形勢逆転?いい気味と思う僕がいる、でも……
沢山のダイアが輝きながら、僕達を見たこともない世界へと連れてってくれる。
そんな気がするのは、僕だけなのかな?
僕のダイアはピンク色に輝く宝石。
ねぇ――他にはどんな宝石があるの?
『もう。そんな奴に名前なんて聞いてどーすんのよ』
『呼ぶときに困ると思いまして……』
『そんなの、『おい』とか『そこの』でいいのよ。怪しい奴に代わりはないんだから』
『……すみません』
『はぁ。まぁ、いいわ。一応聞いておくわよ、キズナが聞いてあげたんだから、ありがたく思いなさいよ』
「…………」
やはり最悪の性格の持ち主のサユ。僕の口から言葉の代わりに溜息が出て、これから先が思いやられるな、なんて冷静になっている事に、自分自身で驚いてしまう。
キズナは礼儀正しいし、相変わらず無表情だけど、確実にサユより印象は格段にいい。それで表情があれば凄くいいんだけど、個性の一つという事にしとこう、うん。それが無難な気がする。
『黙ってないでさっさと名乗りなさいよ。このチャンスを逃したら二度とないわよ?』
「…はぁ」
『はぁ、じゃないわよ、ったく』
『サユ様、お言葉が乱暴ですよ』
『キズナまで、そんなにあたしを泣かしたいの?』
え? 泣かしたい? どういう事?――
ずっとさ、会話や最初の印象と乱暴さを見る限り、泣くなんて想像も出来ないんですけど。正直、女性だからと気を使いたい部分もあるが、無理だよ、だって僕は蹴り上げ、殴られ、罵倒され、無理に決まってるよね。
『…そんな意地悪言わなくていい…じゃない。キズナ』
あれ? さっきまでの態度から少し弱い部分が漏れ出し、声が弱々しくなっている。気のせいなんかじゃない。サユが権力を持ち、キズナが仕える形から、一遍だ。
形勢逆転ってこの事を言うんだね。
呆気にとられながらも、どう変わっていくのか見物だ。少々、性格の悪さが出ているかもしれないけど、仕方ないんだ。だって…僕だって……傷ついたんだもん。
『サユ様、今回は甘やかしませんよ。この間も民の者同士で揉めているのを仲裁しようとしたのはいいものの、何故、ヒートアップして喧嘩に混ざっているんですか。私がその場を収めたからいいものの、この国のトップはサユ様、貴女なのですよ? もう少し、自覚してくれませんか?』
『それは……あれは』
痛い所をつかれたのか、続きの言葉がなかなか出てこない。痺れを切らしたように、言葉を切るのはキズナの役目。
『もっと素直になりましょう』
その一言がサユからしたらどんなものになるのか、受け止めるのか分からないけど、バッサリ切った感がする。清々しいけど、少し可哀そうな気も……
『キズナのばかぁああああ』
結局、言い返す事が出来なかったサユは、駄々っ子のように、泣き始めた。まるでサイレン。正直、騒音だ。だけども、その姿が、なんだか可愛く見えるのはギャップが適用されているからだろうか。
泣きじゃくるサユにオロオロする僕、そしてそれを見続ける無表情なキズナ。
『……申し訳ございません、改めてよろしくお願いします。ゲン様』
「……よろしくお願いします」
少しキズナの恐ろしさを見た気がする……




