2-1
「う……う…」
悪い夢にうなされて目が覚める
また…あの夢だ。
目の前でサンドが殺されレイラが殺される、そして家を焼かれる
あれは夢だ。
夢なんだと言い聞かせる。あんな現実離れをした光景は日本で暮らしてた俺には考えられない。
だがあの日の出来事は紛れもない事実。目を背けたくなる現実だ。
横ではルーファとエリーが眠っている
この世界の俺のかわいい妹達だ。
俺たちは今ルンバ大森林を東へ3日ほど歩いている。隣国のガネーシャ国へ行くためだ。
ガネーシャ国で少しの間、心を落ち着かせ、おばあちゃんの元に向かう事にした。
ルーファもエリーもかなり疲労しているが、食料と水は家から持ってきたものがまだ残っている。
明日にはガネーシャ国に着くと思うから頑張ってほしい
しかし、こんな状況で俺はヴェルトイヴを探しにいけるのか?
それにヴェルトイヴはどこにあるのかわからない。
インド洋に落としたコインを探せというぐらいの無理難題だ。
ヴェルトイヴは生きてる間に揃えてあげるぐらいの気持ちで対応しよう。
今はルーファとエリーを無事にレイス王国にいるおばあちゃんの元へ送り届けることが先だ。
かわいい寝顔をした二人を眺めていると少し落ち着くな。
ふう…
ふと、体が反応する。
「魔物か…」
一匹の魔物がやってきた。ゴブリンだ。
緑色の体をした奇妙な生き物を黒天で仕留める。
ルンバ大森林に入ってから魔物が近付くと体が反応するようになった。俗にいう危機感知だと思う。
自分の周りに敵意や危険が迫ると体が過敏に反応するのだ。この能力のお陰でここまでは魔物からルーファ達を守りきることができている。
これも個性魔法なのだろうか?3つも使えるようになるなんて異世界人にはこの世界の常識は通用しないかもしれないな。
俺は魔物が近くにいないことを確認しもう一度眠りについた。
鳥の鳴き声が聞こえる。朝だ。
「おにいちゃん、起きておにいちゃん。おにいちゃんたらどんな夢見てるのかしら?」
何事かと目を覚ますと目の前には天使が俺の体を揺すっている
ルーファだ。
「おにいちゃんどんな夢見てたの?」
「いや、覚えてないな」
「おにいちゃんいつもニヤニヤして眠っているよ」
俺は毎度毎度どんな夢見てるんだろう?
「それよりルーファ。今日でガネーシャ王国までたどり着くぞ。」
「うん、分かった」
歩きながらエリーの事を考える。
ここまでは運よく大泣きをしたり暴れたりしたことはない。
しかしエリーは生後間もない。あまり詳しくはないがミルクをあげないといけなかった気がする。
少しペースをあげる。昼過ぎには無事ガネーシャ国にたどり着くことができたひと安心だ。
ガネーシャ国はジパン国とは隣国であるため友好関係を結んでいた。
ジパン国とは違って魔法はあまり普及していないが軍事国家として有名だ。
ひとまず近くにある宿をとることにした。幸い家にあった貯えを持ってきたのでお金に困ることはない。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「3人お願いします」
「あなた方3人ですか?保護者の方は?」
無神経な野郎だ。3枚におろして食ってやろうか?
「いえ、いません」
「そうですか…申し訳ありませんがお子様だけでは御貸しする事ができません」
「なっ…そうですか…子供だけでも泊まれる宿はこのあたりにありますか?」
「この辺りにはないかと思われますが…家出ですか?早く帰らないとお父さんお母さんが心配しますよ?」
「帰る家はありません」
泊まれる宿がないだと…そんな馬鹿な話があるか
手当たり次第に宿を探す。
だが全て断られてしまった。
こんな事があってたまるか。俺やルーファはともかくエリーはちゃんと休ませないといけない。
仕方がない。町の人に親のふりを頼むか…
公園に行き、ベンチに腰かける。
「ルーファ。エリーと一緒にここで休んでてくれ。町の人に声をかけてくる。」
「うん、分かった」
「行ってくる。」
「おにいちゃん、早く、早く帰ってきてね…」
「大丈夫、すぐ戻るよ」
ルーファの事も心配だ。当然の事だが憔悴しきっている。早く宿を確保せねば…
人が多い広場へ行くか。
銀貨3枚ぐらいあげれば協力してくれるだろう。
公園を出ると一本の道が続く、長い長い下り坂だ
少し先に女性が歩いていた。後ろ姿から思うにべっぴんさんだろう。あの人に聞くか。
「すいません、お願いがあるのですが……」
女性が振り向く、顔面の終わりだ
「え~ナンパ~?なになに~?お姉さんと遊ぶ?」
こいつは論外だ。
無言で踵をかえし別の人を探す。
しかし他の人に声をかけるとですぐ逃げられてしまう。俺の身なりを見るなり不審者扱いだ。
少し甘く見ていた。今日も宿無しはヤバイぞ
目の前にスタイルのいい女性がいる。
後ろ姿から察するにべっぴんさんだろう。デジャブでも何でもいいこの人に賭けよう
「すいません、お願いがあるのですがきいてもらえませんか?」
「なんだ?少年。私に出来ることなら聞こう」
物凄いべっぴんさんが返事をしてくれた。女性は剣を持っている多分剣士だろう
「ありがとうございます。訳あって親と離れてるので宿を借りたいのですが、親の代わりとして宿を借りてくれませんか?もちろんお代は差上げます」
「ふむ訳ありそうだな。お代はいらん借りてやろう。では行くとするか」
「え?そんなすぐですか?」
「困っているんだろう?ならすぐ行くぞ。」
「は、はい!お願いします!」
すごい。俺の事を疑いもせず潔く決断してくれたこの女性はとても凛々しい。
「ありがとうございます。ルイ・ウォルコットです。」
「私の名前はメリアス・ハーパーだよろしく。」
「メリアスさんはこの町で暮らしてるのですか?」
「ああ、大日帝国で暮らしていたのだが、半年前にここに来た」
「帝国…ですか?」
「ああ、帝国の第1部隊の副隊長をやっていたが今はこの国で将軍をしている。」
少し帝国への恨みがよみがえる。
「軍の関係者ですか…なぜ、何故帝国はジパン国を攻めたんですか?教えてください」
サンドからもらった剣(砂銀)をメリアスさんに向ける。この人が悪い保証は無いのになぜか体が勝手に動いてしまった。
「ルイ?まさか君はジパン国から来たのか…?」
「はい…帝国に両親を殺され妹と共にこの町に来ました」
「そうか…ルイ、そのまま私にかかってこい」
「どういうことですか?」
「いいからかかって来るんだ。」
「よく分かりませんが…分かりました」
メリアスさんも剣を取った所で俺が振りかかる。
剣と剣がぶつかり合い甲高い音が鳴り響く
俺の攻撃が全て受け止められる
「ふむ、見たことない剣筋だな。おもしろい」
メリアスさんが嬉しそうな表情を浮かべる
暫くの間剣を交わした。
「いい、いいぞルイ。面白かった」
メリアスさんの一言の後、砂銀を弾き飛ばされる。
「いいかルイ。力なきものは虐げられる。それはこの世界の理だ。お前も私も力が足りないのだ」
メリアスさんが話しかける。
「帝国を止めることが出来なくて本当にすまん私に力があればお前の親を死なせずにすんだのに…」
メリアスさんが泣きながら俺を抱き締める。この人は間違いなくいい人だ。
泣いているこの人は美しい。
「宿ではなく私の家に来い。落ち着くまでは面倒をみたやろう」
「本当ですか?妹2人もいるのですが…」
「構わん。どこにいるのだ?」
「公園で待たせています」
「そうか…では迎えに行こう」
「あ、ありがとうございます!」
ルーファとエリーの元へ向かうと、2人は眠っていた。
「かわいい妹だな、長旅で疲れているのだろう。おぶってやれ。赤ちゃんは私が抱こう」
「え、あ、はい。お願いします」
メリアスさんに案内され俺たちは町の住宅街にたどり着いた。
「ここが私の家だ。さ、ゆっくりしてってくれ」
「はい、失礼します。」
きれいな家だ。将軍となるといい家に住めるのだろう、本当に助かった。
「今日は疲れているだろうからゆっくり休め、話は明日にしよう」
「はい。お言葉に甘えてそれでは」
お風呂を貸してもらいメリアスさんのベッドで俺たち3人は眠った。久しぶりの休息に俺は泥のように眠る。
真ヒロインはまだ先です。
これからもよろしくお願いします。




