プロローグ
プロローグ
ー数千年前の日本のとある村にて不思議な出来事が起こった
「大地、空、そして海に眠る数多の精霊よ…今こそ我が声を聞き給え…」
青年が星型模様の地面の上で呪文らしきものを唱えている
その周りを数十人の村人が囲み、青年を見守っている
「今日もやってるよ、アイツ」
「ほっとけほっとけ。どうせ成功するはずもないんだから」
通りすがりの村人が笑いながら通って行った
「ちょっと!今日は成功するかもしれないじゃない!」
青年を見守っていた少女が馬鹿にしていた村人に怒鳴った
「な、なんだよ、ミソギ。まだアイツの精霊術ってのに期待してんのか?」
「そうよ!エンゴの儀式は絶対成功するんだから!あんなに頑張ってたんだから今度はきっと…!」
ミソギは潤んだ瞳で村人を睨んでいた
ちなみにエンゴとは今、呪文を唱えている青年の名前である
「で、でもよ~まだ1ッ回も成功した試しがないじゃないか!」
「そうだそうだ!もう19回目だぞ!」
ミソギが少し引いていると、老人が仲裁に入った
「これこれ、喧嘩するでない。今は村全体が手を取り合い、エンゴを見守ることが先決ではないか」
「長老がそう言うなら…」
村人は渋々、エンゴエンゴを見守る見守ることにした
「…長老。ありがとうございます」
「うむ…幼馴染であるあやつを信じてやりたい気持ちなんとなく察せるからのう」
「わ、私はそういう訳では…///」
「ふぉっふぉっふぉっ…隠さなくてもよい。この村は半年前からの旱魃の影響で農作物が干乾び、もちろん水も残り僅か…エンゴの精霊術に賭けるしかないからな…」
長老がため息を吐きながらエンゴの近くの椅子に座った
(そう…エンゴ曰く、精霊ってやつを呼び出すことが出来れば村の貧困問題を解決できるらしい。…長老はああ言ってたけど、実際殆ど諦めているだろう…長老だけじゃなく他の村の人たちも…だけど私だけは信じてあげないと…!)
儀式が始まって1時間1時間以上経過していた。ほとんどの村人が諦めて自分の家に帰ろうとしていた。
「……………!」
突然、エンゴの目が見開き、雲行きが怪しくなった
「おお…空が…」
帰ろうとしていた村人たちの間でざわめきが起こった
「静かにせい!」
長老が一括して辺りが静まった
「___精霊よ。我が声に耳を傾けるのであれば聞いてほしい!この村は半年前からの干ばつにて壊滅状態だ…どうかこの危機を救ってもらいたい!」
すると天候が激しくなり、踏ん張っていないと飛ばされそうな勢いの風が吹いた
そしてエンゴの足元の星型模様の地面が輝きだした
「___!!顕現せよ!!土地の精霊シルフよ!!」
その瞬間、エンゴの目の前に雷が落ちた
「うああ!?」
その衝撃でエンゴは吹っ飛んでしまった
慌ててミソギが駆け寄る
「エンゴ!!大丈夫!?」
「あ、ああ…ギリギリ大丈夫…少し火傷したけどな」
エンゴの腕には火傷が広がっていた
「少しって…」
「そんなことよりついに成功したぞ!!」
心配しているミソギを遮って雷がおちた場所へ向かう
だが…
「なにもない…?」
雷が落ちた後しかなく、召喚したはずの精霊はどこにもいなかった
「そんなはずは…」
エンゴが落胆していると1人の村人が上空に指を指し、叫んだ
「なんだ!?あの穴は!?」
指をさした方向には直径10Mほどの穴が広がっていた
「…なんだ、あれ…!?」
エンゴ含め、村人全員が驚きの声を上げていた
そして、穴の中から黒いモヤが噴き出し、中から人型の物体が飛び出してきた
「お、おい!エンゴ…あれがお前の言っていた精霊ってやつか!?」
村人がエンゴに慌てて問いかけるとエンゴは静かに首を振った
「あれは、精霊…なんかじゃない…!!」
そしてミソギは近くにいた子どもを守るように抱きしめ、飛び出してきた物体を見つめた
穴から飛び出してきた物体は精霊というにはあまりにも不気味でそして禍々しかった
その姿はまるで…
「………影?」
プロローグend
第1話前編に続く