食べすぎたかな
(結構、魔素を摂取しすぎたかな? なんだかお腹がいっぱいに近いかも)
少しやばいかな? とセバスを確認した。僕が腕の力を緩めるとスルリと離れていった彼を見て、大丈夫だと安心した。
(ついつい、やりすぎちゃった。でも、美味しかったな)
久しぶりの魔素の味は絶品だった。ハマってしまいそうな味と満腹感に溺れてしまいそうだけど、ここで、これ以上接種はNGだよね。
――未来をかえる為には……
<食べすぎですよ、ゲン。いくらお腹が空いたからって、やりすぎ>
(……うーん。やっぱり言われると思った。美味しくて、ついついやりすぎちゃったよ。だけど彼は大丈夫みたい)
<……気をつけてください>
(分かったよ)
僕とメアは同じ考えを持つ者同士だ。だからこそ、僕がダイアの国へ入る為に、過去のネガを封じてくれた。そのおかげで警戒心はあったものの、空腹で倒れて、中に入れて、現在がある。
だから感謝しているよ。
新しいストーリーを作る土台を創ってくれたんだから。
『繰り返してるだと……だったら何故』
何か思い当たる事があるのだろうか。その呟きが、僕の耳にこびりついて離れなかった。
気になった僕は、彼に聞いてみる事にした。
「何のために、こんなことするの? 本当の君は望んでいないだろうに……もしかして、誰かにそそのかされているとか?」
『そそのかされてなどいない……私は自分の意思で』
「果たしてそうなのかな? 今日はいないみたいだね、いや、言葉を間違えたかな? メアの情報ではもう一人、ここにいたはずなんだけど……見当たらないね」
僕が何を言いたいのか、理解したように、後ろを振り向くと、そこにいたはずのセイが姿を消していた。
跡形もなく……最初からいなかったように。
『セイ?』
「後ろを確認しても、誰もいないよ? ここにいるのは僕とセバス、君だけなんだから」
僕の言葉に引き寄せられるかのように振り向くと、彼は先ほどのような敵意を隠し、冷静に僕と向き合う。
「これじゃあ、君のみで今回の件を起こしたみたいだ。本当の首謀者のかわりに罪を被るのは、君になっちゃうね」
『セイは、そんな人間ではない』
「だったら何故ここにいないの? 彼は君に言ったんだよね? 何があろうと傍にいるって……それとも不安になって、逃げちゃったのかな?」
『そんな事は……』
ないと言い切れない所で、不信感は消えないんだな、コレ。
◇◇◇◇
そのころ、メアとサユはある人物を追いかけていた。追いかけていると言っても、正確には気付かれないように後をつけていると言った方が正しい。
『どこまでいくつもりなのかしら?』
『分かる訳ないわよ。ゲンに頼まれて追っているのでしょう?』
『そうよ。そして、私の意思でもある』
『ふん。相変わらず、ゲンが大好きなこと』
『……セバスの事とプラスして魔素で動けなくなっていたのは何処のお姫様かしら』
僕のダイアの輝きは光となり、魔素を払う力がある。あの時、散布しておいたのが、役に立ったみたいだ。
『後で、ゲンにお礼を言っておく事ね』
『……感謝してる、ありがとう』
いつも、ありがとうとか素直になれないサユ。得にメアの前では尚更。関わりも浅いし、僕を通じての関係性だから、余計に。
『今日の夜は雨が降りそうね』
楽しそうに呟く、メアの姿がそこにある。




