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心臓のない国  作者: 法蓮
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雄たけび

少しの情報しか知らないけど、僕とサユにとって黒真珠(くろしんじゅ)が危険なものってのは把握した。だけど、サユ達からしたらどう転ぶか分からないみたいだし、ダイアの国にとっては幸福を象徴するお守りみたい。


だから僕はメアの指示通りにし、様子を見る事にしたんだ。


急に、それは危ないものだからとサユ達に告げても、不思議がられるだろうし、理由も言わなくてはいけない。それに、セバスがお守りとして渡したのが純粋な気持ちからだと信じたい部分もあるんだ。


『しかし、黒真珠とはいきなものね』

『ええ、そうですね。私も初めて見ました』

『セバスらしいっちゃらしいけど、何処で見つけてきたのかしら?』

『セバス様の事ですから、きっと色々お調べになり、今日に備えてくれたのでしょう』


サユとキズナは微笑みながら、語り続けてみる。尚更水を差せる訳なんて出来ないよ。


だから僕は、二人の気持ちを汲んで、今思いつく最善の言葉をプレゼントするんだ。


「――よかったね、二人共」

するとサユは素直になれないのか、僕の言葉にそっけなくも、ええとだけ返事をする。キズナは穏やかな表情(かお)で僕の言葉を嬉しく思ってくれたみたいで、一安心。


(このまま、何もなければいいけど)


その想いが引き金に繋がらなければいいんだけど――そうはいかないのが現実。


気を抜くと暗くなりそうな表情を抑えて、なるべく明るくしようと努力しているけど、勘づかれてないか不安だ。


『お祭りと聞きましたが、何があるの?』


僕の気持ちを察して、流れを変えてくれたのはメアだった。


『そうねぇ~』


うーんと顎に右手の人差し指を沿え、考えるポーズをとるサユはいつもに増してはしゃいでいるようだ。なんだか内面から楽しみだ、ってプンプン滲み出てるんだよな。


そう考えるとサユにも可愛いところがあるんだよね。


ハッと我に返ると、いつの間にかサユに見とれていた事に気付いた。気まずくなったから、うんうんと頷いてはみせたが、誤魔化(ごまか)せたかはわかんないや。


考え込むサユからは続きの言葉がなかなか出てこない、だから代わりにキズナが説明を始めたんだ。


『一番は民達も参加できるパレードですかね。今日はオープンですので、自由参加になっているんです。この日の為に、何か月も練習して備える方もおいでますし、皆さん、それだけ力を入れているんですよ。ですよね? サユ様』


ナイスフォローだよ、果たしてサユはフォローしてもらった事に気付くのかな?


『ええ、そうね。キズナの言う通りよ』


さも自分が伝えたかのように、傲慢(ごうまん)な態度になるのはいかがなものかと思う。


こうとでもしないと、サユから話が進まないと考えていたキズナはいつも通りの行動をして、サユの機嫌を伺っている。どこまで忠実なんだろうかと、(ほう)けてしまう。


僕もメアにサポートしてもらっているから人の事言えないんだけどね。


『それは楽しそうね。ねぇ、ゲン?』

「そうだね、メア。今日は皆で楽しもう」


不安な気持ちは風がどこかへ連れていってくれたみたいで、残ったのは沢山の笑顔達。そりゃ不安や迷いはあるさ。だけど、現在(いま)僕達が出来る事は沢山あると思うから、目の前にある事を消化しながら、楽しもうと思う。


「行こうか」

『『『うん』』』


いつも敬語を使うキズナでさえ、子供っぽく感じるのは何故だろう?――


◇◇◇◇


サユ様だ、サユ様が来られている、と民衆がわっと騒ぎ出す。でもきちんと教育がされているからだろうか、囲む事はしてこない。どちらかというと遠巻きで見ていると言った感じだ。


民衆の言葉と喜びに気をよくしたサユは、出来るだけ大きな声で叫ぶ。


『皆、今日は楽しみましょう。素敵な一日にするわよ』


サユがそう告げると、ワンテンポ遅れて、おぉおおおと歓喜の声が舞い踊る。


これがサユの住む世界であり、国なんだと、改めて感じた。


僕も民衆に混ざって、雄たけびをあげてみたりしたんだけど、すぐメアに止められたよね。


「いいじゃん、少しくらい」

『ゲン。貴方も一応立場があるのだから……考えなさい』

「ちえっ。分かったよ」


ワクワクしている心を止める事なんて出来ない――例え、その裏に不安という闇が潜んでいても。

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