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心臓のない国  作者: 法蓮
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本当の僕

考えなくても勝手に出てくる言葉達。身体に染みついているかのように、毀れる音は、徐々に僕の閉ざされていた記憶をも放出して、脳内によみがえらそうとしている。


能力開放が、記憶を開ける為の『カギ』だなんて考えも、思いもしなかった。駆け巡る濁流(だくりゅう)のように暴れ狂う記憶の渦。全てが治まる頃に、本当の意味で『鏡 ゲン』になれるんだ。


物語のように、続く記憶の欠片が徐々に繋がりながら、一つの物語を作り上げていった。僕は元からスペードの王ではなかった。正確に言えば、忘れ去られた……国から捨てられた子供だった。それが僕の父、国王がお亡くなりになり、世界の均衡が保てなくなった時、僕を探し出した、父の部下達に捕まり、亡き父の代わり、僕がなる事になったんだ。


生憎、僕以外に子供はいなかった。勿論、側室も。生前、父は言ってたらしい。メアからよく聞かされたっけ。


国と、立場のせいで貴方達、親子と添い遂げる事が出来なかったけど、貴方のお父様は、引き裂かれた事により、誰とも婚姻を結ばなかったの、一人の愛する女がいれば、宝があれば、それで構わない、想い人以外とは人生を添い遂げようとは思わない、って断固拒否でね、って、父のイメージをよくするために言っているだけだと思っていたけど、今の僕は、そうは思わない。


覚悟ってこうやって色々乗り越えるからこそ出来るのかもしれない。


閉じられていた瞳は、全ての光を吸収し、本来の自分の姿を現す――そうスペードの王としての僕。


「お待たせ、かなりな時間、眠っていたみたいだね。おはよう、メア」

『本来の自分を取り戻したのね』

「うん。話はあとだ、今はやるべきことがある、そうだよね?」

『ええ』

「じゃ行くよ」


空中に浮かんでいるセバスの元までいくのは簡単な事。僕の第二の能力『浮遊』を使えば簡単だから、勿論、加速も可能。一人ならば飛ぶ事も出来る。さっきはキズナがいたから、書籍のちからを使ったけど、今回は一人だからやりやすい。




浮かぶ体は僕の心。

光るダイアは癒しの素。


魔素(やみ)を払う唯一の手段なのだから。



加速をつけるとあっと言う間にセバスの元へとたどり着いた。


「これで同じ目線だね。どう頭上から人を見下ろすのは、楽しかった?」

『鏡 ゲン、貴様、思い出したか』

「僕の愛するネイを返してくれないかな?」


これは挑発でもありメアとサユから教わった嫌味でもある。ネイ――その名前を吐くと、セバスの表情がみるみると変化していった、まるで魔物のように。


「怖い顔だ、そんなんじゃ彼女、逃げちゃうよ?」

『お前に、ネイを語る資格はない』

「資格はあるよ、彼女の恋人だから、それだけじゃダメかな。君よりは充分な資格だよね」

『黙れ』


僕の言葉は正論しか言わない。でもそれはセバスからしたら認めたくない現実なんだよ。昔からそう、ネイの後ろに隠れながら、僕を見つめてきていたね。羨ましそうに。本当なら自分がネイの傍にいれる存在だと勘違いしてて、あの時から、危ない存在だと思ったんだよ。


道さえ間違わなければ、彼にも光はあったはずなのに、ね。


「今回の悪役は、セバス、君になってしまったね。いくらローテーションだと言っても、残酷だよね。まぁ前回のサユよりはマシかな?」

『何を言っている』

「ふふっ。今は僕と君だけだ。だから特別に話してあげる。この世界について、本当の意味を」


普通に近づいただけでは逃げられるだろう、彼もそこまで馬鹿じゃない、だから僕は自分の解放された能力を堪能するつもりだ。


(久々だからね――加減を間違うかも)


<暴れ過ぎないでね>


(分かってるよ、大丈夫)


メアは本当に心配症だなぁ、僕が目覚めてお腹が空いているからって、彼の闇を食べるまで、切羽詰まってないから、それに僕が彼の闇を食べてしまうと、また最初からになってしまうだろう? 時々はいいじゃないか、違うエンディングがあったとしても。

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