になってしまうのだ。


 長姉は、外交と称して頻繁にやって来ては、社交界に顔を出し、ルーファス準男爵の不義とナンシー嬢の略奪愛を優美で知的な言葉で伝えて回った。

 すると僅か数日で国内の貴族ほぼ全てにこの話は知れ渡ったそうだ。


 次姉は、魔導師(私)に罪を暴かれ没落する貴人(ルーファス準男爵とナンシー嬢)の絵画や彫刻を多数作成し、各国の王室や有名美術館へと寄贈した。

 それらの作品群は『愚か者達』と題されて展示されている。

 ルーファス準男爵達のやらかしが長く語り継がれる事が決定した瞬間である。


 三姉は今回の一件を小説にして発売した。

 地位ある者が自業自得で没落して行くストーリーは、平民にはスカッとする話として、貴族には自らの行動を戒める様に促す教育的な逸話として広がって行き、いくつもの舞台や歌劇の題材になった。


 我が兄弟姉妹ながら皆、容赦が無いと思う。





 学校までの道を歩きながら家族の事を思い出していた私なのだが、最近少し悩みが有ったりする。


「お、おはようございます、シャーロット先生」

「おはようございます、リンド様」


 学校の門を守っている若い騎士様と挨拶を交わす。

 リンド様は門番などをやってはいるが、実はこの学術都市の全体の警備を纏める騎士団の副団長さんだ。

 自分の目で現場をしっかりと見る事を信条としているらしい。立派な騎士様だ。


「あ、あの、シャーロット先生!」

「はい?」


 リンド様は何処か落ち着かない様子で、よく見れば顔も少し赤い。体調が良くないのかも知れない。


「も、もし宜しければ、わ、私と、こ、交さ……」

「あ!済みません、そろそろ授業の用意をしないと!」

「そ、そうですか」

「はい、また後日お聞きしますね」


 リンド様に頭を下げた私は少し急足で校舎へ向かう。


「シャーロット先生、おはよございます」

「おはようございます、ユリウスさん」


 ユリウスさんは4回生の首席で学術都市がある国の第四王子様だ。


「先生、もし宜しければ魔法に関する理解を深める為、今度授業とは別にご指導頂けないでしょうか?」

「ええ、良いですよ」

「本当ですか⁉︎では今度2人で……」

「他にも個別で勉強を見ている人達が居ますから、そこに加わると良いですよ。放課後に図書室に来て下さいね」

「…………分かりました、宜しくお願いします」


 ユリウスさんと別れた私は教職員室に入り、自分の机に荷物を下ろした。


「おはようございます、シャーロット先生」

「おはようございます、サナリトス先生」


 隣の机のサナリトス先生と挨拶する。

 彼は私の次に若い先生で、魔法陣学の権威と言われる凄い人だ。

 他の先生方も素晴らしい魔導師ばかりで、彼等と肩を並べられると思うととても誇らしい。


「如何ですか、シャーロット先生。

 魔導師同士、仕事の後に御食事でも?

 是非、魔法に関して意見を交換したいのですが」

「はい、勿論!」

「では!」

「他の先生方には私から声を掛けておきますね」

「あ……はい、そうですね。お願いします」


 放課後の意見交換会を楽しみにしつつ私は授業へと向かって行った。


 さて、話は戻り最近の悩みなのだけれど、実は私がまったくモテないという事なのだ。

 ルーファス準男爵の様なクズ男は要らないが、私だってイケメンとキャハハ、ウフフとしてみたいし、恋とかしてみたいと思うのだ。

 だけれど、この学校に居る人達は皆真面目で、魔術にしか興味が無い様なのだ。

 偶に声を掛けられても魔法に関する事ばかりだ。

 いや、研究者として実に素晴らしい事なのだけれど!


「はぁ、何処かにいい男でも落ちてないかな?」


 そんな事を呟きながら生徒達が待つ教室のドアを開けるのであった。

評価や感想を頂けると嬉しいです。

(`・ω・´)ノシ

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の手段である逆光源氏計画にはさすがに踏み込まないよね? 家族にバレたら記録に残りそうだし。
[一言] もう一声!
[一言] 書籍化作品から来ました。ただそちらは読み終わったものの更新が当分なさそうなのが残念ですね。 それで試しに単発もと読んでみましたが このような短編でも面白いのですね。
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