序章
ズドーン ズドーン
大きな音が木々が生い茂る森を震わせる。この大きな音が鳴り振動が辺りに届くたびに、鳥たちが鳴きながら逃げ出し、森に住む動物たちは爆音のする方とは反対の方向にあわただしく逃げている。
音源は森の中央部。
そこでは1人の人間が、緑色をした人型の生物の群れと戦っていた。
「ツっ!相も変わらずわんさかと!」
「文句を言うな、ユーリ!!」
そういって緑色の生物、ゴブリンが固まっているところに飛び込みどこからともなく取り出した、刀身から柄まで真っ白な剣を横なぎに振る。
するとそこにいた数十匹のゴブリン達はすべて首と胴体がはなれその場に倒れる。
「ふ~。おーい!!こっちは終わったぞ!」
そう言って叫ぶのは先ほどユーリと言われた黒のローブを着た、銀髪銀眼の少年である。雪のように白い肌にぱっちりとした眼、その見た目はまさに物語の中から出てきたようである。
そんな彼は、先ほど倒したゴブリンの死体に近づきその体を解体し始めた。
「うぇ~、この作業だけは好きになれないな」
顔をしかめながらそんなことを呟いていると、
「仕方がないだろう。魔石を取らないと後がめんどくさいからな。」
ユーリの後ろから白のローブを着た背の高い男が話しかける。
「シャルか。そっちも終わった感じだな。」
「ああ。解体も問題なく終了した。」
「マジですか・・・なぁ「自分でやれ。」・・わかったよ、はぁ~」
解体を頼もうとしたユーリだがシャルと呼ばれた青年に断られ再びため息をつく。シャルは髪と眼の色が緑色、白い肌で背が高く、知的な雰囲気を醸し出していて、こちらもユーリに負けず劣らずのイケメンである。そして彼にはもう一つ特徴がある。それは、彼の耳がとがっているという事である。彼はエルフ族なのだ。
シャルはあたりを見回しながら口を開いた。
「あと終わって無いのはルーヴか・・」
「誰が終わって無いって!エルフ野郎!!」
突然ユーリとシャルの後ろから乱暴な声が聞こえた。
2人は声がする方へ振り向くとそこには、目つきの鋭い男が両手をズボンのポケットに入れた状態でたっていた。
「ほら、そいつが魔石だ。」
そう言ってルーヴは魔石の入った袋をシャルに向かって投げた。
「っと!」
袋をつかんだシャルはユーリの方を見た。
「ふぅ、こっちも終了だ。」
ユーリは丁度解体を終わらせたところで、額の汗を軽くぬぐっている。
そしてユーリはシャルとルーヴを見て言った
「とりあえずは終わったな。王都に帰るか」
そう言ったユーリに二人は頷いた。そして3人は森を後にした。