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心臓のない国  作者: 法蓮
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本当の意味の恐ろしさ

キズナは研究気質みたいだ。僕の生体を調べつくしたいのか色々な実験まがいな事をさせられた。逆さづりにされたり、二日間絶食させられたり、紅茶を注ぐほど飲まされたり、だから今回もそのたぐいだと思っていたけど違ったみたいだ。


「これは?」


僕の目の前には大きな古い機械の装置がある。中には何か液体のようなものを入れているみたいだ。まさかとは思うけど――この中に閉じ込めるつもりじゃないよね。


嫌な予感がした僕はキズナに聞いてみる事にした。


「ねぇ聞いていい?」

『はい、なんでしょう?』

「まさか……とは思うけど、この中に僕を…」


僕の続きの言葉を掻き消すように、嬉しそうな口調で言い切る。


『入れますよ、入れないと調べれませんから』

「――はぁ?」


ちょちょ、ちょっと待って――この中に閉じ込めて何をするつもりなの? てか呼吸とか出来るの?


今までの変な実験みたいな研究を思い出すと、胃がキリキリと痛み始めた。緊張というよりは、恐怖を感じて反応しているみたい。


『大丈夫ですよ。息は出来ますから』

「息は?」

『心配しなくても大丈夫ですって』


それ答えになってないし、余計不安をあおるだけなんですけど、そう言いたいけど、キズナの威圧感に負けそうな僕は言えないまま、言いなりになるしかないみたいだ。


多分だけど、何を言っても、大丈夫ですから、で終わりそうだし、何か楽しんでいるような……



頭の弱い自分の脳みそをフルパワーで使っても、彼女の考えている事には到底追いつけないよな……それもキズナってこんなキャラだったっけ?


いつも冷静沈着、無表情で何を考えているのか分からない。そしてあの、じゃじゃ馬のサユまでをも泣かせてしまう鋼鉄の心の持ち主。うーん、そもそも考えながら行動しているのかも分からなくなってきた。


「いやいや、心配になるよ。不安になるよ」


試しに言ってみた。返ってくる言葉は想像がつくけど。


『大丈夫ですから』


ほら――きたでしょ? そう返ってくると思ってた。むしろ、それしか思いつかない、考えれないから。


(……あれ?)


今までの記憶の中でキズナは確かに冷静沈着というか、無表情で表に感情を出していない。でもさ、僕が眠っている間、メアリーと話してる間の会話を聞いていた時は、違ったよね、確か。


あの声のトーンはサユとキズナだった。僕の知らない微笑んでいる、楽しそうな話し方をしている彼女の声を聞いていたんだった! という事は? 


――これは猫被ってるだけだ。


問いただしたい衝動に駆られるが、冷静な自分が天使の自分が、止めてくる。嫌な予感しかしないから黙っておく事にしとこう。


(それがいい……)


『さぁ、お入りください。ゲン様』


怖いよ、キズナ。表情変えず、声だけ変えるとか高等テクニックの所持者だ。


本当の意味でキズナの恐怖を知る事になったんだ。


震える事しか出来ない身体を支えながら、彼女の指示通りに動く僕がいる……

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