秘密の声
いつまでも眠り続ける僕を、見つめる瞳がある。僕はダイアの中でメアリーとの会話をしていたので、その熱い眼差しに気付く事が出来なかった。
僕の意識はメアリーから移り変わり、声の主たちへと流れていくんだよね。まるでメアリーが強制的に彼女達に押し付けたみたいなように感じているんだけど、違うのかな?
『……ここまで眠り続けるなんて変じゃない?』
『それはそうですが……』
『あたしの考えが、正しければ誰かがこの男に入れ知恵をしているように思うのよ』
『サユ様、それは考えすぎではないでしょうか……』
キズナの声はまるで病人を労わるように、優しく呟き支えようとしている。正直、サユの言う事は、的を得ている。だけど、それはあくまで想像でしかなくて、確証と確信がない『夢物語』のように聞こえてしまうのも否定できないんだ。
僕も、自分の身に降り注いでくるものが、現実とは程遠くて、夢なんじゃないかと思ってしまう位だからさ。
目が覚めたら、すぐさまに、ほっぺをつねって、確認してみるんだ。
自分に言い聞かす為に…ね?――
◇◇◇◇
女王は一人で充分。ここには王様もいない、国を統一させているのは、若く見える少女の『サユ』だ。実年齢は不明だが、国の情勢や、民達の把握をしている自体で、有能な指導者であり、権力者なのかもしれない。
僕は彼女に対しての印象は最悪で、なんてじゃじゃ馬なんだというのが本音。本人に伝えると、僕の未来が大変な事になりそうだから、これはシークレットミッションなんだ。
まるでゲームみたいな、おとぎ話のような、変な世界。
しかも心臓がなく、心臓を持つ者の事を『ダイア』と呼んでいる。心臓がないのに、どうして生きる事が出来るのだろうか? 僕の身体の構造との違いが、外見からは分からないんだ。
メアリーは僕に忠告をした。ダイアの中に眠り続ける『声』の妖精の存在の事を。それを知られてしまえば厄介になる事も、遠まわしにだが、聞いた。
直接的に言えない理由があるのだろう。それもそれで、無理矢理、聞き出そうとは思わない。
そんな沢山の疑問や言葉の渦から逃げるように、光が僕の手を取り、誘うんだ。サユ達の元へと……
ダイアは貴方の心の中にある、そして私達は導くのが役目。
本来のダイアの力に目覚めた時、貴方の運命は思いもよらない方向へと進むかもしれない。
それでも、忘れないで?
貴方は選ばれた人なのだと――
『………ゲン様』
懐かしくて、悲しい声が聞こえた気がした。