8話
この日は、とてつもない大雨で家から出るのは危険そうだった。
「こんな雨の中一時間も歩いて学校に行くのは危険だ、けしからん!じつにけしからん!ということでルイ、今日は家族でたくさん話そうぜ☆」
サンドがウィンクしながら話しかけてくる。
サンドもこの雨では仕事が休みらしく、家族で家にいたいようだ。
し親が雨だから学校休めなんてどういうことだとサンドに説教をしようかと思ったが、こんな雨の中一時間も学校まで歩くのは俺も気が進まないので、今回はそれに甘えることにした。
そんなサンドの言葉を軽く流しルーファに話しかける。
「ルーファ。お兄ちゃんとあそぼう!」
「うん!遊ぶ!」
「っておい、無視かよ!」
サンドが慣れないツッコミを繰り出してきたので構ってあげるとする。
「ごめん、父さんつい。」
俺が微笑むとサンドも少し微笑む。
「お前が記憶を無くしてから2か月半が経つが記憶の方はどうだ?」
「ごめん全く、何も。」
思い出すというか、そもそも思い出す記憶がこの体にはない。
俺は日本生まれの渡嘉敷 匠なのだから。
「そうか、でもお前がしっかり俺達と話をしてくれるようになったことは喜ばしいことだ。きっかけはどうあれな」
サンドは複雑な表情を浮かべる。
そりゃそうだろう。
記憶を戻してあげたいという親心と記憶無くした俺の方が団らん出来るからこのままでもいいという親心どちらも大切なものだと思う。
「うん、俺も父さんや母さん。それにルーファがいるし、記憶なんて別に良いよ」
「そうか、ありがとうルイ。そういえばそろそろだろ?今年の魔法トーナメント?」
「うん、再来週の20日だよ」
「20日か、俺達は例年通り見には行けないが応援してるぞ。それで、今はどれぐらい魔法は戻ってきたんだ?」
「戻ってきたというか、水魔法と風魔法は認定もらったよ、個性魔法はこの通り」
そう言って俺は、ルミナスを見せる。
魔法大会は魔法で互いを傷つけあうので親には見せられないものらしい。
「やっぱりお前は天才なんだな、前も今もレア魔法が使えて覚えるのも早いし」
「父さんと母さんの子供だからね」
「くぅ~お前は本当に泣かせるな。よし、外でボール遊びでもするか!行くぞ、ルイ、ルーファ!」
「父さん、外は大雨ですよ?」
「そういえば、そうだったな、ハハハ」
「全く、お父さんは、困った人ですね。ね、お兄ちゃん?」
「そうだね、ルーファ変な人だね」
ルーファが後ろから抱きついてくる。発展途上である胸を押し付けながら。
発展途上国も悪くない。発展途上国を手助けする人の気持ちをわかった気になった。
「ルーファのMPはどれぐらいなんだ?」
「えーっと、Fランクだよ。2年前から変わらないんだ。」
魔法の習得スピードとレベルアップスピードは個人差が大きいらしい。
「でも卒業までにはDになれるようにがんばるよ」
この国ではDランクが魔法使いと呼べるラインらしい。
それより下は魔法が使えるという認識程度らしく、Dランクないとつけない職業等もあるそうだ。
それでも、ルーファはとてもかわいいからいいお嫁さんになるのは間違いないと思うが、ルーファは絶対に嫁には出さんと強い意志を持つ。
彼氏とか連れてきたら絶対に「妹はやらん!!」
と言ってやろう。
「ルーファは好きな人とかいないのか?」
「うーんと、お父さんとお母さんも好きだし、でも一番はお兄ちゃんかな~?」
やばい、食べちゃいたい。
食べちゃいたいよ。この娘こんな妹は反則だ
「ありがとう、ルーファ。じゃなくて彼氏とかはいないのか?」
「ルーファは絶対にやらん!!」
横からサンドが大きい声で言ってきた。
いや、あんたには聞いてないし、質問と答えが噛み合ってへんわ!
とそばに落ちていた、たわしを父に投げつける。
「ぐはっ」
悪役のようなセリフを吐いた父サンドを放ってルーファを見る。
「彼氏とかいないし、いらないもん!」
少し怒りながら部屋へ戻った
モテないと思われるのがいやだったのか?
女心はわからへんな。怒らせてしまったことを後悔し、サンドを見る。
「レイラ~、ルイが、ルイがまた、たわしを投げるようになった」
サンドが悲しそうにレイラに告げる。たわしを投げられたのが悲しかったようだ。というか、前もたわしを投げてたのか俺
「ルイ!お父さんにたわしを投げちゃダメでしょ!」
レイラにげんこつされる。しかし全然痛くない。サンドをなぐさめるための演技だったみたいだ。
「たわしを投げたらレイラに怒られるぞ、ルイ。だめだからな!」
「ごめん、父さん。母さん」
サンドには全く父の威厳が無いのを最終確認できた1日であった。
トーナメントの2日前、ミル先生に連れられ校長室へと向かう。
「失礼します」
「おお、来たね、ミル先生、ルイ君、まあ座りなさい」
校長に言われ俺達はソファへ腰かける
「話は聞いてるよ、ルイ君順調に強くなってるそうだね。」
「はい、ミル先生やフィリーそれにみんなのおかげで日々成長しています。」
「よろしい。ここまで好青年になると、正直記憶が戻らない方が好ましいですね。私は」
返事に困ったが軽く頷く
「依然、記憶を無くした時に空席にしていた第3席だが正式に戻ってもらうことにした。」
どうせトーナメントで新しく決めるのに何のメリットがあるのだろう?
「明後日のトーナメントで結局変わるのでは?」
「その、トーナメントの為だ。上位8人は予選に出なくていいのだよ。」
メリットのように聞こえるが、俺はたくさんの人と戦いたいから正直デメリットにしか聞こえない。
「上位8人は学費が免除だ、家庭を考え、確実に上位を目指すなら予選免除ほ良いことだろう。」
サンドやレイラに負担を描けたくないし、これは受けた方が良いだろうな。
「慎んでお受けいたします。」
晴れて俺は第3席に復席?着席?することになった。
ミル先生と共に校長室を出、教室へと向かう。
3ヶ月近くも通うと大体は覚えてくるものでエアル魔法学校で迷うことはない。
ミル先生をおいて、一人で先に教室へと着く。
「フィリー!3席に復帰できたよ」
「今のルイなら当たり前よ!前のルイより強いかも知れないんだから」
フィリーが嬉しいそうに返事をしてくれた。
が、
「Fランクのお前のメッキが剥がれるのが楽しみだ」
クラスの男子が見下したように話かけてきた。
そろそろこらしめようと思っていたので強気で応戦しておこう。
「君みたいなザコは予選も出ないといけないのだろう?君と戦えなくてザンネンダ」
少し片言で馬鹿にする。この手の挑発は良く聞くもんだ。
「てめえ、ぶちころすぞ!」
そう言いながらクラスメイトA君が炎の玉を撃ってきた。
なかなかな威力なので個性の炎魔法だろう。
それをルミナスで軽く斬り捨て、右手の黒天をA君の喉元に向ける。
「これが戦場ならお前は死んでたぜ?」
決まった。これはなかなかだ。
フィリーが惚れなおすだろうな。フフッ、しばらく酔いしれておこう。
「な、何がおきたんだ?俺の炎玉が一瞬で消えただと…」
俺のルミナスはフィリーとミル先生と校長しか分からないのでA君はこんわくしているようだ。
「ケンカを売る相手は間違えるなよ」
そう言って、席に着くとフィリーを見る。しかし、ルイなら当然だそうでお褒めの言葉は出なかった。




