印象
……モデルというのは服を着ることというのはわかりました。
……色々な服を着るのでしょうか?
……お買い物とは違うのが新鮮に思えますね。
「……ところで、私はモデルというものを把握しきれていないのですが?」
結局、一騒動になったので、モデルという意味がわからないままです。
「そうですね……地域によって意味が変わるんですけど、私がお願いするモデルとは新しい服を着た人の印象を確認するということです」
「……印象ですか?」
ミュラさんの説明だと、その服を着る人で雰囲気が変わるのでしょうか?
想像しにくい話ですね。
「わかりにくいですか?」
「……はい」
「ルリ様にわかりやすく説明となると……」
ミュラさんが店内を見渡すように視線を動かし。
「これとこれと……」
服を二着持ってきました。
簡単に言いますと、赤い服と青い服ですね。
説明が雑?服に興味がないのですから、説明が難しいのですよ!
「例えば、ルリ様」
「……なんですか?」
「この赤い服ですが、この服は身体の線がわかりやすいものです。簡単にいいますと、身体の形がわかりやすいということです」
「……形ですか?」
首を傾げながら想像します。
身体の形ですか。女性だと胸元とかが強調されるということでいいのでしょうか?
「この服は生地が薄い物なんですよ。それをスタイルがいい人が着ると」
「……胸が強調されるということですよね?」
「はい。でも、この服はそれだけじゃないんです。腰とか脚の部分も強調するように作られています。で、これをセシリー先輩が着ると……ということで、セシリー先輩どうぞ!」
「え?ええ!?ちょっと待ってよ!?」
不意に服を渡されたセシリーが慌てました。
赤い服を着た、セシリーを見たことがないので少し楽しみです。
似合いそうです。
「店の看板も閉店にしてますし、鍵もかけています。室内も見れないようにカーテンで覆ていますから、着替えて下さい!さぁ、早く!」
「せめて、試着できる場所でいいでしょ……」
「ダメです!ルリ様に説明するためです!」
「なんの罰ゲームよこれ……」
セシリーはがっくりと項垂れていました。
「ルリ様、セシリー先輩が着替える手伝いをしてください」
「……手伝いですか?」
「はい!この服を持って着替える時に渡してあげてください」
「……わかりました」
ミュラさんから服を受け取り、セシリーの正面に立ちます。
「ねぇ、本当にここで着替えるの?」
「そうです」
「はぁ……なんでこんなことになったのかしら……」
セシリーが仕方がないという表情をしながら服に手をかけました。
「ねぇ、ルリ」
「……なんですか?」
セシリーが上着の紐を解きながらいいました。
セシリーが着ている服は正面を紐で結ぶものです。
着るのが大変そうな気もしますが、とても似合っている服です。
「できれば、横を向いていてくれない?さすがにそこまで真っ直ぐみられると、恥ずかしいのよ……」
「……セシリーが着ている服って、着方が難しそうなので気になるのです」
「はぁ……」
セシリーがため息を吐きながら、上着の紐をさらに解いていきます。
私だと絶対に着ない服です。
着るのがとても面倒……なんでもないです。
「………」
じーっと、セシリーを眺めています。
上着の紐を全て解くと前が綺麗にはだけました。
やっぱり、セシリーの肌は綺麗ですね。
「……ルリ?」
「………」
セシリーがゆっくりと上着を脱いでいきます。
上着の中には薄い服を着ているので下着は見えたりはしません。
「ルリ、その服の上着を貸して」
「……はい」
セシリーが赤い服の上着に袖を通しました。
「この服、悪意があるとしか思えないんだけど……」
「気のせいです!」
セシリーがミュラさんを睨みながらいいますが、ミュラさんからは元気な返事がしただけでした。
「………」
赤い服はぴったりとした構造らしいです。
肌に張り付くとはいいませんが、ずれにくいと言えばいいのでしょうか?
身体の線がわかるというのはこういうことなのですね。
「この服……作ったのミュラよね?」
「当然です!」
「……これ、買う人いるの?」
セシリーが上着を着終えました。
胸元がとても強調される作りの服ですね。
袖は長袖、装飾というものは付いていないです。背中が少し見える感じではありますが、丈は長いです。
正面からみると、胸の下まではボタンがありますが、そこから上は開いた感じになります。
今の状態だと、セシリーが着ている薄い服が胸元から上に見える状況ですね。
「買う人がいない服なんて作りません!さぁ、セシリー先輩、早くズボンも穿き替えてください!」
「わ、わかったわよ……」
セシリーは諦めたように穿いているズボンを脱ぎ、私から服を受け取りました。
「……上も酷いと思ったけど、下も酷いわね。しかも、なによこれ?脚がみえるようにされてるのはわかるけど、上までやりすぎでしょ!絶対に下着見えてるわよね!?」
「それがいいんじゃないですか!」
否定的なセシリーに対して、肯定的なミュラさん。
見事に真逆ですね。
「うわぁ……セシリーが凄くいやらしい娘に……」
「誰がいやらしいよ!」
「とても似合ってます!その辺りの娼婦顔負けです!」
「本気で殴りたくなってきたわね……」
セシリーが手を握って、フルフルと震えています。
セシリーが穿いたスカートですが、膝よりも上まで切れ目が入っています。
立っているだけだとわかりませんが、歩くとその部分が開くので、脚がよく見えます。
確かに、下着が見えます。本当にこれが売れるのでしょうか……?
「とても似合ってますから大丈夫です!まぁ、ルリ様よりは魅力は劣りますが、その辺りの男は自由に選べますよ!」
「そんなコメントは要らないわよ!」
「ということで、ルリ様、セシリー先輩がこの服を着た感想はどうでしょうか?」
「ちょっと!?」
セシリーの言葉を完全に無視して、私に話が来ましたね。
セシリーが着替えた感想ですか。
「……普段のセシリーは大人しい感じの服装をしているので、驚いてますというのが本音です。服が赤いので青い髪がさらに目立ちますね。とても大人な感じがします。色気というのはこういうものをいうのでしょうか?」
「誉められすぎて、何か変な感じがするわ……」
「……事実です」
セシリーは大人しい雰囲気です。
ですが、この様な服装になると雰囲気がとても変わりますね。
「では、セシリー先輩はその服を脱いで、シエラ先輩に渡してください」
「わかったわよ」
と、セシリーは完全に諦めています。
「え!?私もそれ着るの!?」
シエラさんは悲鳴じみた声を上げていました。
「当然です!ルリ様に違いを知ってもらうためですから」
「わかったよ……」
「あ、セシリー先輩、服は着なくていいですよ。他にも色々着てもらいますからね」
「やっぱり、罰ゲームとしか思えないわ……。はい、シエラ」
「ありがとう……。わかってたけど、生暖かい……」
「変なこと言わないでよ!?」
セシリーが頭を抱えていました。
「今からセシリーの温もりを感じながら着替えるんだね……」
「ちょっと、ミュラ!この服、変な魔法かかってない!?」
「かかってませんよ。大体、そんな魔法があるなら、私が知らないはずないですよ」
「そうね……。聞くまでもなかったわ……」
二人が言い合う中。
「ルリさん、着替えるまで服持ってて」
「……わかりました」
セシリーが着ていた服を渡されます。
「……確かに温かいですね。この服はこれから、シエラさんによって違う温もりを得るのですね」
「ルリさん、その言い方はやめて……」
シエラさんが着ている服に手をかけます。
シエラさんは普段から楽で動きやすい服を好みます。
「私からしても、この服って悪意があるようにしか思えないかな……」
シエラさんに上着を渡すと、そのような言葉が聞こえました。
「というか、この服って胸が大きい人前提で作ってない?」
「そんなことはないです!胸が小さい人でも大丈夫なようにつく……いったぁぁ!」
「小さくて悪かったね!」
ミュラさんが言い終える前に、シエラさんが叩いてました。
「大丈夫です……とりあえず、着終えてください。いたた……」
「わかったよ……」
シエラさんが上着を着終えました。
あれ?
「シエラ先輩、ボタンを留めたら、軽く下に引っ張って下さい」
「下にって何かあるの?」
「引っ張ればわかります」
「そう。……え?」
上着の形が少し変わった気がしますね。
胸元が開いているのは変わりませんが、肌により引っ付いたと言えばいいのでしょうか?
ゆったりしていません。
「凄いでしょう!少し細工のしてある服ですから、胸のサイズなんて関係ありません!」
「確かに凄い工夫だとは思うんだけど……余計に胸が小さいと言われてるように思えて腹が立つよ……」
「そんなことに腹を立てていると、自分で小さいとみとめ………つぅぅ!」
「口は災いの元になるんだよ……」
先ほどよりも強く叩かれてましたね。
「ルリさん、スカートかして」
「……はい」
シエラさんがスカートを受け取り。
「……本当に酷いね」
穿き終えて直ぐに言いました。
「私が着た時と随分、イメージが違うわね」
セシリーが言いたい事はわかります。
全くと言えるぐらい違いますね。
本当に同じ服だったのでしょうか?と疑う程です。
「ルリ様、どう思いますか?」
「……かっこいいです」
セシリーが着た時は色気が目立ちました。
ですが、シエラさんが着るとかっこいいと思うのでした。
本当に不思議です。
「……上着はピシっとしていて、スカートからはスラっとした脚がみえます。かっこいいとしか思えません」
「誉められてるけど、恥ずかしいかな……」
「どうですか、ルリ様!」
「……印象が変わるというのはよくわかりました」
「さすがルリ様です!でもまぁ、着ている人が人なので、嫌でも雰囲気は変わりますけどね」
ミュラさんが言った直後。
「それは私が娼婦っぽく見えるってことかしら?」
「私は胸が小さいって強調されてるってことかな?」
と、二人揃って、睨んでいますね。
「違いますよ。先輩達は雰囲気が違うんですから、同じ服でもイメージが極端な程変わるんです!それに、着ている先輩達はもう少し自分たちが美人であると認識してもらいたいですよ。この服だって、並みの人が着たら、服を着ているというより、着られているって思われる服なんですから」
「怒るに怒れないわね……」
「うん……」
二人が静かになると。
「では、ルリ様、この服を着て下さい」
ミュラさんが持ってきていた青い服を私に差し出しました。
「……私だけ赤ではないのですか?」
「ルリ様が着るとその……色々と結果が見えてますので……」
「意味がよくわかるわね」
「確かに」
セシリーもシエラさんも同じ意見でした。
こればかりは着ていないのでわかりませんが、きっと最初のように『いらやらしい』と言われるのでしょうね。
それなら、着なくて正解です。
「……着替えればいいのですね?」
「はい!」
「……わかりました」
私が着ているのは黒いワンピースです。
いつもと同じ?違いますよ?今着ているのは最近買った物です。
前にあるボタンで留めるものなのですが、全てのボタンをはずさなくても、脱げるのです。
つまり、とても楽なのです!
「ルリ様」
「……どうしました?」
「えっと、言いにくいお願いですけど……」
「?」
「そのワンピース、ボタンを外したら肩までずらしてそのままにしてみてください!」
「……わかりました」
このワンピースは何かあるのでしょうか?
「シエラ」
「何か妙な要望が出たね」
「ミュラにやましい考えがあるんでしょうね」
「やましいなんてとんでもない!これは好奇心ですよ!」
「「好奇心?」」
セシリーとシエラさんの声がはもりましたね。
横で聞きながらワンピースのボタンをはずし、肩までずらすのでしたね。
「見ていればわかります」
「何が起きるのかしら?」
「あ……私は予想が付いたよ……」
肩までずらすと、ワンピースが滑るように落ちていきます。
当然と言えば当然です。
「……あれ?」
胸で引っ掛かりました。
「やっぱり、思った通りでした!」
「バカがいるわ……」
「間違いなくバカだよね……」
どうやら、私のワンピースが胸の所で止まるのを見て見たかっただけのようでした。
これも人の趣向というものなのでしょうか?
「ここまで胸をアピールできるのなら、そういった服の需要もありそう。作る価値がありますね」
「お願いだから、ルリで試さないでね」
「うんうん」
「今日のモデル分は見逃してください」
「手遅れだったのね……」
「今日だけだよ」
二人がそう言っていると。
「……あ」
私の声に釣られて三人がこちらに向きました。
「「「………」」」
パサっと音をたててワンピースは地面に落ちました。
「相変わらず、とんでもないわね……」
「やっぱり、羨ましい……」
とセシリーとシエラさん。
「……ミュラさん?」
ミュラさんだけが無言のままでした。
「ルリ様は下着もきちんとしたものを買うのがいいです。衣服を作る側としては、その下着はダメですよ……。ルリ様の魅力が激減します」
「それについては私も同じ意見ね」
「私もそう思う」
「……下着なんて巻いていればいいのです」
「「「ダメです!」」」
「えー……」
私の意見は簡単に却下されます。
「あとルリ様、少し失礼しますね」
ミュラさんがそう言って、私の胸を掴みました。
「んー、ルリ様ならあの服を着こなせるはずだけど……」
そう言ったミュラさんは下着の中に手を入れていました。
「でも、ルリ様だと別の意味で危ない気もしなくもない。ありがとうございました、ルリ様」
ミュラさんが私から手を離します。
「ミュラ……」
「さすがに今のはないよね」
「えっと、先輩達、勘違いしてますよね?」
「「いきなり胸を掴む変態の言い訳何てしらない!」」
「あとで説明しますから!ああ、先輩達もですが、新しい下着のモデルも頼みますから、お願いしますね」
「「え、聞いてない……」」
「言ってませんから。では、ルリ様、その服を着て下さい。少し形は違いますが、先輩達が着たのと同じようなものです」
「……わかりました」
青い色ですが、これも胸元が強調されていると考えるのがいいのでしょうか?
それとも、違う物なのでしょうか?
着てみればわかりますね。
「………」
ごそごそと上着を着ていきます。
胸がちょっときついです。でも、赤い服より、さらに胸元が開いているような気もします。
これは……胸元の前で紐を結ぶということでしょうか?横ではなく、網目のように結ぶみたいですね。
「ルリ様、こちらを」
「……ありがとうです」
受け取ったのは青い服の……丈の短いスカートですか。
こちらは切れ目は入ってなく、最初から左右に網目模様の柄が入ってますね。
「……これでいいのですか?」
普段着ることのない服は難しいですね。
「似合っているとは思うけど、ルリには微妙かしら?」
「私は似合ってるとは思うけどね。ただ、胸元の紐が微妙かも?」
セシリーとシエラさんからは微妙という意見が出ました。
「先輩達、まだまだ甘いですね。今はルリ様がご自分の下着しか中に着ていないからそうなるのですよ。下着の上にセシリー先輩のように薄い色のある服を着ていれば、網目の模様が映えますから。何事も組み合わせなんです」
「なるほどね。ルリがお洒落するイメージがないから、普通の発想が連想できなかったわ」
「私も」
「……皆揃って酷いです」
服は奥深いものなのですね。
少しは気にした方がいいのでしょうか?
「では、意味も解ってもらえましたし、色々着て感想など貰っていきますよ!」
ミュラさんが嬉しそうにいいました。
「こうやって色々着ると、シエラって可愛らしい服が似合うのね」
「それは言われて自分でも驚いたよ。セシリーは色っぽい服が似合うし」
「そう言われても、正直困るけどね……」
「「進んで買わない服だし」」
と、二人は笑いながら言いました。
「問題は下着だったわ……」
「あー、それは私も思ったよ」
「セシリーなんて色っぽいっていうから、紐みたいなの着せられたよね」
「あれは……着るしかないとわかっていても、何か大切なもの無くした気分になったわ……」
「あはは……」
セシリーの幅の小さな下着は確かに紐みたいな感じに思えましたね。
でも、似たような下着はよく売れているそうです。
勝負下着というものらしいですね。
何かと戦うのでしょうか?
「シエラは黒い透けた下着だったわね」
「聞こえない!何も聞こえない!」
シエラさんが両手で耳をふさいでしゃがみ込みました。
あれは下着と言っていいのでしょうか?
黒い色ですが、とても薄い生地なので、本当に透けて見えました。
ちなみに、それも勝負下着と呼ばれるらしいです。
赤と黒が大人気商品だとか?
「まぁ、色々着たけど、今日は散々だったわ……」
「今までで一番悲惨だったよね」
二人は肩を落としていました。
私は色々な二人の姿が見れて楽しかったですよ?
「ルリ様、えっと、その……」
「……なんですか?」
ミュラさんが内容を伝えるのに、悩んでいるようでした。
「ルリ様に試着してもらいたい下着と服があるんです。ちょっと珍しい素材で作られていて、スタイルも選ぶといいますか、初めて見るのなら、この中でスタイルが一番いい、ルリ様に着てもらいたいんです!」
「……いいですよ」
「ほんとですか!?直ぐに持ってきますね!」
ミュラさんが奥の方へ走っていきました。
「ルリ、簡単に受けなかった方がいいんじゃない?」
「……大丈夫と思いますよ?」
「まぁ、ミュラがルリさんに変なことはしないと思うけど」
「……最初から疑うのもダメです。でも、下着と服と言っていましたから、下着と服でセットなのでしょうか?」
今日、着ていた物は服は服だけ、下着は下着だけというのが主でした。
皆の意見で組み合わせて着てみる、というのはありましたよ?
ですが、今から着るものは最初から決まっている感じです。
どのような服なのか想像が付かないです。
「まぁ、ルリだし、きっと似合うわよ」
「そうだね。もしかしたら、色々な人を悩殺できるような服かもしれないけど……」
「……それって、いやらしい服でしょうか?」
シエラさんの発言で少し心配になってきました。
「ルリさん自体、既に色々とやってるからね。悩殺なんて今更かな?」
「……酷い言われようです」
「でも、否定できないでしょ?」
「……勝手に騒がれるだけです」
私達はそのまま、ミュラさんが戻ってくるのを待っていました。
あのような服とは想像もできなかったです。
それが人目をとても惹く程の物とは、この時思いもしませんでした。
ルリがスタイルがいいのは周知されています。
セシリーもスタイルはいいです。
シエラは胸の事を気にしてはいますが、背丈のことを考えると少し多い方に入ります。
コンプレックスのようになっているのは、ルリとセシリーのスタイルが良いせいです。
最後に出てきた、ルリが着る予定の服とはどのようなものか?
次回の更新は書き終わり次第となります。




