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心臓のない国  作者: 法蓮
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メア急接近

言霊の力がどんなものなのか、スペードの国がどんな国だった(・・・)のか、考えても分からないから、身体で感じるように行動をしようと思う。意識的に考えたり、義務として見るのではなくて、感覚の中で流れを受け入れようと思うんだ。


それが正しいのか、不正解なのか分からないけれど、自分の運命を無理矢理切り開くよりは、全然いいと考えた結果だった。


あの日以来、キズナには断りを入れた。起こすのは大丈夫だから、自分で起きると。時間も分からずに起きるのかと聞かれたが、メアの言う通りに、時空時計の事を話すと納得したようだ。


少し寂しそうに見えたのは仕方がないけど。


ほらあるじゃない? 起きれない子供を起こす親心というか、そんな感じだったんじゃないかな。


そう考えると、僕ってそんなに子供っぽいのかな? 時間が分からないから仕方なかったけど、メアから貰った時空時計なら時間の経過をきちんと把握できると聞かされた。表は自分で起きると言っているけど、本当の事を言うとメアに起こしてもらう事になったんだ。


言霊のちからを持つスペードの民の一人として、提案してきたメア。


勿論『側近』という立場もあるかもしれないけど、それだけで行動はしないと思う。僕はメアの事を知らない、メアは色々なヒントを与えてくれるけど、決して答えは言わなかった。


『きっと分かりますよ』


そのセリフを昔も何度も聞いた事があるような気がした。気のせいなのか過去のネガが原因なのか、自分でも分からなくなっていた。


僕は、毎日メアの部屋へ行くようになった。表は読書をする為、読み書きが苦手だから彼女に教えてもらうとサユ達には伝えてある。


事実は事実だけど、同じ空間の中で、表の会話とダイアの中での会話を平行させるための訓練をする時間でもあるんだ。


決してサユとキズナを仲間外れにしている訳ではない。僕は僕なりに自分で考えた結果、こうなっただけだから。


『今日はどの本を読みたいのですか?』

「うーん。わくわくするような本がいいかな?」

『それならコレ(・・)はどうでしょうか?』


タイトル 『女王の涙』

著者   蓮人


「女王の涙? どんな話なのかな?」

『それは読んでみてのお楽しみ』


ふふっ、と微笑むメアを見ていると、なんだか母親に教えられているような気分になって、恥ずかしくなる。僕にもきっと親がいるんだろうな、と考えると寂しさと切なさで胸が苦しくなるけど、メアの微笑みが支えてくれている。


紛らわすように、僕は問いかけた。


「蓮に人で、これ何て読むの?」

『そのままの呼び名でいいですよ』

「はずびと?」

『ええ、そうです。レントとはハストとか色々読み間違える人が多いのですが、正式名称(せいしきめいしょう)は『はすびと』です。この方の作品は面白くもあり、切なくもあるので、オススメの著者(ちょしゃ)なのですよ』


いつもよりも楽しそうに語るメアを見ていると、本当に書籍が好きなんだなと感じた。瞳はキラキラ輝いていて、頬は緩みっぱなし、意地悪な事、嫌味を言う時の怪しい微笑みは、そこにはなくて、素直な表情をしているメアがいる。


こういう所サユと似ているのかもしれない――素直になれないというか、なり切れていないというか。


なんて表現したらいいのか不明だけど、そういう事。


自分で悩んでおいて、自分で結末をつけ、サッとなかった事にする。ある意味、強いのかもしれない。


(こんなメアを見たのは初めて。可愛いな)


そう心の中で呟くと、ダイアを通して繋がっている事を忘れていた僕は、彼女の呟きで、我に返る。


『聞こえてますよ』

「えっ」


なんの事を指摘しているのかと急に言われて、アタフタしていると心の呟きが返ってきたんだ。


<繋がっている事をお忘れですか? 聞こえてるよ>

(!! あ)

<今、思い出した?>


『つっ……』


こんなの反則だ、優しい微笑みとうっとりするような甘い声。

僕は赤面から逃げれない状況へと堕ちていった。

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