表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心臓のない国  作者: 法蓮
35/53

序章の終わり

『面白くないのではありませんか?』

『何が?』

『メアが現れてからため息が多くなったような気がしたので……』

『そう? 考えすぎじゃないの?』


軽く、緩くかわそうと考えていたサユは溜息を吐きながら、右手をひらひらしていた。あり得ないと言わんばかりの態度に、キズナが物申す。


『私は今までサユ様を見てきました。だから余計に理解出来ます』


意気込んで話すキズナをよそに、サユは上の空。いくら仲良くなったからと言っても、僕とメアがキスをした事実が消える事はないから、余計に考え込んでいるようだった。


サユにはセバスという婚約者がいるはずなのに、どうしてだか僕の存在をおろそかに、無視出来ないみたいだ。何故だか分からないけど、記憶のネガが原因なのかもしれない。


『……何が理解出来るというの?』


ポツリと(こぼ)れるのはサユの本音そのもの。何が言いたいのか、本当の意味で理解していないキズナは驚きの言葉を口にするんだ。


『ゲン様の事を愛しているのでしょう?』

『っ!? キズナ自分が何言っているのか、分かってる?』


吹き出しそうになりつつも、少しは当たっているな、そう感じながらも、自分の気持ちに気付かないフリをしている。


少しは正解、でも大半は不正解――それが事実なのは変わりがない。


サユは心の中で呟く、また同じ事を繰り返してしまうのか……と、そしてメアのあの姿を見て、驚いた部分もあった。


あの姿はサユの借りの姿でもあったのだから、メアがそれを使っているという事は、記憶が書き換えられているという事。だからこそ、あの姿を見た時、キズナはメアに反応をした。同じ事を繰り返す為に、わざと用意された偽りの記憶にしか過ぎないのに、それに気付いているのはサユのみ。


『そんな簡単なものじゃないわ。愛しているとかそういうのだったら、どれだけ楽か』


ポツリと呟いてしまった後に我に返る。言ってはいけない言葉だと実感しつつも、止める事が出来なかった自分の弱さが歯痒(はがゆ)い。


『そんなたいした事じゃないから、安心しなさい。キズナ、貴女に心配は似合わない』


フッと微笑むと、ゆっくりとキズナに近づいていく。そして(いつく)しむように抱きしめた。


『いつもありがとう』


それはサユの素直なキズナに対しての感謝の心。いつもならこんな事、言わないし、行動もしない別人みたいなサユを()の当たりにしても、驚く事のないキズナ。


『それはこちらの台詞ですよ』


穏やかなアルビノ色の瞳がサユを捉えると、サユの頭を撫でた。抱きしめられたキズナは、これ以上聞いてはいけないと判断し、感情を抑え込むように、伏し目がちになる。


当たり前の環境の中で、人との温もりを感じる事が少なくなった世の中で、僕達は凄く恵まれていて、幸福なんだと思いながらも、沢山の想いを胸に、仕舞い込んでいく……



◇◇◇◇



もう少しだ、もう少しでショーが始まる。俺はニヤリと(わら)いながら、これから起こる事を考え、身震いをしながら、喜んでいる。


セイは所詮(しょせん)、使い捨ての駒でしかない。ある程度までは部下として置いておけるが、それ以上になると危ないだろう。俺が何を企んでいるのか、全部を知っている訳でもない彼を、手元に置いていくのを躊躇(ためら)いながらも洗脳(せんのう)をし続けた結果、徐々にではあるが、俺にとってプラスの方向に転ぼうとしている。


(まぁ……今はその時期ではない。使い方次第と言う訳だな……)


心の呟きは荒れる天候のように、黒く染まり、渦を発生させる。

まるで、序章の終わりのように――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ