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本の翼

本は密集して羽へと変化する。僕の想いのままに動く本たち(それ)は、真っすぐに目的地へと飛んでいく。どこまでも果てない心の翼は僕の勲章そのもの。


「キズナ、大丈夫?」


僕は、天空へと繋がっているこの黒い渦を過去にも見た事がある。どうしてだろう、自分にこんなちからがあるなんて知らないはずなのに、どうしてだか、身体の中で隠れている、本当の自分が僕を本来の道へと運んでくれる。


『大丈夫……です。ゲン様、これは一体?』

「僕にも分からないけど、スペードの立場ある者達は、特殊能力を持っているみただ。多分、これが僕の一つ目のちからだと思う」

『一つ目!? と言う事は、まだあるのですか?』

「……みたいだよ、メアが言うにはね」

『貴方様は一体……』

「僕は鏡 ゲン。それ以上でも、それ以下でもないよ」


にっこりしながら、そう語ると、納得できないといった表情(かお)を見せるが、今は納得してもらうしかなかった。


自分の中でも、感覚でしている事だから、どうしてこんな事が出来るのか、とかそんな細かい事を説明できる頭もないし、どちらにせよ、分からないものは分からない。


「サユはあの渦の中心にいるみたいだ。いくよキズナ、捕まって」


加速、加速、加速、ここまでかって言う位に飛ばす僕の羽。このままどこにでも飛んでいけそうな気分になりそうになるけど、今、向かう目的地はただ一つ。


『ゲン様…早すぎます』

「文句は本たちに言って。僕はただ念じているだけだから」

『それは本たちに言うのでは解決しないですよね、やはりゲン様がどうにかしないと』

「急いでいるんだろう? なら口はチャックだ」


まるで自分のキャラも別人になった気分だ。今ならなんにでもなれる、そんな気がするんだ。



飛ぶは翼

僕の心

君の涙


そうやって本当の物語へと足を踏み込んでいく。

それが僕の宿命なのかもしれない。



いつの間にか周りの民衆(みんな)の様子が変わってきた。黒い渦の影響なのか、セバスの言霊の影響なのか……両方の影響かもしれない。


心臓の持たないこの国の人達は、黒い霧に包まれながら、苦しみ、もがき始めた。


『何をしたの……セバス』

『サユ、お前に告げる事は何もない』

『……本性を出した訳ね~。サユちゃんも可哀そう、ずっと信じてたのでしょう? 彼の事』


メアはまるでセバスを知っているような口調で、サユを挑発する。まるでサユの心の中に隠している思いを表へと引きずり出すように……


『メア……貴女、何か知っているの?』

『知っていると言えば知っているわね。でも一番知っているのはセバスさんではないのかしら?』


メアはウィンクをしながら、右手の中指で、セバスを指した。


『貴方の心は複雑ね、隠すのが苦しくなって逃げた、結末って事かしら?』

『何を言っている』


サユに対して挑発していたはずなのに、いつの間にかセバスに攻撃を向けている。


『私の能力の一つは人の心を読む事よ、だから貴方のしでかした過去の事も全て把握しているわ。正直、彼女がその真実を知ってしまったら、どうなるのかしらね』


『……』


『語る口はないのかしら……それとも私じゃ不服って訳ね。大丈夫よ、セバス、安心しなさい。もう少しで貴方と対等に話せる人が着くはずだから』


『そんな者はいない』


メアはサユとセバス、二人に語り始めた。スペードとダイアは元は一つの世界だった。


「セバス、待たせたね」


『サユ様、無事ですか?』




僕が意識を緩めると、本は自由に形を元に戻す。本来の姿へと戻った彼等は、自分の居場所へと舞い戻っていく。


僕達を残して――そこには変わり果てたセバスの姿があった。

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