どこまでも続く夜
夜は何処までも続いていく。
まるで、闇が踊っているように……
僕達も飲み込まれながらも楽しんでいくんだ。
ずいぶん遠くまで走ったみたいだ。メアによる情報では、森の奥へとセイは進んでいったらしく、ここからは能力を使わないと尾行するのは難しいとの事だ。
メアが使おうとしている能力は、主の僕の許しがないと発動しないものとなっている。それもあり、連絡してきたんだ。
『使ってもいいかしら? 貴女の言霊が必要なの』
そう言われると、僕の口から毀れ出るのは「yes」の一言だけ。どんな言葉でも言い訳じゃなくて、僕の選んだ言葉で言霊の力を加えれば、その一言で発動条件を満たすものとなる。
『ありがとう……また状況が変わり次第、連絡する』
「……分かった。今はサユも僕の声を聞いているの?」
『ええ』
「驚いていない? 僕の変わりように」
『どうかしらね。自分で確かめてみれば?』
メアは色気を含みながら微笑んでいるみたいだ。何故かって? いつもより声が優しく感じたからね。そう思うのは、当然だろう?
「ふっ……相変わらずだな」
『ありがとう』
「サユに直接聞いてみるよ。全てが終わった時にね――また後で」
そうやって、会話は終わりを告げた。あちらの動向はメア達に任せればいいとして、セバスがしでかした事の後始末をする……その作業に取り掛かる事にした。
「ねぇセバス。君は躍らされただけなのかもしれない。でもね……民衆に魔素を振りまいて、闇に堕としたのは、君自身。自分のしでかした事、忘れないでね」
ある程度のセバスの魔素は僕が、喰らったから、ほんの少ししかちからは残っていないはずだ。だから、考える時間を与えてあげるのも、一つの優しさだと考えたんだ。
まぁ、逃げようとしても、そう簡単に僕から、逃げられるなんて見くびってもらったら、困るけど、そこは彼に任せようと思う。
(さて……と。僕はこれから出来る事をしよう)
しかし、この量は凄い。どれだけセバスの身体の中にあんな人数を闇へと堕とせる莫大な量の魔素を取り込んでいたのかと、驚いてしまった。過去のネガのない状態の僕なら、何も出来ずに、この悲惨な現実に絶望していただろう。
(ここまで多いと、厄介だけど喰いごたえがあるな)
ついさっき、セバスの魔素を吸収したばかりなのに、僕の身体はお腹を空かせているみたいだ。
自分でも思うんだけど、どれだけ美食家なんだよ……
「さて、喰べにいきますか』
そう呟くと、能力『浮遊』を解除し、地上へと降りていった。
ふわふわ降りていく僕の身体。
まるでスローモーションのようで、特別な感じがする――実際、特別な存在なんだけどね。
ストンと地上に降りたと同時に能力開放。
四つ目の能力は地上に降りた瞬間に発動するようにしている。僕は両手を広げると、手から蜘蛛の糸を出すように、能力の糸を広げて、民衆へと繋げていくんだ。
まるでホースのように伸びていく――
それが身体に取り付けられる時、痛みなどは感じない。取り付けられた人は身体を停止し、流れに身を任せていく。
ドクンドクンと、糸を伝って僕の身体に魔素が流れてくる。これだけ大量の魔素を取り込むなんてリスクがあるように思うかもしれないけど、僕の場合、体内で浄化できるから、どれだけ取り込もうが関係ないんだ。
『うぐう』
『ぎゃあああああ』
『た……すけ…て』
魔素を体内に取り込めば取り込むほど、民衆は元の自分へと少しずつ戻っていく。
「大丈夫、もうすぐ楽になるから」
そう言うのが精一杯なんだ。他に言葉が見つからないから――




