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違う音色

二人のじゃれている声を楽しんでいると、急に僕の耳は機能しなくなったように静寂を(もたら)した。そのかわりに、違う音色が聞こえて、僕を名前を呼んでいる、そう感じたんだ。まるで吸い寄せられるように、ね?


<マスターこちらですよ? 私の存在を無視して『あの女達(ものども)の戯れを楽しんでいるなんて、ゲン様は罪深きお人だ事>


僕の耳元で意地悪く囁く声は今まで聴いた事のない音。まるでが吹き荒れるような……言葉で表せれない新しい空間と存在が僕の手元にある。


<ここは貴方のダイアの中です。ゲン様の世界で言えば『精神世界』と言えば理解出来るでしょうか? この『国』では心臓の事をダイアと呼んでいるのですよ>


ダイアの中? 精神世界? 何を言っているのかよく分からない。その中でも一つ理解出来る事がある。それは、僕の生きた『国』とこの『国』は全く別物と言う事実だけ。何故、このような不思議な現象が起きているのか分からないし、僕には記憶が欠けているようで、思い出そうとしても、思い出せないんだ。この国に何故、存在しているのか。僕はどうやって辿り着いたのか。そして……この声の主は誰なのか。


<ふふふ。私の名前はメアリーとお呼びください。貴方のダイアを守れる『妖精』みたいな存在です>


愉快そうに笑うメアリーはままごとをしているように、スラスラと飛び回る。瞼の開かない状態でも、彼女が僕に近づく度に、優しい自然の香りと、羽音を感じるから。僕の体とメアリーの存在がリンクして、居心地よく共鳴しているみたいに。


<さて、ゲン様。ここは貴方の世界です。あの女達(ものども)にこの会話が漏れる事もないのですよ。瞼を開いて、美しい『オーシャンブルー』の瞳を私に見せてくれませんか? そして美しい歌声を奏でられる声で、語り掛けていただきたいのです>


メアリーの声は『言霊』となり、僕に新しい力を与えた気がした。


失くした記憶の欠片の代わりに、何かを手に入れたんだと思うよ。


――その時の僕は、まだ何も理解出来ずに、揺れているだけだった。

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