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ふわふわともふもふ。そして、色々な騒動へ

大浴場でのぼせた、セシリーを運び出した、ルリアルカ。

無事、騒動は終わるのか?

 セシリーさんを宿屋の人に預け、私は部屋へと戻りました。

 『ミューズの安らぎ』で少し騒動にはなりましたけど。

 簡単に説明しましょう。


 セシリーさんにタオルをかけて抱きかかえ(お姫様抱っこと聞いたことがありますね)、大浴場をでました。

 私は何も纏っていません。周りの視線とか別に気になりませんから。羞恥心?そのようなものは人助けには意味のない物です。

 セシリーさんには悪いことをしたかもしれませんが、お風呂でのぼせて沈むというのは心配です。

 少しだけ傷ついたのは。

 

「セシリーさんがお化けに抱えられてる!」

「お嬢様が攫われそうに!」


 という言葉が聞こえたことですね。事情を説明したら安心してくれましたけど……。

 そのようなやり取りの後に部屋に戻り、椅子に座ってくつろいでいたのですが。


「寝室が気になります」


 高級宿の寝室。既に別世界にいる気分の中で眠る場所はどのような場所なのか?想像が全くできません。


「とりあえず、見てみましょう」


 好奇心に耐え切れずに椅子から立ち上がり、寝室に向かいます。そして、ドアを開け。


「………」


 見たこともない大きさのベッドがありました。本当にベッドですかこれは?

 大きさは普通の一人用のベッドを4つぐらい並べた大きさがあります。


 「座ってみましょう」


 そう言いながら、ベッドに腰かけます。え?身体が沈む?

 ベッドが柔らかいので座った場所が軽く沈みました。いつも止まる宿屋だとそのまま、変化はないのですよ?

 あまりにも不思議な感覚だったので、座ったり立ち上がったりを繰り返します。子供みたい?ベッドの上で飛び跳ねたりとかしませんよ?


「ふわふわです」


 ベッドに横になってみます。ええ、身体が沈みこむような感覚ですが、ふわふわというのが正しいと思う程でした。


「んー」


 ベッドの上をゴロゴロと転がってみます。楽しんでいませんよ?不思議な感覚を確認しているのです。


「ふふ……」


 思わず笑ってしまいました。

 体験したことのない出来事は楽しいのです。


「あ……」


 呟いたと同時に視線がそちらを向きます。枕も大きいですね。ベッドが大きいので当然なのかな?

 枕に頭を置いてみます。ふわふわとはまた違う感じがします。


「もふもふ……」


 そう!もふもふです!この言葉が相応しいに違いありません!

 ふわふわともふもふ。この二つは衝撃的過ぎますね。


「んんー」


 暫くの間、ゴロゴロとベッドの上を転がったり、枕をもふもふと抱いてみたりと繰り返し。


「寝ましょう」


 ベッドは寝る場所です。え?やっぱり、子供?子供では……否定しずらいですね……。

 枕に頭を乗せ、ベッドに潜り込みます。被る布もふわふわでした。


「別世界での就寝です。不思議な感じですね」


 目を瞑り眠りに付こうとします。

 ですが、いつまで経っても眠くなりません。


「……眠れません」


 ふわふわで、もふもふ。この経験したことのない感覚が、どうやら眠らせてくれないようです。


「床でいいです……」


 ベッドから抜け出し、床に横になります。ああ、これです。いつもの宿での感覚と変わりません。


「これなら眠れそうです」


 目を瞑って眠りに付こうとします。直ぐに眠気がやってきて、私は眠りについたのでした。



 翌日。


「ルリアルカさん、起きてる?」

「……うん?」


 眠いですが、目をあけます。


「入るわね。おはよう、ルリアルカさ………どうして床で寝てるの?」


 セシリーさんは私を見て、不思議そうに言いました。あれ?私、部屋の鍵かけましたよね?


「昨夜ベッドで眠ろうとしたのですが、今までにない感覚で眠れなく、床で眠ったのです」

「そ、そう」


 呆れた顔をしていますね。それより、鍵は…。あ、マスターキーというものですね。


「あ、お礼を言い忘れたわ。昨日は助けてくれてありがとう。まさか、のぼせて溺れそうになるとは思わなくて」

「気にしないでください」

「でも、あの姿はないと思うのだけど…。私、タオル一枚で浴場から受付まで運ばれたのだから」


 大変だったと理解してくれているので、怒りはしませんが、顔が赤いですね。


「それと聞くけど、ルリアルカさん、服着てたわよね…?」

「いいえ?急がないと危ないと思いましたから、そのまま出ましたよ?」

「………」


 セシリーさんが黙ります。


「どうかしました?」


 私が首を傾げながら、セシリーさんを見ると。


「あれほど服を着なさいと言ったじゃないのー!」


 セシリーさんが吼えました。ええ、盛大に。


「ですが、セシリーさんの身体に何かあっては大変ですから」

「そ、それでも!」


 さすがに言いにくそうな、セシリーさん。


「人命優先です。私がそうしたのですから」

「そう言われたら、怒れないじゃない……」


 肩をがくっと落として俯くセシリーさん。


「まぁ、私の裸なんて見て喜ぶ人も居ないでしょう。私も気にしないです」


 え?爆弾投下?

 セシリーさんがフルフルと震えています。


「やっぱり、無理!ルリアルカさん、助けてもらったのは感謝していますけど、これは許せません!ええ、許しませんとも!」

「どうしてですか!?」


 人命救助を優先したのに、思い切り怒られてます。泣きますよ?


「ルリアルカさん、年頃の女性が肌を簡単にさらしてはいけません!ルリアルカさんが平気と言っても、周りが困ります!こんな可愛い娘が裸で歩いてるとか、悪影響しかありません!それに…」


 可愛いと言われるのは嬉しいですが、悪影響ですか……。

 その後、床の上で正座させられ、お説教を長々と聞くのでした。泣いてませんよ?



「ルリアルカさん、今日はどこかに行くとか決めているの?」


 お説教も終わったので普段通りのセシリーさんです。


「いえ、予定は何もないです」


 事実、王都フェイマスに寄ったのは旅のついでだからです。


「なら、ギルドにいかない?ルリアルカさんの身分証にもなるギルドカードも作れるから。旅を続けるなら便利よ?」


 あても無く旅をしてはいますが、今後も場所によっては身分証の呈示を要求されることもあるでしょう。ある方が色々便利ですね。


「身分証を持つのも悪くなさそうです」


 そう返事をすると。


「あ、空間魔法に収納したままにしてはダメよ?取り出すたびに大事になるだろうし」

「わかっています」


 ええ、わかっています。私は学習するのですよ。


「それじゃ、決定ね」

「ところで、セシリーさん」

「なに?」


 私は疑問を素直にぶつけます。


「宿のお仕事はいいのですか?」

「あー……」


 セシリーさんは複雑そうな顔をしています。


「皆にお友達ができたんだから、一緒に楽しんできなさいって言われたわ」

「お友達ですか?」


 私には縁もなかった言葉ですね。


「ええ。確かに同じ歳の友人はほとんど居ないから、嬉しいのよね」

「私がセシリーさんとお友達ですか」

「あ、ごめんなさい……。私が勝手に思ってるっていうのもあるから」

「いえ。私はお友達がいませんから。初めてなので、どうすればいいのかわからないのです」


 島には家族しか居ませんからね。お友達は初めてなので、本当にどうすればいいのかわかりません。


「そっか。ルリアルカさんのお友達になれてよかった」

「私もセシリーさんとお友達になれたのは嬉しいです。ですが…」

「どうしたの?」


 やっぱり、私は困った顔をしているようですね。


「お友達というのはどのようにすればいいのでしょうか?」

「そうね……。呼び捨てとか愛称で呼んでみたり。一緒にお出かけするとかかな」


 セシリーさんの説明ですと、一緒にギルドに行くことも、お友達としての行動になるのでしょうか?

 それに呼び捨て?愛称?

 愛称という言葉は聞き覚えがあります。島にいた時に私が呼ばれていたものがそのはずです。


「セシリーさん、私のことはルリと呼んでください。島の家族にも呼ばれていましたから」

「ルリアルカさんの家族はルリと呼んでいたのね。わかったわ。それじゃ、私の事はセシリーと呼んでね」


 笑顔で答える、セシリーさん。セシリーさんには愛称はないのですか?


「せっちゃんではダメですか?」 

「ごめん、ルリ……。この歳でその呼ばれ方はちょっと無理だわ……」

「わかりました、セシリー」


 愛称で呼ばれて少し、ドキッとしました。不思議ですね。家族から呼ばれていたのとは違います。

 それに、『せっちゃん』は可愛いと思うのですけどと、 内心思っていましたが、口には出しません。怒られそうですし。


「あと、もっと気軽に話してくれても大丈夫なんだけど?」

「この話し方は癖みたいなものです」

「そう」


 少し残念そうですね。ですが、これが私ですから。え?威張るところじゃない?


「セシリーはギルドに登録しているのですか?」


 私は気になったので尋ねました。


「ええ。ギルドに登録していないと、一人で買い出しに他の街になんて出られないしね」


 セシリーが誇らしげに言います。


「そうですか」


 セシリーから簡単にギルドの説明を教えてもらいました。


 ギルドには初級、中級、上級の3つがあるそうです。例外として特級という物もあるそうですが、これは一部の人しかなれないそうなので、気にしないでいいそうです。

 内容として。


 初級 簡単な依頼や常時受け付けされている依頼がメインらしいです。

 中級 一般依頼と言われる物を受けることができるそうです。幅が広くなりますね。

 上級 指名依頼というものが増えるそうです。これは信頼されているギルド登録者に依頼者が直接頼むものらしいです。


「私のギルドカードはこれよ」


 そう言いながら、セシリーは私にギルドカードを渡してくれました。これがギルドカードですか。板としか思えませんね。

 そう思いながらも、ギルドカードに書かれている文字を見ていきます。


「セシリー・ミューズ。種族 人族。性別 女性。得意系統魔法 風。出身地 王都フェイマス」


 気になった単語があります。それは「出身地」です。

 私は疑問に思いました。私の住んでいた島は確かに島ですが、少し問題が起きるかもしれませんね。


「名前に種族、性別、得意な事に出身地ですか」


 やはり、私は出身地が問題になると思います。


「わかりやすいでしょ?だから、身分証にもなるのよ。あと得意なことは、増えると追加されるらしいわよ?私はそこまで増やしたいと思っていないから、風属性の魔法を主に使うけど」


 その言い方だと、他にも特技がありそうですが、ギルドカードに表記されないということは、何か条件があるのかもしれませんね。


「ギルドはここから近い場所にあるから、案内するわね」


 セシリーが『ミューズの安らぎ』の入口を開け、外にでます。いつもと同じように私もそれに続きます。


 

「確かに、近いですね」


『ミューズの安らぎ』を出て、数歩。時間としては1分前後でしょうか?お隣さんでした。


「ルリ、ちょっと驚くかもしれないけど、大丈夫だからね」


 そう言って、セシリーがギルドのドアを開けます。あれ?入らないのですか?

 私が疑問に思っていた直後。


「ぎゃーー!!」


 という悲鳴と共にドアから飛び出してきた人が居ました。飛び出してきたと言うよりも弾き飛ばされたという表現が適切かもしれませんね。


「いつもの光景ねぇ……」


 ため息をつきながら、セシリーさんが中に入ります。あの人は大丈夫なのでしょうか?

 私が倒れている人を見ていると。


「気にしないでいいわよ。いつもみたいに騒いだ延長だと思うから」


 セシリーは、倒れている人に見向きもしません。


「そうですか……」


 派手な外傷はありませんが、大丈夫なのかな?と思いつつも、私も中に入りました。薄情ではありませんよ?


「シエラ、私のお友達がギルド登録をしたいのだけど、大丈夫かしら?」


 セシリーが「シエラ」と呼んだ女性に声をかけています。ギルドの受付の人でしょうか。


「大丈夫ですよ。ちょっとバカなことをした人を外に叩き出しただけですから」


 ああ、ここではこの様な事が日常的に起きるのですね。覚えておきましょう。


「ルリ、こちらギルド、フェイマス支部の受付をしているシエラよ。依頼などの受注もしてくれるわ」

「シエラ・エルナンドです。ルリさんでよろしいのですか?」


 笑顔で尋ねられます。綺麗な金色の髪をなさった方ですね。


「ルリアルカ・トゥルーといいます」


 笑顔でかえしなさい?普通に答えただけです。


「ルリアルカさんの方がよろしい?」

「お任せします」

「じゃぁ、ルリアルカさんで。改めまして、よろしくね」

「はい」


 にこにこと笑顔が絶えません。受付の人はいつも笑顔なのですね。


「セシリー、ルリアルカさんにはギルドについて説明はしたの?」

「簡単にはね。ルリは身分証を持っていないから、それでギルドカードのことを説明したのよ」

「そう。じゃぁ、説明は省くわね」


 省いてしまって大丈夫なのでしょうか?


「あ、手を抜いたわけじゃないから心配しないでね?説明はギルドの事を知っている人からすれば、皆同じようになるから」

「そうなのですね」

「ええ。あと、ギルドカードが身分証になるというのは、その人の血を使って登録するからなの」


 シエラさん、にこにこと笑いながら、さらりと怖い事をいいましたね……。


「大丈夫よ。血と言っても針で刺して、そこからでた血をギルドカードに付けるだけだから」

「なるほどです」


 指を切って、証明書に使う血判とは違うのですね。島で聞いたことのある方法を先に想像してしまったので安心です。


「ルリアルカさん、これが登録も何もされていないギルドカードよ。あと針はこれを使ってね。衛生面は大丈夫。毎回、消毒してますから」


 えへん、とシエラさんが言います。


「わかりました。この針で指に傷をつけて、その血をギルドカードにと……」


 指に針を刺し、血が出るようにします。ちょっと深く刺さってしまったので痛かったですけど…。

 そしてギルドカードに指を押し付けると、ギルドカードが輝きました。


「これで、そのカードはルリアルカさんの物よ。無くしても再発行できるけど、その時はお金がかかるから、無くさないように気を付けてね」


 丁寧に教えてくれる、シエラさん。にこにこと話してくれるのは嬉しいですね。


「さてと、ルリは何ができるのかしら?」


 セシリーが光の収まったカードを見ます。


「ルリアルカ・トゥルー…エンド?トゥルーって偽名?」

「いえ、偽名ではありませんけど……。あ!お爺様が最初に名前を付けた時はトゥルーエンドにしたと聞いたことはありますね」


 私もすっかり忘れていました。それにトゥルーでいいじゃないですか。シンプルがいいのです!


「ルリのお爺様も適当ね…。えーと、種族は……不明!?」


 セシリーが驚いて声を上げます。あ、周りがこちらを見ていますね。


「性別は女性。得意なことは……」


 セシリーが悩むような顔をしています。何かあったのでしょうか?


「シエラ、奥の部屋借りるわよ」

「ですね。これはちょっと問題がありそうですから…」


 ええ!?初めて登録した瞬間に問題発生!?

 そこ、トラブルメーカーとか言わないでください。


「こっちよ。あと、おじさんも呼んで欲しいわ」

「大丈夫よ。もう連絡したから」


 シエラさんの対応の速さは凄いです。


「今、聞いたことを他言するような人はー」


 にこにこしながら、シエラさんがいいます。ですが、何か違うような?


「私の全力をもって排除しますので、気を付けてくださいね」


 「うふふ」と笑みを浮かべていますが、怖いです。セシリーさんより、もっと怖い笑みです。


「それでは、こちらへどうぞ」


 お辞儀をするような仕草をしてから、案内されます。


「行くわよ」

「は、はい」


 私はついていくだけしかできませんでした。

 「ルリアルカ・トゥルーエンド」というのがルリアルカの本当の名前となります。

 本人すら忘れていたのは事実です。


 シエラ・エルナンドという新しいキャラが出ました。

 明るい方ですが、色々な意味で容赦しない人です。


 次回の更新はいつもと同じで、書き終わり次第となります。

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