第5話
とある建物の一室で2人の男が向かい合って座っていた。
1人は銀髪銀眼で黒のローブを着ている青年。
もう1人は目の前に杖をついて、顎鬚を蓄え、真っ白い白髪を後ろで結わえている老人である。
2人は何やら難しい顔をして向かい合っていた。
「それではユーリ殿、此度の件、調査報告を聞かせてもらえるか。」
ユーリの目の前に座る老人はテーブルに置かれた紅茶を一口飲んでからそう言った。
「わかりました。ギルドマスターに言われた通り魔の森での調査をした結果30~50匹程度で構成されているゴブリンのコロニーをいくつか発見、これを殲滅しました。」
ユーリの報告にギルドマスターと呼ばれた老人は難しい顔をする。
しかし、そんなギルドマスターの様子を気にもせずユーリは続けた。
「これについて奇妙な点がいくつかあります。」
ギルドマスターはその言葉に眉をピクリと動かした。
「ほう。奇妙な点とは?」
射貫くような視線がユーリを捉える。
「まず、30匹以上のコロニーには少なくとも何匹かはそれを統率する形で上位個体がいるはずですがコロニーはすべてゴブリンで構成されていました。にもかかわらず彼らは統率された動きをしていた。
また、コロニーの周辺を調べましたが奴らが生活をしてきた後、食料の残りかすや糞尿などが無かった。あの数の群れが飲まず食わずで増殖・・・なんて話はあり得ない。そして極めつけはティア達・・今は下にいるが彼女たちが遭遇したウルフ系の群れだな。」
ユーリの報告を聞きギルドマスターは目を閉じて一呼吸するとまた眼を開いた。
「やはり決まりか・・・」
「うちのシャルもそう言っていた。まず間違いはないだろう。」
「もはやこれは我々の範疇を超えておる。王に報告するのが得策だろう。」
そう言ってギルドマスターは机の上の呼び鈴を鳴らした。
するとすぐに二人の居る部屋のドアをノックする音がした。
「入れ」
ギルドマスターが短く言うと眼鏡をかけた清潔感のある青年が部屋の中に入る。
「何かありましたか?」
「火急である。直ちに王城へ行き面会の許可を取って参れ。」
ギルドマスターがそう言うと青年は一礼をして部屋から出ていった。
「彼も殊勝な人間だな。」
青年とギルドマスターのやり取りを見ていたユーリが呟く。
それを聞いたギルドマスターは
「うむ。あ奴は文句も言わずによく働てくれるでな感謝しとるよ。それよりも面会はおぬしも参加してくれるか?」
「俺もか?別にかまわないが・・・・・そういう事か。分かった。日取りが決まり次第教えてくれ。」
「迷惑をかける。使いの者をよこそう。長い間済まなかったな。」
「いや、これも仕事だからな。じゃあこれで俺はいく。」
そう言ってユーリは立ち上がりドアの取っ手を持った。
その瞬間反対側から勢いよくドアが開き
ドン
とドアがユーリに衝突した。
「いってぇ!!!誰だよ!!!」
ユーリは頭を押さえながらドアの方を見る。
するとそこには必死の形相のティアが肩で息をして立っていた。
「お前一体なn「助けてください!!!大変なんです!!」・・・・・」
ユーリの言葉を遮るようにティアは叫ぶ。そのあまりにも必死な様子にただ事ではないとユーリは感じた。
「何があった?」
「とにかく来てください!!」
そう言ってティアはユーリを引っ張り階段を下りていく。
するとユーリは下の階がやけに静かなことに気が付く。この建物、冒険者ギルドは常に多くの人が出入りをしていて、活気があると言えば聞こえはいいがまぁとにかくうるさいのだ。そんなギルドの中が妙な静寂に包まれているのはおかしい、とユーリは心の中で思った。
ユーリはよほどのことが起きたのだと真剣な顔になる。そして、ティアが一階の扉を開ける。
すると
ギルドの真ん中でにらみ合う狼の獣人と猫の獣人の姿がユーリの目に飛び込んできた。
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