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影法師  作者: 山さん
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影法師 第1話 前編

影法師第1話


「日常の異変・前編」



とある一般より少し貧相な一軒家の部屋で男子高校生、旭昇がいびきをかいている

カーテンから差し込んだ光で目を覚ます


「ふぁ~…あれ?目覚ましどこ?」


手元を探りながら目覚まし時計を探す


「お…あったあった」


時間を確認すると8時10分だった


「…え~と、始業時間って8時半だから、普通に歩いたら8時40分…うん!」


昇はふっと笑うと息を吸い込んだ


「遅刻だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


叫びながら階段を駆け下りた


(なんで目覚ましならなかったんだ!?え~と確か…)


昇は30分前のことを思い出していた






_30分前


7時40分に設定された目覚ましのアラームが鳴り続けている


「う~ん…もう起きてるって…」


少年は起きようと試みたがどうやら睡眠欲があるみたいでなかなか起きない


「もうちょっと…」


目覚ましのアラームを止め、そのまま眠りにつき…






_そして現在に至る


「はい~俺の馬鹿~」


いそいで着替えと歯磨きを終え、下駄箱に向かった


「昇~いま起きてきたんですか~?」


そう昇に声をかけたのは、この少年の母、旭綾子である


「母さん!なんで起こしてくれなかったの!?」


昇が八つ当たりすると綾子はため息をついた


「もう高校生じゃないですか。いいかげん自分で起きてください」


「う…ぐうの音もでない正論…」


「それにちゃんと顔を洗ってください。そんな顔で外を歩いたら恥ずかしいですよ。母さんが」


綾子は息子に毒を吐き、


「生まれた時からずっとこの顔だわ!それに朝から自分の息子の顔をブサイク呼ばわりするなんてアンタ鬼か!?」


昇は綾子にツッコミながらも靴ひもを結んでいた


「そこまでは言ってません。それより…」


綾子は時計のほうに指を指した


「時間は大丈夫なんですか?」


そう言われ時計を見ると8時20分だった


「やばい!い、行ってきますっ!」


ドアをあけて急いで学校へ向かった


(…あんな母親だけど俺が幼い時に父親を亡くし、女手一つで俺と海外留学している姉を育ててくれたから感謝している。兄もいたらしいがその人も俺が幼いときに亡くなっているらしいから、正直全然覚えていない)


すると綾子が後ろから大声で昇を呼び止めた


「昇~言い忘れたことが~!」


「うん!?なによ!?」


綾子に急に呼び止められ、昇は思わず振り返った


「まだ読者に自己紹介してませんよ~!」


「いや、身も蓋もないな!?」


とは言え、昇本人も自己紹介する気満々である


(それでは改めまして、俺の名前は旭昇。今年、北武高校に入学したばかりの高校1年生。…て、特に紹介することないしカットで!)


ちなみにこの地域の高校は、北武、東武、西武、南武と東西南北で分かれている高校が存在する

北武は偏差値が一番低いらしく、問題児も多いらしい

そしてざっくり高校の説明している間に学校に着いた






_北武高校



「…」


昇は廊下を歩いているといつもとは違う視線を感じていた


「おい、アイツじゃないか?」


「ああ。写真の顔と一緒だぜ」


「のこのこ学校に登校してくるなんて馬鹿なやつだ」


「取り敢えず、バットは準備した」


大勢の男子がバットを持って昇を睨みつけている


(…いや、これただの殺意っぽいぞ!?)


その場にいるとまずいと感じた昇は猛ダッシュで逃げた


「あ!追え!」


「奴を決して逃がすな!!」


まるで獲物を追うかのような鬼気で後をつけ始めた



昇はしばらく逃げ込んで校庭の草むらに隠れることにした


(奴ら…何をあんなに必死で…)


すると足音が聞こえてきて慌てて身を潜めた


「見つかったか?」


「いや、こっちにはいねえ」


「くそっ、あいつだけは許さねえ!」


「「「俺たちのアイドル西森カナエ様と手をつないで下校していたとは!!」」」


西本カナエとは、文武両道、誰にでも優しい性格、高校生且つアイドルの活動をしている美少女である


(そんな人気者と俺のでたらめな噂…一体誰が…いや、もしかして…)


昇は思い当たる人物が浮かび上がり、その人物のもとに向かった



_クラスルーム


「お前かぁ!!!智嗣ぃ!!!」


窓側で机に足を乗せている男に声を掛けた


「…ん。おお、昇。遅刻か?」


能天気に返答したこの男は大山智嗣。昇と中学校からの腐れ縁だ。昔から何かと昇にはちょっかいを出してくる


「遅刻どころの騒ぎじゃないよ!!西森さんと俺が手をつないで下校したって噂、智嗣が偽造した噂だろ!?おかげで大勢の男どもから逃げ回ることになったよ!」


昇は声を荒げ、智嗣に迫る


「…おお、そういえばそうだった」


智嗣は能天気に答えた


「それでいいのか…?お前の遺言は!!」


「の、昇君!!ちょっと待って!!」


隣に座っていた生徒が智嗣を庇った


「!?良吾…?」


シャーペンを智嗣に突き刺そうとしたら同じく中学校からの付き合いの八軒良吾が間に入った


「智嗣君がこんなことをしたのは理由があるんだよ!」


昇は良吾が庇っているせいで智嗣に攻撃ができない


「理由?こんな噂まで流してまで行う理由ってなんだよ?」


取り敢えずシャーペンから手を離し、聞くことにした


「お前、俺が貸したエロ本まだもってるだろ?いつまでたっても返さないから変な噂さえ流せば嫌でも返すと思ってな」


「そんな理由で!?てか、そんな大した理由でもなかった!なんて器の小さい奴だ!余計に返したくなくなったわ!」


更に怒りが増した昇はなんとしてもエロ本を返さないと決めた


「…返してくれないのか?」


「当たり前だ!あんな目に遭わしてくれたんだ…あと2か月は返さない!」


すると、智嗣は深くため息を吐いた


「…そうか。なら、お前が持っているエロ本の本数をクラスの女子にバラす」


「智嗣様、どうぞこちらをお納めください」


「手首がねじ切れんばかりの手のひら返しだね…」


2人のやり取りを見ていた良吾が思わずツッコんだ


「うむ」


「ふぅ~…俺が持ってるエロ本の数知られたら社会的に終わるとこだった…」


昇が安堵していると


(…昇君って、一体どれほどのエロ本持ってんだろ?)


…と、シンプルな疑問が良吾の頭に浮かんだ

すると、ドアが開く音が聞こえ、振り返ると美少女を取り囲む男どもの集団が入ってきた


「西森さん!おはよう!」


「今日も美しい…///」


そう取り囲まれているこの美少女こそが学校1の人気を誇る高校生兼アイドルの西森カナエである


「おはよう、みんな♪」


「はあん…///その笑顔をみせられるだけで…」


西森カナエが微笑むと次々と取り囲んでいた男たちは気絶していった

そして、辺りを見渡し、昇を見つけると手を振った


「旭く~ん!」


西森カナエは昇の苗字を呼びながら近づいてきた


「ごめんね…?なんか、私と変な噂されちゃって…」


(え?自分も被害者なのに俺に謝ってくれるなんて…すごくいい子じゃないか!)


昇は初めて人の優しさを感じたような表情で自然と涙を流していた

その会話を気絶していたはずの男たちが怨嗟の目で見てくる


「気安く西森さんと話しやがって…!」


「さっさと離れろ豚野郎」


「ここで始末しとくか…?」


クラスの男子が殺伐とした空気をだして、昇を睨んでいる


(…こいつらに人の心はあるのか?)


智嗣は軽くクラスの男子たちの人間性を疑っていた


「…いやいや、こちらこそごめん。どっかの馬鹿が流した噂だろうからじきに収まると思うしね…」


チラッと智嗣を睨みつけると智嗣は目をそらした


「?そうなんだ。なら良かった!あ、もうすぐ授業始まるから戻るね!」


カナエはニコニコしながら自分の席に戻った


「いや~天使みたいな子だな~」


昇は心が洗れたような笑顔で智嗣と良吾に言った


「どうかね…ああいう人間には裏があると思うがな」


「はは…智嗣君、その言い方はひどいよ~」


良吾が苦笑いで答えた


「そうだよ智嗣。あんないい子にそんなこと言うなんて失礼なやつだな」


昇がムスッとしているとまたもやドアが開き、ジャージ姿で顎髭を生やした男が入ってきた


「てめーら席につけ~授業に入る前に連絡がある」


入ってきた男はこのクラスの担任である早乙女蓮である

普段からだらしがない男だが今日に限っては真剣な表情で生徒たちを見つめていた


「最近、この辺りで行方不明者が多発している。日が暮れてもし怪しい人物や変な穴を見かけたらすぐ逃げろ。つか、放課後になったらすぐ帰れ。それも含め、最近身体の調子が変だったら俺に相談しろ。以上」


そう早乙女からの忠告で昇は少し疑問を抱いていた


(…穴ってなんだ?それに『相談すんのは俺にしろ』って…そこは普通警察じゃないのか?ま、学校終わったらすぐ帰る俺には関係ないか)









_放課後


授業中や休憩時間中もクラスメイトから殺意を感じていたので昇はいつもより疲れがたまっていた


「はぁ…殺される前に早く帰ろ」


「もう帰るのか?」


そう呼びかけられ振り向くと智嗣と良吾が立っていた


「ああ、早く誤解解いとけよ?このままじゃ不登校になりそうだ」


「まかせとけ。それよりさっさと帰れよ?そろそろ日が暮れそうだからな」


智嗣は夕日を見ながら言い、自分の席についた

良吾も席について思いつめたような表情をしていた


「?お前らは帰らないの?」


「うん…仕事が残ってるから…」


良吾は笑顔だがどこか辛そうな感じだった…昇は何となくそう察していたがあまり触れてはいけない気もしていた


「…そっか。あんまり無理すんなよ。じゃあな」


昇が2人にそう忠告すると教室から出ていった


「智嗣君…もうそろそろ…」


「そうだな…」


2人は再び、山に沈んでいく夕日を見つめていた







_町内

昇は2人のことを少し心配しながら家に向かっていた


「あいつら大丈夫かな…あ!そういえば今日発売される新刊のこと忘れてた」


振り返り、本屋に向かおうとしたが朝に言っていた早乙女の言葉を思い出していた


(…ちょっとぐらいなら大丈夫か)


昇は自分にそう言い聞かせ、本屋に向かって向かった








「ありがとうございました~」


本屋から満足そうに包みに入った本を抱えた昇が出てきた


(家に帰ったら早速読むか…にしても結構暗くなったな)


しばらく歩くといつもの通学路に辿り着いた

そして道に沿って歩いていると近くの建物にあるなにかを見つけた


(?なんだ?あそこになにかあるような…)


そう思いながらそ場所に向かうと建物の壁に直径3Mほどの大きな穴があった


(なんだこれ!?これが朝、先生が言ってた穴?)


覗き込むと建物のなかが見えず、ただただ真っ黒な景色が続いていた


「これまずいんじゃ…」


その場から離れようとすると酔っぱらった男性が近づいてきた


「うぃ~くそ~あの上司め…自分の仕事を俺に押し付けやがって…ん?なんだこれ?」


男性が愚痴を言いながら穴を覗き込んだ


「あの~危ないですよ。離れたほうが…」


昇が注意すると男性はいきなり笑いだした


「はっはっは…近頃の若いもんは冒険心がないな~大丈夫大丈夫ほらこ~んだけ近づいても…」


その瞬間、穴の中から手が伸びてきて男性の顔を掴んだ


「ムグッ!?」


男性は抵抗しているがその手の力は強いらしく引き離せない

そして手は男性を穴に引き連れようとした


「ま、まてっ!!!」


昇は慌てて男性の身体を引っ張ったが手の力は弱まらず…


「う、ああああああああ!!!」


そしてそのまま男性と共に穴の中に引き込まれてしまった


第1話前編end


第1話後編に続く



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