3、男の友情物語
学校の敷地内にある寮にきた。
今まで親と一緒に住んでいたので一人暮らしというのはあこがれていた。まぁ学校の寮なので誰かと同室になるし一人暮らしってわけではないのだが。自分だけのものというのを持っていたことが少なかったのですごくうれしい。
しかし、そんなうれしさも吹き飛ぶほど怖いことがある。
それは寮で同室になった同じクラスの人のことだ。
そいつの名前は神谷レオというのだがレオは俺が教室に入ってきたとき、睨んできた人の一人だ。
それだけじゃない。アリス先生が色々話しているときもこちらの方をガン見してくるのだ。断じて俺の気のせいではない。先生が話している間すごく視線を感じるので思わず振り返ってみたらレオと目が合ったのだ。目が合ったということは俺のことを見ていたということだろう。しかしなぜそんな俺のことを見てくるのだろう。
顔になんかついてるのかと思って休憩時間に鏡を見に行ってみたが特に何も問題はなかった。
ついに来た。さすがに寮なので門限というものがある。消灯時間というものもある。
そろそろ部屋に入らないとまずいだろう。ちなみに同室のレオはもう部屋にいるらしい。
「おーい、そろそろ部屋に入れよー!」
アリス先生が言った。やばい、注意されてしまった。
そろそろ入らなくては。…しかし、なぜここは男子寮なのにアリス先生がいるのだろうか。
まぁいい、とりあえず目の前の問題を片付けなくては。
意を決して部屋の中に入る。入った瞬間目の前が真っ暗になる。
電気が消されているのでレオはもう寝ているらしい。よかった。起きてたら話すことがなくて気まずいもんな。
と思ったらベッドの上に奴はいた。暗闇の中スマホの画面だけが光っている。その光がレオの顔にあたっていて幽霊に見えてしまった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
驚いて声を上げた。
レオが迷惑そうにこちらを見る。
「ご、ごめん。ところでなんで電気つけないの?目が悪くなるよ」
お母さんのようなセリフを口にしてしまった。
「はぁ?お前になんか関係ある?めんどくさいからつけてないとかそういう理由じゃねえから!」
…これは軽いツンデレ入ってるな。レオのこの一声で悟ってしまった。そう思うとセリフの前半もか
わいく思えてくる。ついほほえましくてニヤニヤしてしまった。
「何?気持ち悪いんだけど。早く電気つけて寝ろよ。ちなみに電気は俺がつけてほしいって思ってるわけじゃねえから。勘違いすんなよ!」
なんとなくだけどレオとは仲良くできそうだ。
朝になった。昨日は色々ありすぎて興奮して全然眠れなかった。電気がついていたからまぶしくてねられなかったわけではない。断じてない。
ちなみにレオは夜の間ずっと携帯をいじっていたらしい。俺が寝ようとする前から態勢が変わっていない。そんなに楽しいのだろうか。
俺が引きこもりの時はPCばかりいじっていたので携帯はまだほとんど触ったことがない。携帯の方が楽しいのだろうか。
身支度を済ませて食堂に行く。部屋を出る前にレオに声をかけた。
「俺、食堂行ってくるから」
「……ん」
無視されると思ったが返事されたことに驚いた。まぁいいや。まだ始まったばかりだしこれから仲よくすればいい。食堂に行くとあまり人がいなかった。
おばちゃんに朝ご飯をもらい、席につく。
と同時にレオが食堂に入ってきた。
レオも朝ご飯をもらって席に着く。俺の向かい側の席に。
「なんで俺の向かいに来るんだよ。ほかにも席たくさん空いてるだろ。」
「…お前に興味があるから。あ、お前と仲良くしたいとかそういうんじゃないからな?」
やはり、レオはツンデレらしい。しかし、何を話そうか。レオは俺に興味があるといいながら話しかけようとするそぶりはない。うーん…じゃあ夜の間携帯で何をしていたのか聞いてみよう。すごく気になるし。
「ねぇ、携帯で何してるんだ?ゲームか?面白いものあったら俺に教えてくれないか?俺もレオに興味があるから知りたいんだ。」
そう言った瞬間、レオの顔がみるみる赤くなった。
ん?なんか俺変なこと言ったか?レオが口を開く。
「ゲームだよ、FPSの類だが。知ってるか?」
そういって画面を見せられたがよくわからない。なんか銃をもってる人がいるのは見えるが。
「知らないのか、まずFPSってなんだか知ってるか?ファーストパーソン・シューティングゲームの略なんだけど。その顔じゃ知らなそうだな。教えてやるよ」
急に饒舌になった。
いつもは不愛想なのに自分の好きなことについてはすごく話し始める類のやつか。
「まずFPSは一人称視点のゲームだ。ゲーム内の世界を任意で移動することができる3Dのアクションシューティングゲームっていえばわかるか?FPSの特徴としてはすごくリアルにつくられていてほかのゲームみたいに体力があれば何発ダメージ食らっても大丈夫とかそういうわけではなく2,3発撃たれただけで死んでしまうというのが一番の特徴だ。現実でも銃弾2,3発当たったら死ぬだろ?そんだけリアルにつくられているってことなんだよ。」
この間わずか40秒程度。こんなすらすら言葉が出てくるなんて本当に好きなんだな。
わかりやすい説明だったし。やりたくなってきた。
「大体わかった。ありがとレオ。それって携帯さえあればできるのか?」
「うーん、できるっちゃできるけどスペックが足りないから熱暴走起こしたりしがちだからやるならパソコンの方がいいよ。おれは専用パソコン買うようなお金がないから携帯でやってるだけなんだけどね。そういうこと聞くってことはやりたくなってきたのか?一緒にやろうぜ。携帯買ったらやろうな。」
「わかった、約束な。」
そう約束したところで朝ご飯を食べ終わったので片付けに行く。レオと話すとすごく楽しいな。最初は怖かったが話してみれば案外面白いんだな。すぐに仲良くなれそうだ。
部屋に戻り学校に行く準備をする。まだ入学式から1日しかたっていないので授業はない。
中身がほとんどない鞄を持ち準備完了だ。
「おーい、俺もう行くぞ」
レオがそう声をかけてきた。さっき、朝ご飯を食べる前はあいつの方が遅かったのに。つかなんか昨日よりもすごく俺への好感度高くなってないか?昨日は全然だったのに。すごく猫みたいだな。俺の主観だけど。
「うん、今行くー」
レオは玄関で待っててくれた。
「早くしろよ」
「ごめんごめん」
なんだかんだ言いつつ待ってくれるので優しいと思う。
教室についた。やっぱりAクラスだというのは変わらないようだ。
ところで今ふと思ったのだが俺の幼馴染のナナはどこなんだろうか。副会長の話によると入学してるしトップ成績だったらしいが、トップならAクラスに入っていてもおかしくないのにAクラスにはいないみたいだ。
まぁいい。時期にわかるだろう。
次は実力測定です。