これも一つの個性だよ
繰り返される運命を止める者は誰もいなかった。僕は、今までのこ『繰り返し』を止める事をせずに、傍観していた。それで満足だったし、もしかしたら、誰かが違う道を探し出して、導くかもしれない……そう思ったから、何度も何度も託したんだ。
それが間違いだったとは思わない。僕自身が否定をする事なんてあり得ないんだ。
――だってこのはじまりをつげたのは、他でもない僕とネイだったのだから。
三つ目の能力を開放する。そうやすやすと手の内をさらしたくないんだけど、今は、そうそう渋っている場合じゃないと判断しての事。
この能力は時空の針を止める――簡単に言えば時間と止める能力だ。こうでもしないと、セバスに逃げられる可能性があるから、使った方が話が早いと思った、だから少しだけ……ほんの一瞬だけ解放するんだ。
セバスが気付くかどうかは別としてね。
瞳の奥が赤く光ると能力開放の合図。その能力、一つ一つによって、身体の変化は異なる。僕だけが気付く場合が殆どだけど、この能力だけは他人でもw狩るんだ。
『なっ?』
発動される時に、僕の瞳が赤く光った事に気付いたのだろう。何が起こっているのか、と変化を恐れながらも、体制を整える。
「君らしいね。大丈夫だよ、安心して」
そこの部分だけ、彼に聞こえるように声を張る。そして続きの言葉は他の誰にも聞かせない、僕だけの言葉なんだ。
――すぐ行くから。
心の中での呟きは、現実で声にしなくても、反射的に唇が動いてしまう。彼にも能力があるだろうが、確か、彼には『読み取り』の能力など持ち合わせていなかったはず。
時は止まる。
僕だけを風にのせて。
セバスの元へと運んでくれる。
全ての一瞬、一瞬が、僕だけのもの。
ほんの数秒だけ時間を止め、彼の耳元へと近づくきっかけを作った。逃がさないように抱きしめて、表では、セバスを心配し、闇から取り戻そうとする英雄まがいになるようにね。
「やあ」
『……!! いつの間に』
「今さっきさ。君ともっと、より近づきたいと思ったから、近くに来たんだ」
『何が目的だ?』
「言っただろう? 特別に話してあげるって。その為の演出さ」
『お前と戯れるつもりなどない』
僕はセバスを抱きしめながら、彼の能力の源である魔素を少し吸った。そうすれば、力は少し弱まり、僕の方が有利になる。
勿論、全部食べたりしないよ。だって、彼の中で生成され続けている魔素を取り込んでしまうと、この世界は終わりを告げる――いわゆる崩壊だ。
前回はサユが原因だった。僕はネイを助ける為にサユを見捨てようとした。結末をかえる為に……でも世界は、結局ネイではなくサユを選んだんだ。
僕とネイが始めたはずの遊びだったはずなのに、何度も繰り返していると、ここまで変わってしまった。助けられないのなら、いっそ、全く知らない物語を見てみたいと思うのは、僕の欲求であり、欲望。
「僕達は何度も同じ結末へと辿り着く為にループしている。その事実に気付いているかい?」
そうセバスに問いかけると無言になった。確信はないが、何となく気付いていた――そういう事かな?
僕がする事、出来る事は続きを語る事だけ。
「気付いていても、いなくても、たいした問題ではないからいいんだけどね。今回はこのループをぶった切るつもりだから、君の願いを叶えてあげる事は出来ないんだ。ごめんね」
『遠まわしで言われても、誤解をうみだけ。それを知らないのか』
「誤解とかどうでもいいんだよ。君は君の望む選択をすればいいだけだから……」
『……』
「僕から言える事は、これくらいかな」
僕は人間でもあり、人間とは違う存在にもなれる。だからこそ、魔素を食事とする事も可能だし、普通にご飯を食べても満腹感を得られるんだ。
不思議な体質だけど、ある意味、満足している。
何故かって? だって人と違うって事は個性でもあり、楽しい事だと思うから、これでいいんだ。




