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あるいは今より、ほんの僅かに車に寄り添った世界で。

希少な車に乗りたい。そんな欲求は、常日頃から僕たちの心に巣食う悪魔となります。何故なら希少な車とは、得てして部品供給の怪しいものですから。物語はともかく、現実では普遍がイチバン。......しかし物語まで普遍で現実的ではイマイチ面白くありませんので、日常、ちょっとだけあり得る程度には、つまりすっごーくレアですが可能性がある程度には、レアな車にしてみました。......え?いいえ、GC8なのですが。ニヤリ。

本田修一郎氏は故人である。訴えられたくないので社名を上げることが出来ないが、とある大手自動車メーカーをたった一代でのし上げた後は、周囲に持ち上げられる形で日本国首相の座につき、晩年まで自動車関連法案の整備に明け暮れた。彼の功績を上げれば尽きることがないが、中でもずば抜けて偉業と言えるのが、旧車法の制定であろう。彼は多くの人々にハンドルを握る愉しさを教え、広め、生活に根深く浸透させた。91年の夏に訪れた彼の訃報は全国各地で涙をもって迎えられ、今では祝日のひとつに数えられている程である。日本国民が「オヤジさん」と親しみを込めて呼ぶとき、それはとある一人の偉人を指す。ワシ、H社嫌いだけど。こっちの世界だと部品がでないから。



「......であるからして、海外は既にEVが大いに普及しています。これは日本の自動車産業にとって由々しき事態ですよ。いつまで環境に悪い旧車なんかに囚われているんです!旧車法なんて時代にそぐわぬ悪法を、即刻撤廃すべきです!」

朝のニュース、国会討論のビデオ内で、禿げ頭の野党議員が唾を飛ばしている。が、周囲の反応は随分と冷ややかだ。答弁するのは、現首相の豊井明男(トヨダでも章男でもない)総理である。

「お話になりませんな」

開口一番、スッパリである。

「EV、EVと仰いますが、環境によいなどというのは勝手な決めつけに他なりません。勿論私もEVそのものは存じております。製造時の出荷テストで一台につき一般家庭1日分もの電力を充放電テストする事、バッテリーに必要不可欠なニッケルの採掘で現地の環境汚染が多大であること、製造時の二酸化炭素排出量がガソリンエンジン搭載車と比べ15から68%も多いという研究結果まで。ましてや使い潰しでハイ次ハイ次と乗り換える海外の自動車事情と、補修部品による延命で末永く使われる我が国の自動車事情を鑑みれば、旧車法撤廃が本当に環境によいと言えますか?いいですか、我らが日本の自動車進化の歴史は、決して遅れているのではありません。いうなればこれは独自社会と生態系を築くガラパゴス化ですよ。それに、旧車に触媒を装着してはならないという法律などありませんし、実際に旧車向け三元触媒を製造しているメーカーさんもあります。専門家による調査によれば、NOx、PM、HC、CO、全てにおいて海外製の現代車以上に抑えることが出来ています。国からも助成金を出していることはご存じでしょう?環境汚染が旧車のせいだと、日本国は遅れているんだと、どうしてそんなことが言えるんです?」

国会中が拍手に包まれる中でビデオはワイプし、天気予報へとニュースは移る。

「わからない政治家も居たもんだよね」

アサヒがつい溢すと、父親のレイは思わずとばかりに頷いた。

「使えるものを大事に長く使う。日本人はそうあるべきだって、父さんなんかはそう叩き込まれたもんだがなぁ」

「ましてや車なんて、今や受け継いでいけるものなのにね」

「そうさなぁ。アサヒも車は大事にしなさい。ご近所の時雨さん......までは流石に目指さなくてもいいけど、気持ちだけでも時雨さんになるつもりで」

ソラの父親の時雨さんは、ご近所でも有名なブルーバードの過保護オーナーである。曰く、異音の一つで車に乗るなと言い出す(これにはアサヒも心当たりがある)、土砂降りの雨の中では車には乗らない(これも過去に冠水路でエンジンブローしているのだから理解できる)、開かずの納屋に旧車法制定前に買った予備のブルーバードを保管している(これは流石に眉唾だろう)。

「時雨さんは......正直、憧れるよね。おじいちゃんの車かぁ......」

「うちのおじいちゃんはバイク一筋だったからなぁ」

「そういえば、カブを拾ってきたのもおじいちゃんだったね」

今は壊れて修理中のカブだが、その購入時に祖父に世話になった記憶はまだ新しい。その祖父は、”デビュー時にビビッと来た”らしいSR400を未だに乗り回し、日本を放浪の旅に出ている。好々爺に違いない祖父なのだが、バイクの走行距離はえげつないの一言である。それどころか、通学用バイクを相談したときなど、「今ァー北海道おるんよぉ、ちぃと時間かかるやねぇ」と電話口で言っていたくせして、翌日にはカブに乗って群馬に現れ、「こいつなんかどやね?ワレも見よったが、程度は悪いし古いんやけど、いちおう動くには困らんと思うんよ。なんにせよ値段よ。3000円でいいちいわれとーよ」と格安カブを半ば押し付け(実際、最初期型のくせしてほぼノーメンテでセカンドギアホールド過回転往復60キロを毎日酷使しても一年持った個体である)、更に翌日お昼に登録に関して質問の電話を掛けると「今ァー京都おるんよぉー、市役所行けばなんとかなるとよー」と言っていた。アサヒにとって、我が祖父ながら訳が分からないの一言である。

「そうだな。今頃カルフォルニアに居ると言われても全く疑惑を持てないよ。......ところで時間は大丈夫かい?」

「おっと......やば、ソラ待ってるかも。行ってきます!」

「ああ、そうそう。車屋さんから電話があったぞ。なんでも、伝えたいことがあるらしい。放課後にでも寄ってきなさい。」

「えっ......まぁ、時間ないや。後で聞く!」

レイの言葉を聞き流しつつ、アサヒは家を飛び出していく。


「伝えたい事ねぇ......だいたい、良くないことって相場は決まってンだよな」

カコン、カコンと小気味よくシフトアップしつつ、ソラは不安な一言を言う。

「車屋さんが言ってるうちは大したことねンだよ。納車直前だけど不具合見つかったから直しますとか、それで納期が遅れますとかよ。本当にヤバいのは納車後に壊れて保証できませんって奴」

「なんか体感したような口ぶりだね」

「いいや、俺じゃねぇよ。隣のクラスの女子の話」

「なんかあったん」

「納車後にさ、壊れたんだってよ。ミッションブロー。登録が旧車法制定前だって事でさ、保証外で、当然今は部品出るんだけど、でも修理費は自分持ち。車輌価格の3倍請求されたって」

「なに買ったのさ」

「ランクルよ」

ソラは舌打ち一回、苦そうな顔をする。

「ランクルのヨンマル」

「そりゃまた修理費高そうな。ひょっとして親しい奴だった?」

「まさか」

ソラは苦々しげに窓を見やる。

「ここだけの話、片思いって奴。近づくことすら出来なかった。今は再生産された方の70(ナナマル)乗ってるよ。古い奴はめっきり嫌いになってさ。現行しかあり得ないって言ってる」

「そっか」

それ以上は何も触れてやることはない。アサヒとて、そこまで鈍感ではないつもりだ。旧車好きのソラにとって、あるいは旧車嫌いになってしまった彼女にとって、その価値観の違いは到底受け入れることが出来ないもののはずだ。

「70、いつまで生産されるのかな」

「知らねぇよ」

黄色信号、シフトダウンしようとしたソラのミスシフト。ガッ、ギャカカカカカ。弾かれる音と共にシフトレバーが暴れ、「わり」とソラは一言。ニュートラルのまま所在なさげなシフトレバーは、完全停止するまで触られることもなく。

「......5年目だっけ?」

「8年だ。トヨタは30年作るって言ってるけどよ」

現行型か......そう溢すソラは、発進時にガクンとやった。エンスト一回、教習所なら減点一回だ。

「..................わり」

「気にするなよ。僕が悪かった」

なんだか上手く行かない朝の8時。ちょっと憂鬱な登校中。



朝が上手くないと、一日が上手くない。先人はそんなことを言ったものだが、まさに今日などはドンピシャだった。朝から運転がボロボロだったソラは休み時間もだらりと天井を見上げているだけだったし、アサヒも車屋からの一言が気になって学業に身が入らない。クラスメートからの心配の言葉もあぁうんまぁねと生返事である。山あいの枝ををざぁっと掻き上げる爽やかな風も、新緑に映える雲ひとつない青空も、昭和の情景残る木造校舎も、心が曇っていては今一つ清涼に感じない。机に顎を乗っけたまま教科書を見るでもなくボーっとしていたアサヒは、パカンと肩を軽くやられてついハッとした。社会科の教師が、丸めた教本を持ちながら笑顔でアサヒを見下ろしている。

「授業は退屈かね?」

「あっ......いえ、ちょっと悩みごとで」

「納車は楽しみかもしれないが、気持ちを切り替える事も重要だぞ、日ノ出。今は少し置いておきたまえ。もし重大な悩みなら、放課後にでも担任に相談しなさい」

「......はい」

周囲からはポツポツと笑いが漏れる。アサヒはどうにもやりきれず、教科書を顔の前に構えて周囲からの視線を遮った。適当に開かれたページは源平合戦。チラリと見た黒板は高度経済成長。気づけば歴史は移ろいでいると、先人はそんなことを言ったものだ。

「......であるからして、」

教師は途切れてしまった話を戻して、再び黒板をチョークで叩いた。

「一般家庭にも自動車は急速に普及していった。自動車が一般生活の中に溶け込み、生活必需品のひとつに数えられる様になった訳だ。これをモータリゼーションと言う。君たちがこの学校に自家用車で乗り付けることそのものが、モータリゼーションという事になるな。ここはテストに出すから覚えておくように」

モータリゼーション、高速道路の開通、太平洋沿岸の石油コンビナート、環境汚染による公害。

集中しようと思っても、人間そう簡単には切り替わらないものだ。アサヒとて、再び気持ちは移ろいでいく。

今朝の国会のEV論争から、車屋さんに言われる一言。ソラの様子、40ランクルの女子。

もう一度肩を叩かれない程度に教科書を見ているふりをしつつ、結局ページは源平合戦。



「ソラ、時間ある?」

「あン?......あぁ、車屋か」

「そう。出来れば寄りたいんだけど、一緒にどうかなって」

放課後、駐車場に向かいながらの誘い。周囲は帰宅部員であろう歩く人影がチラホラ、遠くからは女子バレー部だろうか、ソーレ、という掛け声。ソラは相変わらず鍵を指先でクルクルとやっている。

「構わねぇけどよ、言われることと次第によっちゃユウの奴を呼んだ方が頼りになるんじゃねぇか?」

「いやまぁ、悪いこと言われるって決まった訳じゃないし」

「そりゃ......まぁ、その通りだな。わり」

「謝ることはなんもないってば」

カチャリとドアを開け、乗り込み、シートに座ってベルト。

キョキョキョ、ボボンとエンジンが掛かれば、いつもの通り雑談はここまで。

510ブルーバードは今日も異音は無さそうだ。ついでにオイルの交換時期ステッカーを見たソラは、来週辺りだなと算段をつけている。


「やぁ、いらっしゃい」

店先でギャランを磨いていた車屋のお姉さんは、アサヒ達がやって来たのを見ると、笑顔で駐車場まで誘導してくれた。駐車枠は大いに空いているのにわざわざオーライオーライと大手を振って誘導してくれる様は、まるで高崎市街の方にあるチェーンのガソリンスタンドに来たときの様だ。

「時雨さんとこのブルーバードね。相変わらず綺麗に磨かれてるわぁ。この深緑がいかにも510よねぇ」

「へへ、どうもッス」

そう良くはない一日だったソラも、車を誉められてなお機嫌が悪いほどひねくれた奴ではない。車好きにとって、綺麗に磨かれている、整備が行き届いた、なんて言葉は最上級である。こと、車のプロに言われるのであるから、自然とはにかみも出るというものだ。

「それから、アサヒ君。ウチで買ってくれてありがとう。ホントもう、気合い入れて磨くから、マジで期待してくれちゃってね!......そうそう、本当は納車時でも良かったんだけど、どうしても伝えたくって。ごめんなさいね、わがまま言って来てもらっちゃった。現物を見た方が早いんだけど」

お姉さんは腰のカラビナから倉庫の鍵を出すと、途中、自販機に寄りジュースを奢りつつ、アサヒ達を先導する。


ギギィ、ガラガラガラ、ギギギギ、ガガン。かなり年期の入った手動スライド横開きの鉄シャッターが、けたたましく音を立てて開かれる。それなりに清掃はされているのだが、いかんせん老朽化した倉庫、多少の砂ぼこりが舞ってしまうのはご愛敬。電灯も落とされた窓ひとつない倉庫内で眠っていた車達が夕日に照らされると、31型のフェアレディZなどはあたかも叩き起こされた後の眠たげな眼に見えてしまう。お姉さんはパチリと水銀灯のスイッチを入れてくれたが、倉庫を見通すに十分な明るさになるのはまだ数分先だ。

「いやぁ......本当はお客さんにわざわざ要らんこと言わないんだけど、実はアサヒ君の要望した格安GC8、不動車を引き取ってきて再生したのよ。沼田でおじいちゃんが趣味で乗ってたらしいんだけどね、体崩して入院して、3年くらい帰れなかったんですって。そしたら当然バッテリーだって上がるし、エンジンオイルも腐るし、オイルシールもヤれるし、車検も切れるし。当然、不動よ。一回(車検)切れちゃったら動かすのめんどくさいし、ズルズルやって、それで5年間も」

「元から乗ってて5年不動......ってことは、アプライドAですかね?」

「その通り。GC8A47D」

スバルは同型式でも「アプライド」と呼ばれるマイナーアップデートがある。年次改良とも呼ばれているが、実際に文字通り年次改良だったのは旧車法制定以前の話。改良とは言っても、部品の互換性を無くせば、当然として未来永劫とも言える年数、部品供給の義務が生まれる。かといって既存車種の改良はスバルのセールスポイントのひとつでもある。結果、頻度は落ちて言葉通りではなくなったものの、年次改良そのものは未だに健在である。今回のアサヒのインプレッサは、どうやら最初期型のアプライドAらしい。

「ん?僕もインプレッサは調べましたけど、WRXセダンは形式では48Dなんじゃ?」

アサヒがアサヒなりにネットで調べたところ、GC8の形式は多々あるらしいが、いわゆるスポーツグレードのベーシックなところであるWRXは、GC8-48Dの筈である。47は聞いたことがない......

「そう!!そこなのよ!!!」

車屋のお姉さんは前のめりに語り出す。ツナギを腰で着て、上半身タンクトップの胸に手を当てて、ちょっと小降りな胸を精一杯張っている。

「このGC......WRX-RAだったのよ!競技用で国から降りた申請書が無いと買えず(※この世界での話です)、GC乗りの間じゃ絶対に買えないと噂されているあのグレードったの!純正でエアコンレス、アンダーコート省略!おまけにクロスミッション!!!正直、倉庫に飾っておきたいレベルよ......そう、これが!!正真正銘本物の!!!」

薄ぼんやりといった明るさから、ようやく本気を出してきた水銀灯に照らされ、アサヒの物になるGC8が浮かび上がる。その姿は......


「......インプレッサですね」

「......インプレッサだな」

「......外見上じゃやっぱりただのGCよねぇ......」


まごう事なく、GC8型インプレッサであった。


「そんなわけで、エアコンはないんだけど、フォグランプは後付け品。引き取ってきた仕様のまんま出目金フォグ(※社外品のラリー用ライトポッド)だけど、嫌なら純正も取り寄せられるわ。出目金引き取らせてくれるなら無料サービスしてあげる。引き取りなしで頼むなら......ごめんなさいね。こっちも商売だから、中古でも片側1万円くらいになっちゃうわね」

「参考までに、新品だと......?」

「聞かない方が幸せよ。ふた桁万円」

「出目金フォグでいいですぅ......」

「そうよねぇ」

思いの外盛り上がりに欠けた(もっとも、車に明るくないアサヒからすれば大見栄切った上でごく普通のインプレッサを見せられたのだから、盛り上がりようもなかったのであるが)お露目会もそこそこに、簡易的な休憩所のパイプ椅子に座って座談会。とはいえ判もついて書類は提出済みかつ納車待ちともなれば、商談などではなく整備アドバイスや純正時との相違に関する話題である。普通はこうだがこの車は××の部品がついているからこう、といった具合だ。幸い、前オーナーたる3年入院おじいちゃんが後付けしたのは、出目金フォグにカーステレオ、純正リアウイング程度であったらしい。後付けとも呼べないアルミホイールは、定番のスピードライン6本スポーク16インチである。そこへタイヤはすり減ったレグノ。正直釣り合ったタイヤとは呼べない。是非ともネオバやポテンザをと薦めるお姉さんを、アサヒはのらりくらりかわしている。ガソリン代すら払えない時に、スポーツタイヤを買う余裕はないのだ。

「今回ばかりは参ったわ。本当ならアルファベット3文字(※ASK、価格応相談)で売りに出す個体なのに、ふっっっつーのGCの格安個体と同じ値段で売っちゃうなんて」

車屋のお姉さんはそう笑う。アサヒはその態度にいまいちピンと来ない。

「いいんですか?別に今から他の個体探してきたって......」

「いいのよ」

山の向こうへといよいよ暮れかけた夕日を見上げつつ、お姉さんはブラックの缶コーヒーをちびりとやる。

「車はのってナンボよ。いくら個体数が少なくっても、登録されてる限り部品はわんさか出るんだから、乗らないだけただの損。そんなら、将来有望な若者が乗るに限るじゃないの!」

でもお願い、もし手放すならウチを使って!と茶化すお姉さんの笑顔は、ちょっとだけアサヒの記憶のなかのお姉さんを彷彿とさせて。


(おねぇさん、僕、買いましたよ。インプレッサ)


ざざぁと風が吹くなか、夕日に照らされた赤城を見つめた。


終わりよければすべてよし、と先人たちは言っていた。少なくとも夕方までは、いい一日ではなかったはずだ。今はこんなにも夕焼けが眩しく、綺麗で。

心が晴れたならば、ここの景色は素晴らしい。




・・・・・


「ところで、WRX-RAって、そんなに希少なんですか?」

「聞かない方が幸せよ。それでも聞きたいなら教えてあげる」

「聞きたいです。僕の乗るクルマですから、そこはキッチリと」

「残存登録台数2台」

「......え?」

「登録は数十台あったけど、競技用でしょ?使い潰されて、残存登録台数は2台。今は唯一当時ナン(※法改訂前の旧規格ナンバープレート。新規に申請することができないので、嫌が応にでも希少となる)が福岡県に居るらしいわ。まぁこれはA型に限った話だけど」

「せっ......」

「せ?」

「責任重大じゃないですかぁぁぁ!!!!!!!」


無駄にカッコつけてしまったアサヒが責任の重さから「えっ、万が一事故に遭うくらいなら、乗らない方がいいのでは......?」とガラスケースに飾る寸前まで追い詰められたのは、ここから数日後の話。


買ってッから希少さに気づく、なんて、実は中古車では良くあることです。防犯上伏せますが、僕の車、友人や知り合いの車、何れも古ぼけた良くある中古車、詳しく探ってみれば「実はこの仕様、残存台数一桁!」なんて事ばかりです。ですから、そういったレアなポイントを探してみるもまた一興でしょう。事実は小説より奇なりと、先人はそんなことを言ったものです。明日あなたが買うその車、ひょっとしたらレアかもしれませんよ、奥さん。

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