助かったけど……これでいいの?
キズナとサユはどうしてだか話が通じ合うみたいで、僕だけがのけ者になっているように思えた。二人は全く気付かない僕を見ると、同じタイミングで溜息を吐いた。
『ここまで鈍いとは……』
『……キズナでさえ気づいたのに、あんたは気付かない訳ね』
呼び捨てからあんたへと格下げされた僕の名前、どうして二人がそんな事を言っているのか分かる訳じゃないか。ちゃんと言ってくれた訳でもないし、はっきり言わないと僕には伝わらないよ? 自分で言うのもなんだけど、鋭い方ではないと思うから……決して自分では鈍い、なんて認めないのが僕のスタンスなんだ。
「ちゃんと言ってくれないと分かる訳ないでしょ? 僕、鈍いとは思わないけど、鋭い方ではないから」
『……そういう発言をするところが鈍いと思います』
哀れそうに見つめてくるキズナの視線が凄く、痛い。痛すぎて、身体に穴が開いてしまいそうだ。
『もういいわ、キズナ。こんな鈍感で空気も読めない、女心にも気付けない人に何言っても変わらないわ。一方通行よ』
『しかし、サユ様』
『いいの、あたしがどうかしてたわ。たかがゲンの為に泣くなんて、どうかしてた。気分的にも最悪だし、本当どうしようもないわ』
二人の会話はどんどん加速していく。そこに僕が入り込むスペースなんてありはしない。意識的にか無意識かは分からないけど、少しの隙間も作らないように、がっちり言葉の壁で守っている。
これがいわゆる女子会の闇なのか――そう思うと女性恐怖症になりそうな自分がいた。
◇◇◇◇
メアがいる時よりも話が落ち着いたかに見えた。案著する僕の内心を裏切ってくれるのはメアの登場だったんだ。
『ゲン様、おかえりが遅いので迎えに来ましたよ』
「メア……どうして」
居場所が分かったのと言いたいけど、僕はメアの方に振り向いたので、背中にはキズナとサユがいる。そして凄く視線が痛い、ピリピリしてる、しすぎてて、硬直してしまいそうになるよ。
『私とゲン様は離れる事が出来ない存在。少し、空気を呼んでサユ様に譲ったのですが、時間を有効活用される事もしなかったみたいですし、少し期待してましたのに』
「メア、口をつつしんで」
『あら。すみません』
さすがにやばいと思うよ。メアの発言は挑発的で、挑戦的だから、サユ達は気分を害するのが確実だ。だからここは男の威厳でも見せてやろうと思ったんだ。
『相変わらずですね。メア様。それ以上言うと、サユ様が泣いてしまいますので、それ位にしてくれませんか?』
『え~。これからが面白いのに』
キズナの出した提案が不服なのか、意地悪げに、微笑みながら、嫌味ともとれる発言をしている。サユは気付かないだろうが、キズナは気づくだろう。
(てか……二人は知り合いなの?)
メアの名前を知っているのは勿論、会話を聞いていると、どうしても初対面に思えなかった。だから聞いてみたんだ。
「キズナとメアは知り合いなの?」
嬉しそうなメアと、うんざりしているキズナが対照的で少し面白く思えた。勿論、内緒だけどね。そんな事を言うと、またサユに怒られそうだし、敵を増殖してしまいそうで、怖いし。
『知り合いというよりは顔見知り程度ですよ』
キズナがそう呟くと、納得してないメアが反論する。
『何言ってるの? キズナ。私達の仲でしょう?』
まるでじゃれあっているみたいだ――
その様子を見つめるのは僕とサユ。僕達が話の中心だったのに、いつの間にかメアとキズナが話の中心になっている。移り変わってくれた話題に感謝したいけど、サユからしたら納得できないだろう、僕も同じだからさ。
『――誤解されたくないので、口を謹んでくれませんか?』
『照れちゃって……あの夜は激しかったわね、覚えているキズナ?』
『冗談を言う暇があるなら、貴女の作った、この居心地の悪い空気をなんとかしてくれませんか?』
『え~。相変わらずカタブツなんだから。もっと緩くしないと楽しくないわよ? ね、ゲン様』
「『……あの』」
僕とサユは盛り上がる二人に声をかけると、存在感がありすぎな二人がクルリと振り向きながら、笑みを浮かべた。
『『何か?』』
「……」
『……』
そうしていつの間にか話は段々と逸れていったんだ――




