原動力
ダイアは僕からしたら『心臓』だ。この国では心臓と見える訳ではなく輝く複数の色のダイアに見えるようだ。
ガラガラと門を押し開けると、大きな古びた《《屋敷》》が姿を現し、招き入れる。
(凄く不気味なんだけど、大丈夫かな?)
不安で胸いっぱいな僕の心境を知ってか、キズナは『大丈夫ですよ』と言葉で不安を掻き消そうとしている。心の呟きなのに、僕ってば、そんなに表情に出てたかな?
『――どうぞお入りください』
事務的に話すキズナはまるでロボットのように、対応する。んー、ロボットというより『アンドロイド』の方が正しいかもしれない。
不思議に思った僕は、失礼になるかもしれないと思いながらも、聞いてみる事にしたんだ。
「キズナは……人間だよね?」
『はい、それがどうかしましたか?』
「僕には心臓あるけど、キズナ達はないの?」
『ええ』
「えっ……じゃあ、どうやって生きているの?」
『…不思議な事をお聞きになりますね。いいでしょう。何も知らないみたいですし教えて差し上げます』
僕からしたら心臓、キズナ達からしたらダイアと呼ばれているけど、どうして僕にはあってキズナ達にはないのか不思議でたまらない。
その疑問を解消してくれるのはキズナの言葉達なんだけどさ。
(複雑だなぁ)
見た目、何も変わらない僕とキズナ達。身体の仕組みや構造は違うみたいだけど、どうやって呼吸をして、心臓の代わりに何を原動力にしているのだろう。
大きく息を吸い込み、呼吸を整える僕。対照的に落ち着いた様子で待ち続けているキズナ。彼女の瞳の奥に獣が住んでいるような刃を見た気がした。
それは本能的に感じる恐怖なのかもしれない――
『私達の研究ではダイアを持つ人間と、持たない人間の構造はダイアを所持しているか、否かだけで、他は何の代わりもありません』
「そうなのかい?」
一呼吸置きながら、再び話す。
『ええ。ゲン様がおっしゃる通り『原動力』として動いているものは違います。貴方はダイア、そして私達は夢なのです』
「夢って…あの夢?」
『夢は夢です。他の何かでもありません』
簡単な話にして説明してくれる内容は驚くものだった。僕達は身体の一部として心臓があるのに対し、彼女達は、夢とリンクしているとの事だ。一瞬、どういう事だろう? って不思議な表情しちゃったけど、分かりやすい説明で、なんとなく理解出来たと思う。
要するにバクのような原理らしい。他の人間の見た夢を原動力にし、自分の命と繋げて動いている。夢を見る頻度は、人によって違うが、ローテーションに近いので、共有して食べているみたいなんだ。それが命の炎の代わりなんて、驚いちゃうよね。
『どうしました?』
語り終えたキズナは思考が追い付かず固まっている僕をジロリと見ながら、不思議そうに首を傾ける。まるで操り人形のようで、本当に人間なのだろうかと、恐れてしまう。
だけど、キズナはキズナだから、それだけで決めつけたりしないし、拒否したりもしない。
だって、心臓のない国で最初に僕の存在を肯定してくれた人だから……




